ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

「ソニー、1万人従業員削減」という新聞報道をみて、考えました

2012年04月10日 | 日記
 2012年4月9日発行の日本経済新聞紙の夕刊は「ソニーが1万人従業員削減」と報じました。以下、最近の日本の大手電機メーカーの動きについての考えた雑感です。

 主力のテレビ事業などの不振によって、4月1日にソニーの平井一夫副社長(51歳)が社長兼CEO(最高経営責任者)に就任し、ハワード・ストリンガー(Howard Stringer)会長から全権を委譲され、グループ16万8200人を率いることになりました。テレビ事業などの不振が4期連続赤字が続き、2012年3月期には2200億円の最終赤字になりました。この結果、同3月に執行役を務めた7人は役員賞与を全額返上するとのことです。

 そして、ソニーの新体制を始めるための体質強化のために、従業員を約1万人削減するという方針を打ち出しました。



 従業員の約6%を減らすということです。ソニーは以前もリストラを実施しています。

 シャープも4月1日に奥田隆司常務執行役員(58歳)が新社長に就任し、片山幹雄社長(54歳)は代表権の無い会長に就任しました。本業の液晶テレビ事業の不振によって2012年3月期に2900億円の連結最終赤字に陥る見通しです。

 パナソニックは、2012年6月の株主総会後に、大坪文雄社長(66歳)と津賀一宏専務(55歳)が新会長と新社長にそれぞれ就任すると、報道されています。就任する新執行部の役員報酬は減額するそうです。2012年3月期の連結純損益が過去最大となる7800億円の赤字に陥る見通しで、国内の製造業としても過去最大級の赤字幅になるからです。そして、2013年3月までに約4万人の従業員を削減し、35万人体制にすると伝えられています。

 ソニー、シャープ、パナソニックの大手電機メーカーは社長を交代させて心機一転を図り、さらに従業員のリストラか、給与削減(シャープは賃金の2%カットを提案中)を打ち出しました。各社の新社長はそろって、「商品重視の開発態勢を築く」といっています。売れる商品をつくるということです。

 日本の大手電機メーカーはここ数年、大幅なリストラを続け、赤字体質から脱却する経営効率化を図っています。このリストラによる問題点は、よくささやかれていることですが、リストラされた従業員たちの就職先です。日本の大手電機メーカーの先端知識を持つ従業員たちは、職を得て生活していくために、韓国や台湾、中国などの電機メーカーに就職し、日本の設計・生産技術が流出していると“うわさ”されています。

 まことしやかにいわれている“伝説”は、韓国のサムソン電子が世界に先駆けて有機ELテレビを開発でき、事業化の見通しを立てられたのは、日本のリストラ技術者からの“技術流出”が支えたといううわさです。同様に、米国アップル社の「iPhone」などの基盤技術は日本のリストラ技術者が設計を担当したという“うわさ”です。

 今回の、ソニーやパナソニック、NECなどによる従業員のリストラは、また韓国や台湾、中国などの電機メーカーに、優秀な人材を提供することになります。日本の大手電機メーは、消費者が買いたくなる魅力的な商品を開発し事業化するしか、再建策はありません。大胆にいえば、日本の各電機メーカーは研究開発では魅力的な要素技術を産み出しています。しかし、その研究開発成果を生かして、魅力的な商品を市場に送り出せない状態が続いています。ソニー、シャープ、パナソニックが販売する商品(製品)の中で、消費者が並んで購入するものがいくつあるかが問題です。

 さらに、日本の生産技術そのものが流出し始めています。シャープは3月27日に「台湾のFoxcon(フォックスコン=鴻海(ほんはい)精密工業)と資本・業務提携する」と発表しました。Foxconは、世界最大のEMS(electronics manufacturing service=電子機器の受託生産を行うサービス)最大手の企業です。

 シャープの堺工場の液晶(LCD)第10世代ラインの高稼働率を維持し、収益改善を図るためです。堺工場の第10世代ラインで生産する液晶パネルモジュールは、早ければ2012年10月をメドにFoxconグループの中核企業に生産分の50%を販売します。事業収支面では成功といえます。生産したものの販売先が決まっているからです。

 しかし、日本企業が研究開発費をつぎ込んでやっと手に入れた設計・生産技術の安売りであることも確かです。日本の問題点は、研究開発で優れた成果を上げたことに自己満足し、その研究開発費を回収できる製品(商品)開発に成功した点です。「優れた研究開発成果があれば、魅力的な商品が開発できる」という妄想に依然としてとらわれているからです。

 各社の新社長が異口同音にいう「魅力的な商品開発は、根本的にやり方を変えないと達成できない難問」です。これを理解している新社長はどなたでしょうか。結果を待ちたいと思います。