杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

初亀の名杜氏・瀧上秀三逝く

2010-11-21 11:53:29 | 吟醸王国しずおか

 とても残念なお知らせです。
 初亀醸造の名杜氏としてファンも多い、能登杜氏の瀧上秀三さんが、11月18日に逝去されました。

 

 

 2008年春に杜氏を引退され、吟醸王国しずおかの撮影には間に合わず、
パイロット版第1弾では、引退する瀧上さんへの入ろうと感謝の念を込めた、初亀の橋本謹嗣社長の神神社大祓い儀式の祈りの様子を、瀧上さんの写真をPhoto 添えてご紹介しました。

 この写真、たしか98年に静岡新聞社から発行した『地酒をもう一杯』の取材時に撮ったものですが、我ながら、瀧上さんの気骨さが伝わるいい写真だ!と満足してました。映画本編でも使う予定でいます。

 

 

 

 

 08BY(酒造年度)は、瀧上さんの志を継いだ若き杜氏・西原光志さんの仕込みの様子を撮影しました。しかし残念なことに、西原さんは初亀をこの一期で去り、現在は志太泉の杜氏として活躍中です。志太泉に移られた09BYにいきなり全国新酒鑑評会で金賞受賞しましたので、たぶん酒蔵との相性みたいなものがあったのだと思います。杜氏も生き物なら、酒蔵そのものも生き物なんですね・・・。

 

 

 初亀は、09BYから西原さんの補佐をしていた辻村和則さんが杜氏となり、二期目の仕込みに取り組んでいます。映画でも、辻村さんの仕込みを撮影し直しました。撮影を1年早くスタートできたら、瀧上さんの最後の酒造りの雄姿を収めることもでき、その後の杜氏交代劇で橋本社長やカメラマン成岡さんに余計な気遣いをさせることもなかったと後悔していますが、今更どうにもなりません・・・。

 

 とにもかくにも、映画が完成したら瀧上さんが余生を送られる能登でも上映会を開いて、酒造りの伝統の灯が守られる様子をご覧いただき、ご安心いただこうと思っていました。

 なかなか完成のめどが立たず、忸怩たる思いでいたところに、この訃報で、自分の非力さを改めて痛感しました。『吟醸王国しずおか』では、何度こういう思いをさせられたことか・・・。

 

 

 高砂の吹上さん、開運の波瀬さん、そして瀧上さん・・・静岡の地酒を支えて来られた能登の名杜氏が、次々と旅立って逝かれました。天空に酒場があるならば、富士山を見下ろしながら酒杯を酌み交わしておられることでしょう。

 

 心よりご冥福をお祈りいたします。