昨日(25日)はJA静岡経済連情報誌スマイルのセルリー特集の一環で、埼玉県入間市にある漬物製造業・おき商店を訪ねました。日本の漬物屋さんでも珍しい、セルリーの漬物を専門に作っている業者さんです。
過去ブログでも紹介したとおり、セルリーの流通は夏場は長野県産、冬場は静岡県産が主流なので、おき商店のセルリー漬物も、11~5月ぐらいまでほとんどが静岡県産セルリーを使っています。JA静岡経済連との取引が始まったのは、平成13年から。この年、漬物業界では他の食品業に先駆けて原料原産地表示を義務化することになったため、おき商店でも国産セルリーをいち早く仕入れる体制を作ったのでした。
おき商店は、流通販売の仕事をしていた隠岐さんが昭和53年、30歳で独立したとき、自分が手がける商材の中で漬物の売れ行きが安定していたため、自分で製造販売しようと59年に漬物業に転身。大根や白菜など、どこでもあるような漬物では勝負にならないから、誰も作ったことのない新しい漬物でやろうと、最初からセルリーに特化して取り組みました。それだけに、国産セルリーの仕入れルートを安定確保するのは死活問題でもあったわけです。
いろいろ調べて長野が日本一の産地と知り、まず長野県庁の農林水産担当セクションに直接アタック。全農長野を紹介してもらい、ルートを開拓しました。冬場は静岡県産が主流になると知って、次は静岡県庁へアタック。長野も静岡も、首都圏へはセルリー自体の出荷が多かったため、比較的スムーズにルートが確保できたそうです。これが、北海道や九州の特産野菜だったら苦労したことでしょう。
はじめは、セルリー好きの人が、珍しい食べ方だと評価してくれて、そのうちに、生では匂いや香りが気になるという人も、浅漬けなどで苦みを和らげた味がウケて、ファンが広がっていきました。国産原料にこだわる大手漬物卸会社、首都圏のストア、某居酒屋チェーンなど、取引先も増えて、今ではセルリーの漬物といったら日本ではここしかない!という存在に。日光、鎌倉、尾瀬、成田山参詣道といった首都圏の定番観光地の土産物店にも置かれるようになりました。私も以前、松井妙子先生と尾瀬にバス旅行したとき、土産物店で地酒『水芭蕉』とセルリーの浅漬けを買って宿でポリポリやった覚えがあります。
昨日は製造工場の作業風景を見学させてもらいました。
工場は、入間市駅からタクシーで7~8分の住宅地のど真ん中にある、“工房”といっていいほどのこじんまりとした建物。看板がないので、白衣の作業員を見かけなかったら素通りしたかも。
事務所に入ると、ぷうぅ~んと香るセルリーフレーバー。「おぉ、ここに間違いない」とまずは匂いで確信しました。昨日朝、到着したばかりの浜松産セルリーが冷蔵庫に山積みになっていました。
入荷してから3日以内に漬物に加工するそうで、1本1本手作業で筋を取ったり長さを整えたりします。国産セルリーはカタチが均一じゃないので、全部手作業なんですね。
パートさんは昼夜2交代制で、夜は葉を取り、昼は茎の処理。カットや包装は機械を使いますが、いずれも数人がかりで手がかかっています。だぶん、おき商店の事業規模から考えたら、あり得ない人手の多さだと思いますが、機械化を最小限に抑え、手間をかけるからこそ、小さな業者でも付加価値のある商品ができるんですね。
これは静岡吟醸を担う小さな酒蔵を見ればわかることです。
帰りにいただいたお土産5種(浅漬け、ゆず風味漬け、粕漬け、しょうゆ漬け、キムチ漬け)のうち、一番人気の浅漬けと、個人的に楽しみな粕漬けを今朝さっそく試食してみました。浅漬けはホントにさっぱりした塩味で、冷酒の酒肴にもピッタリくるんじゃないかな。おき商店が納入している某居酒屋チェーンでも、脂っこい料理や酒の合間に口直しで頼むお父さん諸氏が多いそうです。女性も、ピクルス感覚でイタリアンやサラダメニューに使えそうです。
粕漬けは、おき商店でも新しい商品で、お客様の反応が気になる、と言っていました。わさび漬けを常備食にしている静岡人なら、セルリーの粕漬けもイケると思いますよ、と応えた私。実際、納豆ご飯に実によく合いました!
上記5種をセットにして、静岡向けにも本格的に通販を始めるそうです。年明け発行予定のスマイルで、購入方法などを詳しくご紹介しますので、楽しみにしてください。
すぐに味見してみたい!という人は、首都圏なら東急ストアで買えるそうです。他の販売先についてはおき商店(電話04-2963-0960)にお問い合わせを。