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第4章:中東の戦争と平和(9)
095 ポピュリズムが育てる独裁者 (3/4)
庶民全てがそのような独裁者を冷ややかに見ているかというと実は必ずしもそうではない。それどころか拍手喝さいで独裁者の登場を迎えることも少なくない。アラブの人々は腐敗した王制国家に倦み、或いは第二次世界大戦後も打ち続く戦乱に嫌気がさしていた。そのような旧体制(アンシャンレジューム)を打破しようとする若手軍人たちの「青年将校団」に世直しを期待したのである。「青年将校団」を名乗る組織はエジプトだけではない。シリアやリビアにも生まれている。
貧しいが故に正規の高等教育を受けられなかった優秀な若者が軍隊組織の中で最新の知識と軍事技術を身に着け、同僚や部下を惹きつけるリーダーシップも身に着けた。彼らは大衆の人気を得る手練手管に長じている。もちろん独裁者は登場した時から独裁者だった訳ではなく、トップに上り詰めた後、大衆を煽りつつ知らず知らずのうちに権力を一身に集める。
そして独裁者は一度手にした権力は絶対に手放そうとはしない。彼を助けるのが取り巻きの側近たちである。側近は独裁者の陰で甘い汁を吸うことを覚える。ボスが居てこその特権であるから彼らはボスがいつまでもボスであり続けるように画策する。その反面彼らは独裁者の地位が儚いことを熟知しているだけに自ら独裁者になるだけの勇気はない。ともかくボスにできるだけ地位を保ってもらいたいのである。
(続く)
荒葉 一也
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