ダーリン三浦の愛の花園

音楽や映画など徒然なるままに書いてゆきます。

明日のためにその224-婚前特急

2016年03月15日 | 邦画
コミカルだが、しっかり作られた一本

昔から思うが、恋愛とは女性優位ではないだろうか。
多数の男と付き合いながら、本命を探している女性。
昔風に言えば「ミツグくん」「アッシーくん」などと呼ばれ、女性に重宝がられた男性達がいた。しかし、彼らは所詮女性にとって「便利屋」でしかなく、いつの間にか女性は「本命くん」を見つけ結ばれてしまう。
恋愛には、苦い経験ばかりしてきた私にとって、他人事ではない。
本日紹介する映画は、この女性が、男性を審査するような内容の映画「婚前特急」である。
ストーリーを紹介しておこう。

池下チエは五人の男性と恋愛している奔放な女性。
しかし、親友の結婚を見て、その幸福の片鱗に触れる。
そこで彼女は、五人の男性から一人に絞ろうと思い、それぞれの男性を自分自身で判別しようとする。
その中で、一番体裁も悪く、収入も乏しいタクミと言う男を最初に振ろうとする。
彼に別れ話を切り出したチエだったが、彼から逆に「自分たちは付き合ってないし、体だけの関係だけど」と予想外の返事をもらう。
これに逆上したチエは、タクミを自分に徹底的に惚れさせ、それから彼を振るようにすると決意する。
その作戦を実行しようとしたチエだったが......

高飛車で傲慢な女性を演じたのは「吉高由利子」朝の連続テレビ小説「花子とアン」で有名になった女優だ。
彼女の演技は、ちょっとぎこちなく見え、好演とまでいかなかったが、主人公をまあまあ演じていた。
それとは逆に、タクミを演じた「浜野謙太」が良かった。
だらしなく、お調子者で、体裁の悪い男性を好演していた。
どことなく、親近感を覚えるその演技はナチュラルでこの映画の中では一番気に入った存在だった。
特筆すべきことは、この映画の監督の存在だろう。
監督は「前田弘二」若干三十八歳の男性監督だ。
映画全般を通じて、作りが上手い。最初何気なく観ていた私も、徐々に映画の作りの上手さに、本編にのめりこんでしまった。
映画の作りの上手さとは、解説できる物と出来ないものがある。
この映画は後者の方で、どこがどう上手いというより、映画から醸しだされる雰囲気が良い。
或るシーンなど観て「この監督作りが上手いなぁ」と思える映画を、いくつとなく私は観てきた。そのタイプの作りの上手い監督だった。
ラスト果たしてチエは、最良の男性を見つけ結婚する。
その彼女のお腹は、ぷっくりと膨らんでいる。まさに「ハッピーエンド」である。
しかし、カメラは、二人が乗った列車を後ろから捉え、しばらく列車を後ろから見送るようにしてエンドロールが始まる。
一般的に、このように主たる被写体が、スクリーンの奥へ進んでゆく撮り方は、その後の主人公達への不安定な要素を提示していると言われる。
このあたりの撮り方も、監督の上手さの一つだろう。
私は年甲斐もなく、この映画を観て「運命の異性はいるのだなぁ」の納得してしまった。
後、付け加えるならば、エンドロールで演奏された楽曲がとても良かった。
かなり変わった楽曲だったが、私は久しぶりに、聴く価値のある「日本」のロックに出会えた気がする。
コミカルな内容、作りの一本だが、その映画の作りは見事。
前田弘二。以前紹介した「内田けんじ」や「中野量太」などと並び、期待の新人監督と言えよう。
是非、興味を持たれた方は観ることをお勧めする。

2010年日本製作、カラー、107分、2011年日本公開、監督:前田弘二


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