杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

上海研修ツアーその4

2009-10-06 11:32:53 | ニュービジネス協議会

 ふたたび(社)静岡県ニュービジネス協議会上海研修ツアーのご報告に戻ります。

Dsc_0243  9月23日は、午前中に企業視察、午後は唯一の観光だった上海森ビル、夕方から静岡国際経済上海事務所を訪問し、日本国駐上海総領事館の佐々木明彦領事に、上海経済の概要をレクチャーしていただきました。

 

 

 まず上海市のイロハから。

 中国には4つの直轄市と22の省、5つの自治区があります。4つの直轄市とは文字通り中国を代表する巨大都市・北京、天津、重慶、上海のこと。上海市は面積6341平方キロメートルで東京都と埼玉県を合わせたぐらいの広さ。戸籍人口は1371万人(実際には1888万人住んでいる=約500万人が地方からの出稼ぎ労働者)。中国13億人のうちの1割強が住んでいるんですね。

 

 

Dsc_0208  2009年上半期の上海GDP成長率はプラス5・6%。08年はプラス9.7%だったので、やっぱりリーマンショックの影響はあった。・・・と言うべきか、リーマンショックがあってもプラス5%も成長してると言うべきか。いずれにしても国の対策は早く、景気減速に伴って国家レベルでは4兆元(約60兆円)の経済対策を断行し、上海市では5千億元(約7兆円)規模の都市インフラ整備を実施中です。省庁の無駄遣いをひねり出すのに四苦八苦している日本の民主党政権と、中国共産党独裁政権では、ボリュームとスピード感は比較にならないですね。

 

 

 ちなみに、上海市の一人当たりのGDP(08年)は10,536ドル。中国の直轄市・省・自治区あわせた31地区のランキングでは堂々のトップで、最下位31位の貴州省1,271ドルの約10倍。トップと最下位で10倍の差があるランキングなので、全国平均(3,270ドル)だけ見ても中国経済の実態はわからないというわけです。下位ランクの地区は、外資の影響をほとんど受けておらず、政府の内需対策が重点的に進むとみられることから、今後の発展が有望との見方もあるそうです。

 

 一人あたりのGDPが中国ナンバーワンの上海市民。その豊かさの証明ともいうべきか、上海エリアからのビザ発給件数はウナギ登りで、08年は過去最高の26万件。団体観光向けビザ発給件数が前年比プラス60%増の13.6万件と劇的に増えています。09年7月から個人観光でも発給可能になり、この2ヶ月間で1,330人が取得したそうです。

 行先は、中国全域からの訪日者が昨年初めて100万人を突破したことからも、日本人気が根強く、ショッピング、温泉観光はもちろん、人間ドックツアーなんていうような目的限定ツアーもあるそうです。…日本酒ツアーなんてのもアリですね、十分に!

 

 

Dsc_0185  さて上海市内には約7,200社の日系企業が進出し、業種は今までの製造業から、徐々にサービス業、高付加価値内販型にシフトしています。政府の4兆元という経済対策には、自動車減税や農村向け家電購入補助金政策なんかがあって、中国国内の内需拡大がますます進むとあって、日系企業も日本なんかより中国国内をマーケットにした営業活動に力を入れるわけです。ただ政府の景気対策は課税強化が原資になっていて、労働賃金の上昇や資源・燃料の高騰など事業環境は厳しくなる一方。中国でビジネスをやるには、やっぱり腹をくくらないと・・・ですね。

 静岡県産業部では、昨年、県内企業の海外進出状況を調査しました。それによると、進出先で一番多いのはやはり中国(233社403事業所)、2位がアメリカ(98社162事業所)、3位がタイ(97社130事業所)、4位インドネシア(58社74事業所)、5位台湾(35社53事業所)という順。地域別ではアジアが全体の66%を占めています。

 

 

Dsc_0175  中国への進出目的は、「現地市場の開拓」「低コスト労働力の利用」「取引先、親会社からの受注確保」が主目的で、他の地区に比べ「安価な原材料の確保」という理由も高いようです。ただし、アンケートでは問題点として「現地労働力の質や確保に不安」「現地の原材料・部品調達に不安」「現地政府の窓口との折衝が難しい」「現地政府の経済・産業政策が不安定」という意見も多い。とくに日本とは異なる雇用環境にとまどい、現地での労務・人事管理に不安があるという声が聞かれました。

 

 

  Dsc_0277 23日午前中に訪問した上海未路駆(ミロク・本社三島市)、翌24日午前中に訪問した南部塑料有限公司(南部化成・本社吉田町)でも、従業員に「誠心誠意」というフレーズや、「5S」「7S」を徹底させるのに、日本の工場と同じように壁にスローガンを掲げ、なおかつ「整理整頓をするのは、君たちがケガをしないためだよ」と理詰めで説得する努力をしていました。従業員の中には、日本のファッションやカルチャーに親しむ若者も増えているようで、“日本的”に対する抵抗感は少しずつ減っているように思いました。

 

 

 

 さてさて、日本的なものの代表格・日本酒の消費動向ですが、県上海事務所では2005年に市場調査を行い、私も以前報告書を見せてもらったことがあります。今はこちらで閲覧できます。

 

 その後の経済状況の変化で、日本酒の需要がどうなったのか、県上海事務所の若田部所長あてに事前にメールを送ったのですが、肝心の所長に23日訪問時には会えず、翌24日の夜の会食時にちょこっとご挨拶できた程度。残念ながら後追い調査はしておらず、静岡県産酒の進出は今のところゼロとのことでした。

 

 ただ、上海では日本風の大衆居酒屋が大人気で、若者のトレンディスポットになっているとのこと。これがもう少し根付けば、経済発展著しいこのエリアには、大衆居酒屋からこだわり居酒屋→割烹居酒屋→高級酒場と、静岡県産酒が参入できる場も増えてくる可能性は大いにあります。

 

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 今回は上海市内に1日半ぐらいしか滞在できず、23日夜は上海未路駆の社員に案内してもらって、上海新天地(ヨーロッパ風の古い町並みを利用したカフェやショップが並ぶお洒落なゾーン)のタウンウォッチング、24日夜は足つぼマッサージに行ってしまいました。

…結局、日本酒がありそうな居酒屋めぐりはできませんでしたが、静岡―上海便が安い時期にフリータイムで行けるツアーで、ぜひ上海日本酒事情をじっくり探ってみようと思っています。地酒研メンバーで興味のある人、ぜひご一緒しましょう!


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