杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

しずおか地酒研究会20周年アニバーサリー第1弾

2016-01-12 19:20:46 | しずおか地酒研究会

 1996年に発足したしずおか地酒研究会は、今年20周年の節目を迎えました。長いようであっという間の20年でした。

 発足のきっかけは、前年1995年11月に開催した静岡市立南部図書館食文化講座『静岡の地酒を語る』。静岡酵母の河村傳兵衛先生と静岡県酒造組合専務理事の栗田覚一郎先生が、おそらく初めて、一般市民を対象に静岡吟醸について語った講座で、終了後も「有料でもいいから続けてほしい」という声をいただき、ちょうど20年前の1996年正月、家のコタツでチビチビ呑みながら、独りであれこれ妄想していました。妄想の成果が、以下にまとめた発足趣意書です。

 

 水に恵まれた静岡県は、近年、日本酒の分野で日本の最高水準の酒を生んできました。昭和61年の全国新酒鑑評会では出品酒21点のうち10点が金賞、7点が銀賞に選ばれ、入賞率で全国1位になるなど、静岡の地酒は全国的に評価が高まっています。しかしながら静岡の地酒の消費量は、県内で飲まれる日本酒のうちのわずか18%足らず。地酒のよさを知る人はごく一部に限られているのが現状です。日本酒の消費そのものがビールや低アルコール飲料の台頭で落ち込む今、この18%という数字を上げるためには生産者や販売者の経営努力のみならず、消費者の、優れた地場産品を支援する意識の高揚が大切ではないかと思われます。

 洋の東西を問わず、成熟した文明圏には相応の酒文化があるといわれています。地酒とは、その土地の文化レベルを示す顔。静岡に、レベルの高い酒造技術が育っている今こそ、これに“文化の香り”を醗酵させ、熟成させる好機ではないでしょうか。そのためにもまず、酒の業界の皆さんと、地域社会や文化を担う県民の皆さんとの枠を超えた交流から始めたいと思うのです。

 「しずおか地酒研究会」は、地酒の素晴らしさに感動し、地酒によってふるさと静岡のよさを再認識した人々でたちあげる、手作りの研究会。これまで接点が限られていた造り手・売り手・飲み手の交流の場として有機的な活動を、そしてさらに、着実に地酒振興につながるような運動に発展できればと思います。

 ある造り手から「酒を、人を感動させる芸術品を創るような気持ちで造っています」というお話を聞きました。まずは、勉強会や交流会を通して、地域の人々が、このような真摯な思いを受け止める感性を磨く機会を広げようと思っています。

 

地域の皆さんに向けて/品質の高い静岡の地酒のよさを、一人でも多くの県民に伝え、地元の食文化として発展させよう。

→地酒のよさを通じて、ふるさとの食の豊かさを知る。

→地元の産物を見直し、ふるさとを誇りに思う気持ちを育て、後世に伝える。

 

酒の業界の皆さんに向けて/地酒の選び方、売り方、紹介の仕方などを考え、地場産品として市場に円滑に循環される環境をサポートしよう。

→飲み手主体の地酒啓蒙活動を行い、顧客サービスや新規開拓に活用してもらう。

→日本酒ファンの底辺拡大のため、潜在的消費意欲の高い20代~40代に向けた商品開発・販売促進ができる素地を整える。

                                                                            (1996年3月 しずおか地酒研究会発会のしおりより)

 

 

 今、読むと、業界事情をよく知らない素人が、言葉足らずを省みず、盛大に打ち上げたまさに妄想花火だなあと恥ずかしくなってきますが、1996年3月の発会式には100名を超える方にお集まりいただきました。会場の静岡県男女共同参画センターあざれあの生活関連実習室では、当時、静岡新聞出版局で「旬平くん」という地域食情報誌を編集していた平野斗紀子さんのコーディネートで、静岡市の農家女性グループがとれたて野菜をその場で調理し、当時売り出し中の御殿場金華豚のしゃぶしゃぶも加わり、地酒と地域食のコラボを存分に楽しむことが出来ました。20年前は「地産地消」とか「コラボレーション」なんて言葉は一般的ではなかったように思いますが、地酒の取材を続けていると、自然にそういうつながりが生まれてくるんですね。

 1996年3月22日に開催された発会式の懐かしい写真です。当時34歳の私めもロン毛でパツンパツンの顔してますが(笑)、皆さんもお若いっすね~!

 

 

 

 

 巡りめぐって20年経った2016年の正月。コタツはなくなったけどデスクに酒瓶をドンと置いて、20年のお礼、本の出版のお礼をするには、初心に戻ってガツガツ活動するしかないと妄想リターンしてました。20年前と大きく変わったのは、静岡地酒の認知度と、造り手や売り手自身が積極的に活動していること。地酒研はひとつ役割を終えたかなあと、嬉しくも寂しくも感じますが、今年とにかく、3月に20年の記念イベントを、4月以降も毎月何かしらのサロンやワークショップをやろうと腹をくくり、現在、鋭意調整中です。

 

20年アニバーサリー第1弾

記念講演会 「造り手・売り手・飲み手が切り拓いた静岡地酒・新時代(仮題)」

 20年アニバーサリー第1弾は、1996年から20年欠かさず、講師として来て下さった松崎晴雄さんに講演をお願いしました。松崎さんはご存知、日本を代表する酒類ジャーナリストであり、全国各地域の清酒鑑評会審査員を務め、日本酒の海外振興のトップランナーとしてもご活躍中です。

 今年は昭和61年(1986)に静岡酵母による全国新酒鑑評会大量入賞から30年という節目にもあたります。松崎さんには日本酒業界の30年を振り返り、飲み手目線で始めた地酒振興活動について、大所高所から解説していただきます。会場は20年前と同じ「あざれあ」です!

 当日は静岡県清酒鑑評会審査会が県沼津工業技術研究所で開催され、即日結果発表されます。鑑評会主催の静岡県酒造組合会長・望月正隆さん(「正雪」蔵元)にもお越しいただき、松崎さんと大いに語っていただこうと思っています。一般の飲み手から、プロのきき酒師まであらゆる地酒ファンが今、傾聴すべき最新かつ最良の静岡地酒論。ぜひふるってご参加ください。お待ちしています。

 

■日時 2016年3月15日(火) 18時45分~20時45分  *終了後、「湧登」(静岡駅南銀座)にて二次会を予定しています。会費実費。

 

■会場 静岡県男女共同参画センターあざれあ 4階第一研修室  http://www.azarea-navi.jp/shisetsu/access/

 

■講師 松崎晴雄氏(日本酒研究家・日本酒輸出協会理事長・静岡県清酒鑑評会審査員)

      望月正隆氏(静岡県酒造組合会長・「正雪」神沢川酒造場代表取締役)

 

■会費 1000円

■定員 60名 *定員になり次第締め切ります。

■申込 しずおか地酒研究会事務局(鈴木) mayusuzu1011@gmail.com

 

 

 



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