杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

酒で運を使い果たす風来坊

2013-06-17 12:32:38 | 地酒

 3本重なった原稿の締め切り。コンフェデ杯を見ようと早起きした甲斐もあって、サクサクっと片付いて、久しぶりにゆっくりコーヒーを飲んでいます。日本代表の試合じゃなければ、余裕で、ながら鑑賞できますね(笑)。さっすがスペインは素人目に見ても強えぇ・・・!

 

 

 今月に入り、仕事の量が少しずつ回復してきて、なんとか今年もこの稼業を続けられるとホッとしています。不安定極まりない働き方なのに、25年以上も続けていられるって幸せなんだろうか・・・。「職場」とか「家庭」といった、“所属先”を持たないあやふやなスタイルも、これはこれでアリなのかなあ。こんな風来坊が無事、生きていける社会って、とりあえず平和なんだと思います。

 

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 このところ、いくつかの酒宴に参加しながら報告できなかった会をまとめて紹介します。まず5月21日~22日の全国新酒鑑評会。21日の酒類総合研究所講演会では「清酒酵母がストレスに弱い」「酒粕の新たな効能」「熟成香と老香の違い」など興味深いお話をうかがいました。日刊いーしずの地酒コラム【杯は眠らない】で紹介しましたのでこちらをご覧ください。

 

 23日東広島で全国新酒鑑評会製造技術研究会(こちらを)に参加した後、広島市街へ。前日、偶然入った珈琲豆専門店の女将さんと会話している中で、近くに行きつけの地酒立ち飲みバーがあると教えてもらったのです。立町にある『善吉』というお店。小さなお店だったけど、品揃えはかなりの通好み。ご主人はこちらが何も言わずとも、おススメを次々と出してくれます。Imgp1392

 

 つまみは広島はんぺんや冷やしおでん。昼間はお弁当やお惣菜を販売しているようで、家庭的な酒肴が充実していました。

 この店を紹介してくれた珈琲豆専門店の女将さんもわざわざ駆けつけてくれて、初対面とは思えないほど話し込んでしまいました。

 

 気がつくと、全国新酒鑑評会に来たと思われる各地の蔵元さんや杜氏さんがご来店。ご主人から○○酒造の杜氏さんだよ、と紹介されて、またまた思わぬ酒談議。旅先の酒場気分を満喫できました!

 

 

 

 

  5月26日にはホテルセンチュリー静岡で開かれた『ヴィノスやまざき・2013地酒フェスティバル蔵会』に行ってきました。今年で創業100周年なんですね。すごい店です。

 

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 20年前、この店の80周年記念の年に静岡新聞で全面広告を作らせてもらったのが、コピーライターとしての大きな自信になりました。

 

 皇太子殿下ご成婚を祝して『雅ひめ』というやまざきオリジナルの酒銘を付けさせてもらったこと、その後、シリーズで何本か広告を作らせてもらい、『蔵直便』というキャッチコピーが商標登録にまでなったこと、そして折につけ、亡き山崎巽会長のお話をうかがいながら、“造り手と売り手と飲み手をつなぐ”という活動テーマを自然に授けていただいたこと。・・・いろいろな意味で自分を育ててくれた酒販店でもあります。

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 日本を代表するワイン専門店として発展される中、ローカルな地酒にこだわる自分には手の届かない店になったという思いがありましたが、久しぶりに奥様や祐子さんにお会いし、会長から受けたご恩に対するお礼を伝えることができ、清々しい気持ちで一杯になりました。「また、まゆみさんに小粋な酒銘を考えていただきたいわ!」と笑顔を返してくださった祐子さんに、これからも、真正面から返しができるクリエイターでありたい、と思いました。

 

 

 試飲した酒の中では、待望の國香の誉富士使用酒。まだ搾りたての若々しさがありましたが、最高の静岡吟醸を醸す松尾晃一さんが、誉富士をどのように使いこなしたのか、若干の熟成期間をおいて、再度確認してみたいと思いました。こんなふうにワクワクさせる酒、本当に貴重です。Imgp1430

 

 

 喜久醉純米大吟醸のやまざきPB酒である『雅ひめ』、久しぶりに飲めると思ったら、人気殺到であっという間になくなってしまいました。しゃぁないけど、松尾さんの弟弟子であり、今年の静岡県知事賞を受賞した青島孝さんの手腕・クオリティには全幅の信頼を置いています。入手された方は、大切に味わってくださいね。

 

 

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 会場には誉富士の専用ブースもあって、開発者の宮田祐二先生方が出張PRをしていました。ブースに張り付いて他の酒を試飲できない方々が気の毒になり、私が各ブースを回ってグラスでせっせと運んであげているうちに、『雅ひめ』を飲み損なった次第です(苦笑)。ちなみに、この日飲んだ誉富士の酒の中では、初亀の『岡部丸』がワタシ的にジャストフィットでした。

 

 

 

 

 

 

 6月3日には、東京赤坂で開かれた山同敦子さんの『極上の酒を生む土と人~大地を醸Dsc_0182
す』出版祝賀会
に参加しました。

 全国の名だたる酒蔵やマスコミの方々が集まっていて、私のようなローカルライターが出張るような場所ではない気もしましたが、同書で取り上げられた青島孝さんと松下明弘さんが真っ先に壇上で紹介され、なんだか我が事のように誇らしく思いました。

 

 

 ニュージーランドでワインを造る楠田弘之さんは存在感がありました。初めて飲んだ『クスダ・ピノワール』、静岡吟醸が最上の酒と思っている自分にも、引っかかりなくすんなり飲めました。

 

 

 

 

 

 

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 6月7日は恒例の志太平野美酒物語2013。今年も静岡駅前のグランディエールブケトーカイの一番でかい宴会場で、450人を集めた大盛会でした。

 

 

 

 私は今年、日頃お世話になっている静岡県ニュービジネス協議会の会員さんをお誘いしました。茶道研究会の望月静雄先生にも来ていただき、酒杯の作法などご教授いただこうかと思ったのですが、蔵元ブースで試飲酒を飲み漁るのに夢中で、先生をホッタラカシ(苦笑)。初参加の皆さんは地酒ファンの熱気に目を白黒させ、飲む酒がどれもハDsc02461ズレがないのにビックリされていました。

 

 望月先生にはジョン・ゴントナーさんを紹介しました。裏千家インターナショナル運営理事で、海外へ茶の伝統を普及させるお仕事をされている先生と、海外に日本酒の価値を伝えるジョンさん。“良縁”になればいいなあと思います。

 会場では、年に1回、この会のときだけお会いできる懐かしい酒徒の皆さんと親交を温めることができました。お声をかけてくださった皆さま、本当にありがとうございました。 

 
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 写真は地酒研でお世話になっている松崎晴雄さんと奥様典子さん、ジョン・ゴントナーさん、すっかりダンディー?になった浜松の片山酒店さん、今やベストセラー作家?の仲間入りをした松下明弘さん。

 

 

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 2次会は、伝説の洋酒バー『ブルーラベル』へ。ボウモア62年古酒にしびれました。

 最上の静岡吟醸を味わった後の、幻のシングルモルト―明日の仕事や暮らしの保証がない風来坊な自分が、どうしてこういう酒にありつけるのか、我ながら笑っちゃうほど不思議です・・・。

 

 

 きっとこうして美味しい酒に出会うたんびに自分の運を使い果たしちゃって、最後は何も残らないんだろうな~と今から覚悟しています。

 

 


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