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ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

米国トムソン・ロイター社が発表した「GLOBAL INNOVATORS TOP100」を拝読しました

2013年10月25日 | イノベーション
 グローバル情報サービス企業である米国のトムソン・ロイター社(Thomson Reuters)は、2013年10月23日に技術革新に取り組む優れた企業100社を選出する「GLOBAL INNOVATORS TOP100」2013年版を発表しました。

 今年度版では、日本企業は28社が選ばれたそうです。日本企業は、かなり善戦しています。





 2011年に創設されたGLOBAL INNOVATORS TOP100は、付加価値特許データベース「Derwent World Patents Index(DWPI)」「知財調査・分析プラットフォーム」などを基に特許数や開発の成功率、グローバル性などを考慮して、トムソン・ロイター社が独自に選び出すものです。グローバル市場に影響を与える“発明”をしたり、“特許”を出した企業が選ばれていると推定されています。

 今回の2013年版では、国別には一番多かったのは米国の45社です。日本は第2位でした。第3位はフランスです。日本企業は2012年版では25社、2011年版では27社が選ばれています。3年連続で選ばれている企業は、NTT、トヨタ自動車、日立製作所、パナソニックなどです。今年度版に初めて選ばれた日本企業は、旭硝子、日本特殊陶業、日産自動車、オムロンです。

 たまたま、2013年10月24日発行の日本経済新聞紙朝刊の一面トップは見出し「半導体部門の社員半減 パナソニック、7000人に」という事業再建の記事でした。同社は赤字の半導体事業の大幅縮小を始めることで、これまでの事業再生の構造改革は峠を越すとみられています。

 パナソニックは同社の半導体事業のインドネシアやマレーシアなどの海外工場を中心に人員削減を実施し、半導体事業の赤字体質を改善するそうです。日本国内の半導体事業の主力工場である富山県砺波市、魚津市、新潟県妙高市などでは既に早期退職や配置転換を実施済みだそうです。

 さらに10月24日発行の日本経済新聞紙朝刊の中面には、パナソニックは病院などで、薬などを運ぶ搬送ロボット「ホスピー」を開発したとの記事も載っています。

 パナソニックは新製品開発、新規事業の活性化に力を入れているようです。パナソニックが事業再建に務めている姿勢も、トムソン・ロイター社の「GLOBAL INNOVATORS TOP100」に反映しているのか気になりました。

 

産総研レアメタルシンポジウムを拝聴し、都市鉱山リサイクル技術を学びました

2013年10月22日 | イノベーション
 2013年10月21日午後に東京都千代田区で開催された「第8回 産総研レアメタルシンポジウム」を拝聴しました。産総研とは、産業技術総合研究所の略称で、日本を代表する大規模な公的研究機関です。

 “レアメタル”とは資源面で産出することが少なかったり、入手することが困難な元素群のことです。最近は、ハイテク製品のキー部品として利用されているものです。

 このレアメタル元素群は、産出国が中国や南アフリカ、ロシアなどの国々に偏在しているものが多く、2006年ごろに一時高騰して、日本の電機メーカーや自動車メーカーなどを苦しめたものです。

 例えば、パソコンのハード・ディスク・ドライブ(HDD)や電気自動車などの高性能モーターに利用されている高性能磁石には、ネオジムやディスプロシウムというレアメタル元素が利用されています。特に、高温用途で使う高性能磁石には、ディスプロシウムが不可欠ですが、このディスプロシウムは中国が主な産出国で、輸出制限を一時、実施することがありました。

 このため、日本ではリサイクル法などを整備し、自動車や代表的な家電製品や小型家電製品の廃製品を回収し、元素・材料をリサイクルする態勢を進めています。こうした自動車や家電製品などの廃製品を収集・回収したものを“都市鉱山”と呼んで、ここから必要な元素を回収するリサイクル化を進めています。

 今回の「第8回 産総研レアメタルシンポジウム」の講演を拝聴し、現在の“都市鉱山”と呼ばれる廃製品からは、鉄やアルミニウム、銅、プラスチックなどの主要な構成元素・材料は回収できるが、日本が求めているレアメタル元素群は、“都市鉱山”廃製品の中から、そのままでは回収できないことを学びました。

 お目当てのレアメタルを含む部品・部材を回収するには、“中間処理”と呼ばれる工程を加えてから、通常のリサイクル回収選鉱技術に回す必要があるということを学びました。通常のリサイクル回収選鉱技術だけを適用すると、多くのレアメタル元素群は銅精錬時のスラグと呼ばれる不純物側に混在してしまい、そのまま捨てられるからです。

 例えば、パソコンの廃製品からはハード・ディスク・ドライブをまず取り出し、その中から高性能磁石を取り出す中間処理が必要です。また、携帯電話機の廃製品からは、タンタルコンデンサーを取り出す中間処理が必要です。こうした中間処理を実現するには、携帯電話機などの小型家電製品ごとに、レアメタルを主に含む部品の製品形状・対象部品などの製品データベースを各メーカーの全年式ごとにつくる“廃製品データベースプログラム”を非公開型で作成することを、産総研は提案しています。

 データベースを非公開型にする理由は、各電機メーカーの独自技術内容を非公開にするためです。ある。レアメタルの元素を回収するリサイクル業者は、この廃製品データベースプログラムを利用して、目指すレアメタルをピンポイントで回収することで、リサイクルを実現するという提案です。

 こうした研究開発を加速される目的で、産業技術総合研究所は「戦略的都市鉱山研究拠点(SURE)」を今年8月から準備し、来月11月から“都市鉱山”型リサイクル技術を社会に普及させる活動を始めるそうです。



 その普及活動の一環として、SURF FORUMという企業との連携組織を設け、廃製品データベースプログラムや製品エコシステムプログラムなどの構築する計画を進めているそうです。

川崎重工業が開発している臨床用の細胞自動培養システムのニュースについて考えました

2013年10月14日 | イノベーション
 今年9月末に、経済産業省傘下の独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と川崎重工業は「川崎重工業が開発した、臨床用の細胞自動培養システムを実際に稼働させて、運用実績データを得る」という再生・細胞医療分野での先行的な布石を意味する発表がありました。

 新エネルギー・産業技術総合開発機構と川崎重工業は、タイの商務省との共同国際プロジェクトによって、タイのチュラロンコン大学医学部内に臨床用の細胞自動培養システム「R-CPX」を設置し、10月から稼働させるという専門家向けの発表がありました。



 かなり戦略的・戦術的に先行する布石だけに、再生・細胞医療分野の関係者などにしか、その重要性が伝わらなかった様子です。

 今年6月にiPS細胞(人工多能性幹細胞)を利用する再生医療が、加齢黄斑変性という目の難病から始まることになったというニュースが大々的に報道され、再生医療が注目されました。

 iPS細胞による初の臨床研究計画を審議する厚生労働省の審査委員会は、理化学研究所から申請された加齢黄斑変性のiPS細胞による初の臨床研究での治療にOKを出したとのニュースです。加齢黄斑変性に続き、パーキンソン病や脊髄(せきずい)損傷などのさまざまな病気について臨床応用を目指す研究が進む契機を迎えたと報道されました。

 今回の理化学研究所が実施するから加齢黄斑変性のiPS細胞による初の臨床研究に用いられるiPS細胞は、高度な専門家が対象のiPS細胞を手培養によって作成します。始まったばかりのiPS細胞による臨床研究の段階であるために、当然の対応・段階です。

 このiPS細胞による臨床研究が成功し、目の難病の加齢黄斑変性の治療に活路が見いだされると、次は多くの対象患者にどうやって治療を実施するかという“普遍化”に進みます。法的な整備やその治療費の負担をどう少なくするかという次の課題を解決する段階に入ります。

 再生・細胞医療の臨床応用は、当該患者から採取した対象細胞を培養した後に、当該患者の患部に移植します。現在は、iPS細胞を利用しない研究段階にある場合でも、ほとんど実施例ないために、対象細胞の培養は、専門施設での熟練技術者による“手培養”に留まっています。

 “手培養”による操作を行う細胞培養施設(CPC)は「施設・設備の初期投資だけで数億円かかる」との試算です。培養する細胞に、他の細胞や細菌、ウイルスなどが入らないように、高度なクリーンルームにする必要があるからです。さらに、手作業による細胞培養のために、熟練技術者が必要になり、「労務費を含めたランニングコストは1年当たり数1000万円かかる見通し」と、専門家は試算します。

 手作業による職人的熟練作業を置き換える“工業化”が当然、次に検討されています。“クリーン”ロボットなどによる細胞培養です。工業化による品質管理が可能になれば、細胞培養のコストも下がり、再生・細胞医療の臨床応用(さらにその将来は治療)が“一般的”になります(まだかなり先の話です)。

 今回、「川重が開発した臨床用の細胞自動培養システム「R-CPX」をタイのチュラロンコン大学医学部内に設置し、「10月から実証実験を始める」との発表はその始まりの第一歩のようなものです。再生・細胞医療分野での先行的な布石です。

 日本の大手企業数社は、有力大学などと共同で、臨床用の細胞自動培養システムの研究・開発を進めています。その臨床応用には、まだ課題が山積しています。しかし、この難問を一つひとつクリアできれば、将来は臨床用の細胞自動培養システム装置は、日本が得意とする医療機器製品に成長する可能性があります。

 今回、川崎重工業が発表した臨床用の細胞自動培養システム「R-CPX」は、装置内部の中央に2台の垂直多関節型“クリーン”ロボットがレール上を動く仕組みです。このロボットが細胞培養の容器を培養室から取り出し、培養容器の古くなった培地(培養液)を交換するなどの操作を担当します。2台のロボットは、培養容器のキャップを開ける操作などに協調動作をします。また、培養された細胞の品質をCCDカメラなどで確認する機能を備えています。

 2台の“クリーン”ロボットは「システム内を除染する過酸化水素蒸気(H2O2)によって腐食しないように、アームカバーやシールに高耐食性の材料を採用するなどの工夫を凝らしてある」そうです。

 将来、再生・細胞医療の臨床応用の“産業化”が急速に進み始めた時には、欧米などの競合企業との製品化競争が一気に加速します。今回の動きによって日本の医療機器の事業態勢を加速させる布石になれば、朗報になります。

最先端IT・エレクトロニクス総合展「CEATEC JAPAN 2013」に行った話の続きです

2013年10月08日 | イノベーション
 2013年10月1日から5日までの5日間、千葉市美浜区の幕張メッセで開催された、最先端IT・エレクトロニクス総合展「CEATEC JAPAN 2013」に行った話の続きです。

 エレクトロニクス総合展の主役である日本の大手電気メーカー各社は、4K液晶ディスプレィーなどの最先端技術の成果を盛り込んだ新製品や開発途上品を展示し、技術力や事業企画力などの実績と実力を示していました。

 シャープやパナソニック、ソニー、東芝、三菱電機、NECなどの大手電気メーカー各社の展示ブースには、大勢の来場者が集まり、日本企業の製品化や研究開発の達成度を見極めたいという姿勢が感じられました。

 以下、立ち寄った展示ブースをつまみ食い的に見た感想です。

 パナソニックは展示ブースの目立つ部分に、4K画質のネット動画を表示する液晶ディスプレィーを展示し、迫力ある動画によって入場者を集めていました。



 ソニーは4K画質の有機ELディスプレィーの開発途上品を展示し、やはり入場者を多数集めています。



 先日、公募増資と第三者割当増資に伴う新株発行によって約1365億円を調達して再建を進めているシャープは、液晶テレビの開発途上品の展示として、4K画質の70型液晶ディスプレィーを展示しています。



 46型画面を3枚並べたマルチディスプレィーや、8.8型と4.9型を組み合わせたマルチディスプレィーを展示しています。3枚の46型画面液晶パネルを並べ、重ねてもフレームが目立たないために、画像のつながりが滑らかな感じのマルチディスプレィーの展示品です。



 液晶ディスプレィーの画面が並べられたマルチディスプレィーは迫力があり、多くの来場者が足を止めて、見入っています。フレームをほぼ見えなくした液晶ディスプレィー「フレームレスディスプレイ」は、「IGZO技術、新規パネル駆動技術、高信頼性技術、光学設計技術を駆使して実現した」(シャープの説明員)だそうです。

 シャープの展示ブースでは、IT(情報技術)技術を駆使してリモート診断によって基礎的な診療や医療の助言などを受けられる、遠隔医療用機器「ヘルスケアサポートチェア」を展示しました。





 「ヘルスケアサポートチェア」は、企業の診療所や自宅などでの利用を想定したもので、通信技術を利用して、遠隔地の医師と連絡をとるものです。イスに座って、自分の心拍数や血圧、体重、血管の健康度などを計測すると、これらのデータが自動的に無線通信でサーバーに送られ、さらに遠隔地の病院に送信される仕組みです。遠隔地の医師は、こうしたデータを見て、利用者とビデオ会議などで話をしながら、健康相談を行います。

 再建中のシャープは、液晶テレビ事業以外で高収益を上げる新規事業を育てようと考えています。この「ヘルスケアサポートチェア」も、そうした新製品開発の一環のようです。

先週開催された最先端IT・エレクトロニクス総合展「CEATEC JAPAN 2013」に行った話です

2013年10月07日 | イノベーション
 2013年10月1日から5日までの5日間、千葉市美浜区の幕張メッセで開催された、最先端IT・エレクトロニクス総合展「CEATEC JAPAN 2013」を拝見しました。

 エレクトロニクス技術の総合展示会でありながら、トヨタ自動車と日産自動車の出展に加えて、今年から本田技研工業(ホンダ)とマツダの自動車メーカーの2社も加わって、合計4社出展したことが話題になりました。

 今回の自動車メーカーの出展は、自動車メーカーが実用化を目指している自動運転自動車の研究開発が話題になるなど、最近の自動車は電子制御による運転支援や安全技術の搭載が増え、エレクトロニクス技術による支援・制御が不可欠な存在になっていることを反映した動きと考えられています。

 トヨタ自動車の出展ブースでは、2人乗りの3輪電気自動車のコンセプトカー「i-ROAD」が国内で初披露され、注目を集めました。





 車両をわざと斜めに展示し、コーナリング中を示しています。

 コンセプトカー「i-ROAD」は、2013年2013年3月5日から17日まで、スイスのジュネーブ市で開催された「ジュネーブモーターショー」で初公開されています。

 「i-ROAD」は、前に2輪、後ろは1輪の電気自動車です。前後に一人づつ、合計2人が座るそうです。駐車しやすさを考慮して大型バイクと同等の全幅が850ミリメートルと小さく、全長2350ミリメートルとコンパクトです。前側の両輪には、それぞれ出力2キロワットのインホイール・モーターを内蔵しており、曲がるなどの操舵は後輪が担います。電池はリチウムイオン2次電池を搭載しています。

 旋回時の安定性を高めるために、操舵角や速度に応じて前輪をリンク機構で傾ける機構を採用しています。2輪車(オートバイ)の場合、旋回時には乗員が体重移動によって車体を内側に傾けることで、遠心力がかかっても車両が外側に倒れないように操作していますが、「i-ROAD」ではステアリングを切る操作をすると、モーターによって自動的に傾ける機構が働きます。

 トヨタ自動車は隣接する「走行デモ&試乗エリア」ゾーンで、立ち乗り型の移動支援ロボット「Winglet」(ウィングレット)最新モデルの公開試乗会も開催していました。



 「走行デモ&試乗エリア」ゾーンでは、ホンダも電動一輪車「U3-X」の最新モデルの走行性能を公開していました。2足歩行ロボット「ASIMO」の制御技術を応用し、360度全方位に移動できることをみせていました。



 「走行デモ&試乗エリア」ゾーンでは、日産自動車が開発中の自動運転車を走らせるデモンストレーションを国内で初めて披露しました(初公開は米国カリフォルニア州で開いた「日産360」と呼ぶイベントでした)。



 会場内に車線や標識を設置してコースを作り、その中を自動運転車と人が運転する車両の2台を同時に走らせていました。



 電気自動車「リーフ」を改造した自動運転車は、単眼カメラのうちの4個は、車両上方から俯瞰(ふかん)した映像を見せる「アラウンドビューモニター」に使い、もう1個をフロントミラーの前に配置しているそうです。レーザーレーダーは車両の前方に2個、後ろに1個、左右のリアフェンダー付近に1個ずつの合計5個配置しているそうです。自動運転車は単眼カメラ5個、レーザーレーダー5個からの画像や相対距離情報を解析しながら、走行範囲内の地図データを利用して、現在位置を正確に推定しながら走行するそうです。

 日本の自動車メーカーは、近未来に都市部の中心部での移動手段となる小型の電気自動車や、オフィスなどの施設内で個人が移動する一人乗り移動車などの製品化を精力的に進めています。