杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

正雪・山影杜氏の〈現代の名工〉祝賀会

2014-05-12 22:15:21 | 地酒

 ひと月遅れのご報告です。4月14日(月)、JR静岡駅前グランディエールブケトーカイで、『正雪』の杜氏・山影純悦さんの〈卓越した技能者=現代の名工〉選出の記念祝賀会が盛大に開かれました。全国には〈現代の名工〉に選ばれた酒造り職人が何人かいらっしゃいますが、静岡県の酒蔵に務める杜氏さんでは初めて。県酒造史に残る快挙ということで、県内多くの蔵Imgp0110 元さんや杜氏さんが顔をそろえて 山影さんを祝福しました。

 

 

 『正雪』の醸造元・神沢川酒造場の望月正隆社長が山影さんに花束を贈呈し、静岡浅間木遣り保存会の皆さんが伝統の木遣り唄でお祝い。

 

 

 乾杯の音頭をとったのは『開運』の土井清愰社長です。能登杜氏四天王の一人に数えられた波瀬正吉さんがご存命だったら、現代の名工に間違いなく選ばれていたと思いますが、こうして他蔵の杜氏さんの祝賀会で、「静岡県酒Imgp0131_2 造業界の誇り」と祝辞をされる姿は、さすが土井さんです。

 

 

 

 

 まだ酒造りが終わっていない時期にもかかわらず、同郷の山影さんのお祝いにかけつけた南部杜氏の多田信男さん(磯自慢)、小田島健次さん(富士錦・萩錦)、八重樫次幸さん(富士正)、静岡県杜氏研究会会長の土田一仁さん(花の舞)も楽しそうに「正雪」を飲んでいました。

 

 

 

 不肖私めも杜氏さんたちとはかれこれ20年以上のおつきあい。といっても一度に大勢の杜氏さんたちと飲める機会はめったになく、すっかり宴会モードに突入し、2次会3次会まで盛り上っちゃいました。

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 同業他社であっても、同じ酒造りの苦労を解り合える職人同士の絆は、ほんと、素晴らしい。

 

 

 とりわけ静岡県の場合、酒どころのイメージがない、いわば“後進地域”とみなされていました。そんな地域に生まれた静岡酵母によるハイレベルの吟醸造り。酵母開発の河村傳兵衛先生が、優れた杜氏のテクニックを他蔵の杜氏に伝え、技術の共有化と向上に尽力されたことが大きかったといわれます。

 そう口で説明するのはカンタンですが、出身地やキャリアが異なる杜氏さんたちが、いかに奮起し、貪欲に技術を磨こうと努力されたか・・・そのモチベーションの高さが、静岡の酒をここまで高めたに違いありません。

 

 その中心にいたのが、山影さんであり、波瀬さんであり、多田さんたち卓越した技能の杜氏さん。これまで酵母や酒米といった素材のスペックが注目されてきましたが、現場で地道な努力を重ねてこられた職人さんたちが、こうして晴れの舞台で堂々と称賛される日が、静岡県にもようやく来たのだ・・・と感無量になりました。

 

 

 振り返ると、山影さんが祝賀会の挨拶で、賞をもらうことがどんなに励みになるかということを朴訥と語っておられたことが本当に心に残ります。

 

 静岡県には〈ふじのくに食の都仕事人〉という認定制度がありますが、サミット酒も生んだ静岡の酒の担い手である杜氏さんたちにもぜひスポットをあててほしいと思います。

 たとえば昭和61年(1986)に全国新酒鑑評会の大量入賞で、一躍全国区の評価を受けた年から30年の節目にあたる平成28年(2016)あたりに、静岡県杜氏研究会を何らかのカタチで表彰していただけないものでしょうか・・・。長年同研究会の会長も務めてこられた山影さんには、ぜひその日まで静岡県で頑張っていただきたいと願っています。

 

 

 

 

 山影さんの今回の快挙については、日刊いーしずの地酒コラム【杯は眠らない】で2回にわたって詳しく紹介しましたので、ぜひご覧ください。

 

【杯は眠らない】

 第20回 南部杜氏 (こちら

 

 第25回 杜氏の矜持 (こちら

 

 

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