杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

ポートランド紀行(その4)ローズフェスティバル

2016-07-10 10:50:53 | 旅行記

 少し間が空いてしまいましたが、6月のポートランド紀行のつづきです。

 6月12日(土)はポートランド市街で開催されたローズフェスティバルのカーニバルを見物しました。なんでも1907年から始まった全米屈指の歴史を誇るお祭りで、この日はフェスティバル最大のクライマックス「グランドフローラルパレード」。全米各地で開催されるパレードやカーニバルの元祖ともいうべきビッグパレードだそうで、偶然居合わせることができてラッキーでした!

 ポートランドは古くからバラの街として知られていて、今回我々は訪問しませんでしたが、市街西側のワシントンパークにあるインターナショナル・ローズテスト・ガーデンでは、560種1万株のバラが栽培されているそうです。

 ローズフェスティバルは1907年当時のハリー・レーン市長が「バラをモチーフにした祭りが必要だ」と提案し、以来、100年余にわたり、毎年5月下旬~6月上旬の3週間にわたって開催されています。100周年を迎えた2007年にはIFEA(国際祭事協会)によって、世界一のフェスティバルに贈られる「グランド・ピナクル・アワード」に選ばれたそうです。期間中には全米最大のローズショーでバラの新品種がお披露目されたり、ドラゴン・ボートレース、花火、コンサート、ハーフマラソン大会、カーレースなどポートランド市全体で様々なイベントが開かれ、世界中から観光客が訪れます。


 そしてフェスティバル最大の見所が、6月12日(土)のグランドフローラルパレード。ダウンタウンの約4.2マイルのコースを可憐な花でディスプレイされた山車やマーチングバンドが約5時間にわたって練り歩きました。我々がダウンタウンに到着したときは、すでにパレードコースのメインスポットは見物客がしっかり場所取り。妹夫婦がパレードの先頭がやってくる時間とコースを調べ、空いていそうな沿道を見つけてくれて、先頭からじっくり見物することができました。

 

 ポートランドのあるオレゴン州には、年間を通してスキーができる万年雪の山、70余の滝を有する渓谷、世界最高のピノノワール・ワインを生産するワイナリーやブルワリーがあります。NIKEやColumbiaといったスポーツ・アウトドアのトップメーカーをはじめ、IT関連やデザイン等クリエイティブな産業拠点もある。中核都市であるポートランドは都市デザインや環境問題に対する先進的なビジョンを持ち、全米で最も住みたい街ナンバーワンといわれているそうです。

 パレードの山車は地元のハイスクール、NPO、メーカー、軍隊など多種多様な団体が活動メッセージを伝えるもの。なるほど、エコや動物保護を意識したデザインが目立っていました。

 

 

 

 

 

 ハイスクールのマーチングバンドでは、先生がパレードの途中で生徒に水分補給しているのが微笑ましかった(笑)。ウマやラバの種類や数もハンパない。バドワイザーのビール樽パレードは、全米の各パレードでも引っ張りだこの人気山車だそうです。スコップとダストボックスを持った山車がちゃんと続いて、動物が路上で粗相をしたときはサッと片付けてました。パレード慣れしてるなあと感心しつつ、私自身はパレード参加者がどこでどういうふうに待機していたのか、バックヤードが気になって仕方ありませんでした(笑)。

 

 昨年のMLS(メジャーリーグサッカー)で年間王者に輝いたポートランド・ティンバース。元日本代表の鈴木隆行選手が一時在籍していましたね。アラスカ航空がメインスポンサーということで、客室乗務員のみなさんもスーツケースを引いてパレード。学会等で全米各地を飛び回っている妹は「アラスカ航空のサービスが全米ナンバーワン」と言ってました。

 

 パレードを1時間ほど見物した後、ダウンタウンをタウンウォッチング。「ポートランドの地図がほしいよー!」とわめいていた私を妹夫婦が案内してくれたのは、ダウンタウンの 1 ブロックが埋まるほどの規模を誇る名物書店「パウエルズ シティー書店」。新品も古書も扱う全米屈指の独立系書店です。私はここで地図プラス、アメリカ人研究家が出版した『ZEN ART BOX』を購入しました。

 A5サイズの禅画(英文解説付きの複製画)40枚セットで9.95ドル。「えっなんでこんな安いの!?」とビックリしてよく見たら元の値段は26.95ドル。2007年の発行なので古本って感じでもないと思うのですが、この書店では新刊を中心とした定価販売本と、日本では古本コーナー扱いになる廉価本が、同じ書棚でちゃんとジャンル別に陳列されていて、利用者にとってはとても買いやすかった。

 独立系書店といわれるからには出版元から直に書販流通できているんでしょうか、日本でも紀伊国屋書店あたりがそういう動きを始めているようです。とにかく、本屋さんは街にはなくてはならない、とくにツーリストにとってはその町を知る拠り所となる存在です。本屋さんを大切にする町=ホスピタリティのある町という認識を広めたいですね!

 

 前の記事でふれたようにポートランド周辺は農作物の種類が豊富で、地産地消の意識が徹底しています。有機食材のレストラン、自家焙煎のコーヒー専門店、ブルーパブ (地ビールパブ)の数はハンパない。市街地は自転車を利用しやすい街づくりが進んでいて、レンタル自転車やMAXライトレール (路面電車)が便利です。我々は1日フリーチケットを購入してMAXを利用しましたが、 駅は自動発券機があるだけで無人かつ改札もない。乗客の性善説で運営してる?とビックリでした。

 

 ダウンタウンのハイセンスなセレクトショップでは日本と北欧のデザインが大人気。アートシーンには音楽も欠かせないということで、アメリカのジャズやポップスをこよなく愛する平野さんは「1か月ぐらい滞在して町中のレコードショップを廻りたい」と吐露していました。

 

 ウィラメット川の沿岸にはパレードにも参加していた米国海軍のLPD27(ドッグ型輸送揚陸艦)が停泊していました。沿岸に広がる公園の一角には「JAPANESE AMERICAN HISTORICAL PLAZA」の記念碑が。日系人が戦時中に体験した様々な艱難辛苦を想像し、今、こうしてアメリカの軍艦をのんびり見物し、アメリカのダウンタウン文化を満喫できる幸せをつくづく実感しました。

 日々、日常で感じるさまざまなストレスの究極な解消方法って、「とりあえず生きていられる」「食べるものがある」「居場所がある」ことを有り難いと再確認することだと思います。楽しい旅の合間にも、こういうことを考える機会が持てて、どこか、ホッとしました。

 

 

 

 5日間では雰囲気観光しかできませんでしたが、ポートランドの魅力については、ポートランド・オレゴン観光協会の古川陽子さんのこちらの記事が参考になりました。機会があったらぜひ訪ねてみてください!

 

  



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