杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

コミュニティレストランでの試写会

2010-06-14 09:50:34 | NPO

 先週末の11日(金)、12日(土)と、『吟醸王国しずおか』パイロット版試写会を行いました。

 このところ毎週のように各地で試写の機会をいただき、この映画が少しずつ“進化”しているような気がして、大きな手ごたえを感じています。今月は18日(金)に静岡市内の異業種経営者の情報交換会『気楽勉強会』、23日(水)は県職員有志の方の集まり、27日(日)には掛川での試写&はしご酒交流会で試写を予定しています。各試写会の関係者の皆さまには、改めて深謝申し上げます。

 

 11日(金)の試写会会場は、浜松市のコミュニティレストラン『てまえみそ』。コミュニティレストラン(コミレス)とは、地域住民の“お茶の間”や“集会所”を兼Imgp2593 ねた地域密着型のレストランで、多くがNPOによる非営利運営です。

 

 私も長年、NPO関連の取材をし、独り暮らしの高齢者、家庭内で孤立化する子育て世代、ひきこもりがちな障がい者、地域ボランティアの活動拠点を模索するシニア世代の人々などが集まるコミュニティスペースが各地に増え、そういう場所にはちょっとした食事処や物販コーナーが自然発生している例をたくさん見てきました。

 コミュニティレストラン(コミレス)という言葉があるのは今回初めて知りましたが、これはNPO法人研修・情報センター代表理事で、酒の世界では『酒蔵環境研究会』の代表幹事としても知られる金沢大学大学院の世古一穂教授が提唱し、全国展開しているものだそうです。

 

 浜松の『てまえみそ』は、浜松のNPO法人アクティブシニアタンク理事のImgp2594田久恵さんが、自宅を改築する際に、思い切って1階をコミレスにしようと一念発起し、自前で厨房設備をそろえ、調理師免許を取って2005年に開店。現在、固定店を持たない出張料理人や、これから独立して店を持ちたいという料理研究家の方々に曜日変わりでレンタルさせるという方法で運営しています。毎週火曜日には新鮮朝市を、店内では常時クラフトショップを展開中で、地域の催事情報等も多数取りそろえています。

 こういう場所は、ひところは、市役所のロビーや出先機関のオープンスペースなどでよく見かけましたが、今はこうして地域の中に溶け込んで、ご近所のみなさんが気軽に“お茶の間”として利用できるようになったんですね。

Imgp2595  

 

 

 11日は『てまえみそ』で月1回、地酒サロン「地ねた屋」を開催する旭屋酒店さんがパイロット版試写を企画してくださいました。世古教授はじめ、浜松市内でさまざまな地域活動に尽力されているNPO関係者、プランナー、市職員、酒販関係者など、“情報感度”の高い方々18人が集まり、パイロット版を観賞した後、映像に登場する酒蔵4社の酒と、出張そば職人野澤俊治さんのそば料理を楽しみました(試写会の様子はこちらをご覧ください)。

 

 

 

 現在、展開中のパイロット版試写会は、今回のように、少人数でも地域をよくしたいと何らかの活動をしている人々に直接届く形で開催できるスタイルが、自分としても理想的だと思っています。地酒ファンはもちろんのこと、日本酒とあまり接点のない方でも、この作品の“地域資源の価値を伝える”という趣旨をキャッチしてくださる方に、一人でも多く観ていただきたい。

 

 DVDを観賞できる環境であれば、どこにでも出張しますので、よろしくお願いいたします!

 


意志ある美しき人

2010-01-14 00:15:54 | NPO

 寒波襲来で、連日真冬らしいお天気です。一昨日(12日)は浜松、昨日(13日)は御前崎と、風の強いまちを取材で走り回り、肌がガサガサになってしまいました。…こんな日の夜は酒風呂に限ります!

 

 

 さて、昨年末のブックレビューの記事に、「市井で努力する“意志”を応援したい」と綴ったばかりですが、この2日間でとてつもなく価値ある“意志”と出会いました。知的障害児のエイブルアートと、特別養護老人ホームのおむつゼロ―これを静岡で実践している人々です。

 いずれもその分野では名のある方々で、知っている人から見れば「何をいまさら」と思われるかもしれませんが、私はとにかく知らなかったし、知ったことで、世の中捨てたもんじゃない!と心から実感することが出来ました。ここでは無知を恥じずに、素直に出会い知り得て感動したことを綴っておきたいと思います。

 

 まず、一昨日訪れた浜松のNPO法人クリエイティブサポートレッツ。障害や国籍、性差、年齢など、人間社会を仕分けするあらゆる「ちがい」を乗り越えて、人間本来が持つ「生きる力」を引き出す場を作ろうと努力している団体です。

Photo  

 

 代表の久保田翠さん(左から2番目)とは、実は私が駆け出しライターの頃からの知り合い。翠さんのお母様である画家の高木淑子さんを取材したのがきっかけで、淑子さんのご主人である建築家高木滋生さんはじめ、長女翠さん、次女の高木敦子さんとも親交を持ち、姉妹が設立したプロダクションAMZからコピーワークのお仕事をいただいたりもしました。武蔵美の建築学科と東京芸大大学院環境造形デザイン科を修了している翠さんは、建築&環境学の若きプロパーとして、また静岡を輝かせる女性として注目の旗手で、同い年ながら私には眩しく美しい、あこがれの存在でした。

 

 その後、翠さんは和食料理人の久保田優さんと結婚し、浜松へ。高木滋生建築設計事務所の浜松事務所長を務め、優さんも鹿谷町に季節料理の店『久保田』を開業。この店は、静岡新聞社発行の『地酒をもう一杯』でも取材させてもらいました(現在は休業)。

 

 

 

 翠さんの生活が一変したのは、重度の知的障害を持つ長男・壮(たけし)くんを授かった1996年から。96年といえば私は『しずおか地酒研究会』を立ち上げた年で、好きなジャンルの活動に無我夢中だった頃。翠さんの境遇を思うと、酒の業界で物議を醸す存在になってアタフタしていた当時が、なんとお気楽呑気な時代だったかと恥ずかしくなってきます・・・。

 知的障害児の子育てに悪戦苦闘する中、エイブルアートと出会い、「目からうろこが落ちた」という翠さん。「重い障害を持つ子に出来ることは限度があるけど、その、ありのままの姿を認めてあげる場を創りたい」という強い“意志”を持ち、同じように障害児を持つお母さん仲間とレッツを立ち上げます。

 

 私が今回、翠さんに改まって取材する上で一番聞きたかったのが、NPOを立ち上げようとした、その、意志のありかでした。

 知的障害児の子育ては、ハタから想像しても、想像を絶する苦労があると思うのですが、家庭の中で抱え込むのではなく、社会につなげようとした。その意志は、生半可なものではないでしょう。何か特別、大きなきっかけがあったの?と訊くと、「認めてあげる場を創りたかった」と。…ちょっと胸を突かれました。障害があるから何か特別大きな理由が必要だったわけじゃなくて、人間だれしも願う、他者からのアテンションなんですね。

 

 

 2000年、ボランティアグループとしてキックオフしたレッツは、もともとパワーのある翠さんが指揮するだけに、多くのクリエーターや支援者を巻き込み、ハンディのある子とない子が一緒になって表現活動をする講座やエイブルアート作品展、バリアフリーコンサートなどを次々と開催し、2004年にはNPO法人化。アートを切り口に、人間社会のさまざまな「ちがい」を吹き飛ばす画期的な活動を展開します。

 

 

 05年には浜松福祉協働センターアンサンブル江之島に移転し、障害を持つ人の就労にと、カフェの運営にも着手。フロアの半分はアートスペース「みんなの居場所レッツサロン」として活用を図りましたが、地理的ハンディと、公共施設を大規模法人と共有利用する難しさに直面。翠さんは伏せ目がちに「“協働”という言葉の意味を、深く考えさせられた」と振り返ります。

 …私の想像ですが、障害者支援に当事者家族かつ実践者として臨むレッツと、お役所組織の意識のズレみたいなものが、当然、あったのではないかと思います。私の酒の活動と比較するのは申し訳ないのですが、私にしても、川下の底辺で地酒の価値を伝えていこうとする実践活動の担い手と、当事者意識があるのかないのかわからない、川上のお役所的な組織の人たちとは熱の入れ方が違うって感じますもの・・・。

 

 

 2010年4月からは入野町に拠点を移し、障害者自立支援法に基づいたケアハウスの運営に着手するという翠さん。子どもも大人も関係なく、障害のある人の自立訓練や余暇活動をサポートしていく予定です。

 「いろいろ悩んでいたときに、アドバイスをもらった先輩NPOの方から、“気がついちゃった人がやるしかないのよ”と言われて肩の力が抜けた」そうです。…そうなんですよね、べつに義務でもなんでもなく、自分がやらなくてもいいことなんだけど、気がついちゃったら看過できない、やらずにはいられないという思い。そこからスタートする意志の力が尊いのです。

 

 

 翠さんと話をしながら、お遊びみたいな自分の酒の活動も、やればやっただけのことがあるかもよ、と、認めてもらえたような気がしてきました。

 

 

 なんだかレッツの活動のちゃんとした紹介になってなくてすみません。詳しくは情報満載のこちらをぜひご覧くださいね。

 「おむつゼロ」のお話は次回に。

 

 


「途方もない夢」のマネジメント

2009-12-06 12:36:06 | NPO

Imgp1738  昨日(5日)は静岡県教育会館特別会議室で、県主催『NPOリーダーシップ講座』が開かれ、10月に引き続きNPOコンサルタントの坂本文武さんに貴重なお話をうかがいました。

 

 

 前回の講座を報告した10月24日のブログ記事「同情と共感の違い」は多くの方に読んでいただき、とくにNPOの分野とは関係なさそうな酒類関係者から「面白かった」との反応が。そのことを坂本先生にご報告したら、「面白い現象だね~」と感心されました。昨日のお話も、きっと、どんなジャンルの人も共感できる素晴らしい内容でした。忘れないうちにちゃんと記事にしておこうと思います。

 

 今回は、NPOのリーダーに求められる資質というテーマでした。一般にはNPOってボランティアの延長みたいに思われているようですが、NPOには法人格を持ったプロの組織と、ボランティア団体に代表される任意団体に分けられます。任意団体(わがしずおか地酒研究会もそうですが)は、基本的に“自己実現集団”なので、組織を引っ張るリーダーシップやマネジメントはさほど重要視されませんが、NPO法人は組織として効率よく効果的に成果を上げなければなりませんから、そこには戦略や経営的思考も当然必要となります。

 

 ただし、NPO法人が一般の営利法人と決定的に違うのは、求める利益が経済的利益ではなく社会的利益であるということ。坂本先生は「企業が一番苦手なもので、なおかつ今の時代、これを学ばないと企業が生き残っていけない。その意味ではNPOのほうが100年進んでいます」と明快に語ります。

 

 

 一般の企業よりNPOのほうが先進的、と言われてもピンとこなかったのですが、先生の次の解説でナットクしました。

「NPOのリーダーは、企業以上に相手にする人間が多い。すなわち、理事、会員(社員)、ボランティアスタッフ、寄付者、行政、協力企業、地縁等など。

 →しかも、営利企業同士ならお互いに儲かるしくみ「Win-Win」を考えればいいが、NPOの場合は一方通行の「無償の愛」を預かる。つまり、社会的利益のために“ひと肌脱いでくれる”人を相手にする。

 →彼らは「期待する見返り」がそれぞれ違うから、「お礼の仕方」もそれぞれ変えなくてはならない。

 →つまり究極の“個体管理”が必要」。

 

 個体管理というと素っ気ない表現ですが、カスタマーサービスに徹して業績を伸ばす、たとえばディズニーとかリッツカールトンみたいに「一人ひとりのお客様が次に何をお望みかを慮って行動できる」優れたホスピタリティを持つ企業がそうですね。

 

 

 NPOはもともと相手から「無償の愛」をいただいているので、個々に応えなければならない。相手に、「貢献実感=お役に立ててよかったという満足度」や「成長実感=多少なりとも社会をよくすることができたという満足度」を与える必要があるわけです。

 「実利を求めずお金を出してくれる人がいるというのは、近代経営学では考えられないことなんですよ」と坂本先生。そうか、ディズニーやリッツカールトンじゃないけど、これから企業も、NPOのように客に心の満足度を与えなければならないんだな、と改めて理解できました。

 

 

 

 NPO法が施行されて10年経ち、多くのNPO法人が創業→成長時期を経て安定期に差し掛かっています。そして多くのNPO法人が“後継者問題”にぶち当たっていると聞きます。

 

 これは一般の企業にも言えることですが、創業時からガーッと成長する時期は、山の頂上(パラマウント)を目指してグイグイ引っ張る“オレに付いてこい”タイプのリーダーが力を発揮します。

 

 ところが、パラマウント的リーダーがいったん安定・成熟期に入り、次の後継者を考えた時、自分と同じようなパラマウント的リーダーを指名しては「失敗する」と坂本先生。安定・成熟期にはむしろエバンジェリスト(伝道師)やサーバント(家臣)のようなタイプ…オレに付いてこいではなく、組織を常に下から支え、みんなの自主性をうながすリーダーが向いているといいます。

 

 とくにNPOの場合、創業者が高い志や熱意を持ち、そのカリスマ性が求心力になっている組織が多い。でも創業者の情熱というのは、坂本先生曰く「2代目につなげるときは7割に減っている」そうです。まるで伝言ゲームみたいに、次から次へ人に伝わるたびに「稀薄化」されると。

 

・・・う~ん、これは自分も「しずおか地酒研究会」を13年続けてきて実感しますねぇ。自分の「思い」を100%理解し、つなげてくれる人はいないと。だって自分の地酒愛は、自分が20年以上酒蔵を取材して得た実感の塊ですから、他人に同じ愛を求めるのは不可能なんですよね。

 

 

 

 坂本先生はNPOリーダー像を総括して―

「NPOのリーダーというのは、お芝居の舞台を演出するディレクターでありプロデューサーみたいなもの。舞台は一人ではできないが、多くの人々の力を借りて、ストーリー(物語)を見せ、観客に途方もない夢を抱かせる」

「そのストーリーは100年後に地元の沼にトキを繁殖させる、みたいな途方もない夢でいい。魅力的な夢のほうが人を説得し、協働作業に巻き込みやすい。現実味のある夢は夢ではなく、ただの目標」

「そしてチームができたとき、構想が実現に向けて動き始める。リーダーは、突破口を開くテコの力が働くようなアイディアは何か、自分の果たす役割は何か、誰にどんな役割を担ってもらうかをプロデューサーとして戦略だてる」

 と、まるで私の映画づくりへのアドバイスみたいな解説を明快にしてくれました。

 

 実は先日、吟醸王国しずおか映像製作委員会の中で、日頃から「無償の愛」を人一倍示してくれる会員8名に集まってもらい、資金不足の悩みを聞いてもらいました。みなさん、そんなに苦労していたのかと驚いて、真剣に打開策を考えてくれたのです。

 

 そんな私の心の内を見透かしたかのように、坂本先生は「寄付活動をしたことのない人の6割は“頼まれなかったから”という理由です。NPOのみなさんはもっと正直に、困っているんです、お金が足りません、と周囲に吐露してみるのもテですよ」と参加者にハッパをかけていました。

 

 

 

  

 講座終了後は場所を移して交流会。飲み放題コースだと聞いて、幹事の杉本昭夫さんに「飲み放題だとロクな酒が出ない。せっかく坂本先生に飲んでいただくなら最高の静岡の酒を出したい」と耳打ちし、ひとっ走りして『喜久醉純米大吟醸松下米40』をゲット。参加者は地酒とは縁もゆかりもないNPO事業者やアドバイザーのお歴々でしたが、開封した瞬間、フワッと立ち上がるフルーティーな香りに「えぇ?これが日本酒?」とみなさんビックリ。自然保護や環境問題にかかわるNPO関係者が何人かいらしたので、松下米の由来や、今自分が撮っている映画の話をさせてもらい、大満足していただきました。

 

 

 松下米のようにストーリーのある酒が、日頃酒とは縁のない人を“巻き込む”力があるように、自分が目指すもの、挑戦することに夢はあるか、その実現にため、どんな援助を求めたらいいのか、真正面から考えさせられた夜でした。


浜名湖地産地消検定会のお知らせ

2009-11-26 11:40:54 | NPO

 10月15日の全国新聞大会記念で中日新聞特集に紹介したNPO法人はまなこ里海の会の窪田事務局長から、「記事のおかげで我がNPOの知名度がDsc_0009 UPしました」と感謝メールをいただきました。

 あらためて新聞というメディアの影響力の大きさを感じたとともに、影響力があるだけに、日頃、新聞記者のみなさんは批判の矢面に立つことも、こうして厚い感謝を直接もらうこともあるんだろうなぁと実感。一流大学を出たエリートさんしか就けないと思われる新聞記者の仕事も、年季を重ねれば私のような三流ライターが疑似体験できるわけで、物書きを目指す若い方には、クドく、シツコク、粘着体質で頑張っていただきたいですね!

 

 窪田さんからは、浜名湖地産地消検定会のご案内を新たにいただきました。最近増えてるご当地検定の中でも、地域食限定で、海の幸山の幸プラス自然環境についても学べる内容充実なプログラム、しかも受講料タダ!ということで、これはぜひとも参加せねばと思っています。

 

 

 『浜名湖地産地消検定会』

主催/静岡県、NPO法人はまなこ里海の会、後援/浜名漁業協同組合、協力/舘山寺サゴーロイヤルホテル、弁天島遊船組合

浜名湖およびその周辺部では多くの魚介類や農作物が収穫されています。浜名湖周辺に住む者としては、できるだけこれらのものを食材として、地域の気候や風土に合った料理を味わいたいものです。NPO法人はまなこ里海の会では、浜名湖周辺の豊かな食材を知っていただくため、水産と農産に関する講習会を2回実施し、検定試験を行います。成績に応じて「浜名湖地産地消マスター」1~3級が認定され、1級認定者はNPO法人はまなこ里海の会ボランティアリーダーとして登録されます。当会のイベントの数々にスタッフとしてご参加いただけるとともに、1年間賛助会員の資格を無料で与えられます。また検定試験参加者全員に素敵な参加賞がプレゼントされます。

 

 

◆第1回講習会(水産・自然環境講習)

12月19日(土)10:30~13:00、浜松市舞阪文化センター3階大会議室

 

◆第2回講習会(農産・自然環境学習)

1月16日(土)10:30~13:00、舘山寺ホテル山喜 

 

 

◆浜名湖地産地消検定会

2月13日(土)10:00~14:00、舘山寺サゴーロイヤルホテル

 

 

◆申込方法/往復はがきにて申込。検定会のみでもOK。往信欄(うら)には①講習会の参加の有無、②名前、③年齢、④性別、⑤住所・電話番号、⑥興味のある分野―を記入。返信欄(おもて)には自分の住所と名前を記入、うらは白紙で。

◆郵送先(往信・表面)/〒431-0291 浜松市西区舞阪町浜田195 舞阪郵便局私書箱1号 「浜名湖地産地消検定会」係

 

◆締切 講習会参加希望者は12月11日(金)必着。検定会のみの方は1月29日(金)必着。定員50名(多数の場合は抽選)。

 

◆問合せ NPO法人はまなこ里海の会事務局 080-3633‐4946(窪田さん)

 ホームページはこちら

 

 

 

 

 こういう試みは、キックオフの時点では県や各種団体から様々な補助が付いてスタートし、いずれは地元で独自に観光プログラム化し、自立発展していくことを目指すものと思います。その間、行政と地域と民間、さまざまな関係者の調整をとり、オペレーションを担うNPO法人の存在は必要不可欠であり、浜名湖の地域資源活性化に窪田さんたちが果たす役割はきわめて重要です。

 

 

 今、話題になっている行政刷新会議の事業仕分けは、静岡県でも導入され、NPO施策の事業費も削減の対象になっていると聞きます。

 確かに県が手厚くNPO組織を育てる段階は終わったのかもしれませんが、それならなおのこと、これからはNPOが各事業領域で(営利目的ではないという)中間的立場を活かして社会の課題に取り組んでいけるよう、各領域の行政実務担当者や民間業者がNPOのことをしっかり学んでいく段階に入っていると思うし、NPOをうまく活かすことが有益なんだと腹をくくって取り組んでほしいと思います。

 

 その意味で、私が関わっているNPO法人では、活き生きネットワーク(福祉分野)と、今回の取材でご縁が出来たはまなこ里海の会(地域活性)の取り組み、とても注目しています。


農の本質、書く本質

2009-11-17 10:55:21 | NPO

 前回の記事で杉井酒造さんが手掛けた焼酎のことを紹介したところ、「とどのいも子」で検索する人だけが異様に増え、何かあるのかなぁと思ったら、今朝(17日)の静岡新聞朝刊24面に、とどのいも子の原料の芋を栽培する社会福祉法人ピロスさんのことがカラーでデカデカ掲載されていました。

 

 私自身はピロスさんのことも、とどのいも子のことも直接詳しくは知らなかったので(知らずに紹介してしまったことに多少の罪悪感もあったので)、とてもラッキーだったのと、杉井酒造さんの地道な取り組みや、福祉現場で汗を流す人々の苦労にこうしてスポットが当たることが無性に嬉しかった。やっぱり新聞の情報発信力はハンパじゃないですからね。フリーライターの私的日記ブログなんぞ足のツメの垢にも及びません。

 

 ・・・ただこういうニュースの発信に多少なりとも関われたことは、とても幸せだなと思います。ふだんコピーライターとして企業や団体の広告制作に携わっていると、クリエイティブなものを要求されるのに(下請ゆえに)大きな機械の部品の一つにすぎず、その“機械”が結局どんな効果を生み、消費者にこちらが意図したメッセージが届いているのかどうかもわからず終いだからです。結局自分は一匹狼なので、大きな組織に対峙し部品として飲みこまれるよりも、相手の顔や考えがよくわかる対象―どちらかというとその人も組織に組み込まれるより、一匹狼で世間とバトルしながらも渡り合う、そんな相手と向き合っているほうが性に合うようです。

 杉井さんやピロスさんがそうだというわけではありませんが、世間が関心を持たない、関心があってもなかなか行動に起こせない領域で一生懸命努力する人々を応援したい、と改めて思いました。

 

 

 一昨日(15日)は安東米店さんが主催するカミアカリドリーム勉強会に参加しました。

Imgp1693  カミアカリというのはご存知の方も多いと思いますが、喜久醉松下米でおなじみ藤枝市の稲作農家松下明弘さんが開発した玄米食専用巨大胚芽米です。詳しいことは安東米店さんのホームページをご覧いただくとして、カミアカリは現在、静岡藤枝の松下さん、栃木奥久慈の大久保さん、福島会津の菅井さんの3名が栽培に取り組み、来年から山形湯沢の斎藤さんが加わります。

 “変人”松下明弘が作った稲だけに、誰もが簡単に作れる品種じゃないだろうことは素人にも想像できますが、それ以上に、農の本質に真正面から対峙した米作り職人たちの思いがなければカミアカリは育たない。・・・まるで稲が作り手を選ぶような米のようです。

 

 

 

 日本の農業は食糧増産の時代、米ならコシヒカリ、お茶ならヤブキタ、りんごは紅玉、なしは二十世紀というように代表的な推奨品種をみんなこぞって作って、栽培技術の向上や大量流通の仕組みを築いてきました。それはそれで時代が必要とした農の在り方だったと思います。

 

 

 今は量から質へとニーズが変わり、アルコールの世界だって日本酒しかなかった時代から、多種多様な酒が流通する時代になり、今や日本酒の消費シェアは1割以下。そんな小市場になってしまった中で、大手銘柄一辺倒ではなく全国の多種多様な地酒がしのぎを削り合っています。杉井さんのように、地域の小さなニーズにもきめ細かく対応する“御用聞き”のような酒蔵も現れました。小市場には小市場なりの知恵や創意工夫が必要なわけです。

 

 

 

 酒造家よりも危機感が薄い?と思われる農家の中にも、海外経験のある人や、異業種から参入してきた人には、“みんなこぞっておんなじやり方”に違和感を覚え、独自の取り組みを始めた人が現れ始めました。

Imgp1697  15日の勉強会のゲスト講師・平野正俊さんは、まさにそのパイオニアのお一人。掛川市でキウイフルーツカントリーJAPANという世界に通じる体験学習農園と、キウイ新品種を続々と生み出す創造農業を実践される方です。過去、何度となく取材でお世話になった平野さんと松下さんが一緒に語り合うということで、締切過ぎの原稿をほったらかして、はせ参じたのでした。

 

 

 「僕は小学生のころから近所では有名な“行方不明児”で、ロビンソンクルーソーに憧れ、未知の土地を一人で放浪してきた。高知の桂浜に辿り着いたとき、坂本龍馬に倣って“これからは世界だ”と決心してアメリカで2年農業修行をした」と楽しそうに語る平野さん。

 父の茶園の一部を潰してキウイ栽培を始め、30歳の時に父をがんで亡くした後は収入源の茶畑を売り払ってしまい、周囲から呆れられたという話は、松下さんも(同じく若いころやんちゃで、30代で両親を病気で亡くしただけに)大いに共鳴したようで、「昔からこの人に会いたいと思っていたし、いつか会えると思っていた。想像通りの人だった」と感無量の顔でした。

 

 

 平野さんは日本で初めてキウイの本格栽培に成功しただけでなく、現在80Imgp1695 種余の品種を手掛けています。キウイの既存種はもともと68種ほどだったそうですから、新たにオリジナル品種を創り出しているわけです。

 

 

 素人なのでよくわかりませんが、新しい品種を創り出すのは個人農家にとっては大きなリスクと時間を要する大変な作業だと思います。でも品種を一から生み出すことによって、つまりマニュアルなしで土の育て方や肥料の作り方や蒔き方や生育経過や摘果時期など、試行錯誤を繰り返すことによって、はじめて農の本質というものを会得した…!と実感できたのではないでしょうか。この実感を持った農家と持たない農家では、おのずと生き方も変わってくるのではないかしら。

 

 先週のニュービジネス大賞選考表彰式でスポットが当たった技術系起業家たちの活動も素晴らしいと思いますが、人間の生命にかかわる食料というものを担う農業の領域で、既存の常識から抜け出し、しかも目新しいものに飛びつくだけの浮付いたやり方ではなく農の本質にしっかり根ざした仕事をしている人々や、そういう人々を下支えする安東米店のような商業者が、しかるべき評価をされる社会であってほしいと思いました。彼らは他人から評価されようがされまいが関係なく己の信じた道を進むでしょうけど…。

 

 

 平野さんは30数年前、アメリカで修業していたころ、「日本では勉強しないと百姓ぐらいにしかなれないと教育されるのに、アメリカではプロスポーツ選手や校長先生だった人が“いつかは自分の農場を持ちたい”という夢を持つほど、農業はあこがれの職業、カッコいい仕事だった。自信と誇りを持って主体的に農業に取り組む人は、自分にとって農業とは何かをしっかり考えている」ことに気付いたそうです。

 農業もそうだし、酒造業もそうでしょう。私ならば書くこととは何だろうか。…考え、悩み、それで終わらずちゃんと実践する人間でありたいと、大いに刺激をもらった勉強会でした。安東米店の長坂さん、素敵な学び&気付きの機会をくださってありがとうございました。