ヒトリシズカのつぶやき特論

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東北大教授の岡田益男さんの「新物質・材料の創製を目指して」を拝聴しました

2012年04月27日 | イノベーション
 東北大学名誉教授の岡田益男さんの最終講義の講演「新物質・材料の創製を目指して」を拝聴しました。岡田さんは現在、青森県八戸市にある八戸高等専門学校の校長をお務めです。

 今回の講演は、本来は昨年3月ごろに講演される予定でしたが、2011年3月11日の東日本大震災によって、東北大学の青葉山キャンパスが被災したために、今年に延期されました。この結果、仙台市では2月10日に開催されました。今回はこの最終講義の講演を受けて、東京での再度の最終講義というかたちで、JR東京駅近くの東北大学東京事務所で開催されましたた。

 岡田さんは現在、文部科学省が推進している元素戦略プロジェクトの中で「 サブナノ格子物質中における水素が誘起する新機能」プロジェクトの研究責任者をお務めです。現在は、“水素系材料”の研究開発の中核の研究者です。

 講演「新物質・材料の創製を目指して」では、これまでの岡田さんのさまざまな材料開発の研究成果をお話しされました。その中で、印象に残ったのは「研究分野を意図的に定期的に変えています」という話の狙いでした。

 新材料・新物質を発見するには、セレンディピティーが必要なので、その分野の“素人”して先入観無しに研究することが大事との趣旨です。このことを「常に分野の素人であれ」と表現されます。

 岡田さんは学生時代には希土類永久磁石を研究されました。その後、強誘電体などの電子セラミックス分野を研究され、続いて水素吸蔵合金などの研究分野に入り、新規水素化物の分野に進まれます。

 このことから岡田さんは、1968年にオランダの大手電機メーカーのフィリップス研究所の研究者が永久磁石のサマリウム・コバルト合金(SmCo5)の保持力機構を研究している際に、水素吸蔵合金のランタン・ニッケル(LaNi5)を発見したことに着目されています。これが水素吸蔵合金の発見になり、その後の水素吸蔵合金の研究開発に発展しました。



 岡田さんの研究室では、以前に学生の方が材料研究の際に「材料の原料の組成を質量%と原子%を間違える」という偶然から、新しい電子セラミックスの発見につながった経験があるそうです。

 似たような話で有名なのは、ノーベル化学賞を受賞された白川英樹筑波大学名誉教授が導電性プラスチックを発見した時の逸話です。実験材料の原料の量を間違えたことが、導電性プラスチックを発見しました。

 岡田さんがいう「常に分野の素人であれ」とは、常に新規分野に挑戦し続けるという姿勢を示したものです。手慣れた研究分野に安住せず、どんどん新規分野の開拓を続けるのは、絶え間ざる努力が必要です。なかなか奥が深い話です。