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第4章:中東の戦争と平和(5)
091 平穏な市民生活に忍び寄る長期独裁政権の影 (2/3)
しかしそのような平穏な生活が続くと、奇妙なことに民衆の心の中に不満が少しづつ鬱積する。物足らなくなるだけではない。生活の底に流れる経済格差に気が付き、変革を求めるのである。そのような微妙な空気を抜け目なく捉えて登場するのが独裁者である。独裁者は最初から圧政者だった訳ではなく、むしろ最初は国民的な人気者として登場する。このような現象は中東に限ったことではなく、東欧、アジア、南米、アフリカなど多くの開発途上国で見られることであるが、中東特有の現象は独裁政権が第4次中東戦争後に集中的に出現し、その後30年或いは40年間という極めて長い間権力を保持し、その一部は今も権力を掌握し続けていることである。
中東の独裁者たちの在任期間を歴史順に並べると、リビアのカダフィ大佐(1969年~2011年)をはじめとして、シリアのアサド大統領父子(1971年~現在)、イエメン・サーレハ大統領(1978年~2012年)、イラク・フセイン大統領(1979年~2003年)、エジプト・ムバラク大統領(1981年~2011年)、チュニジアのベン・アリ大統領(1987年~2011年)、そしてスーダンのバシル大統領(1989年~2019年)となる。短い独裁者で24年、長い場合はアサド父子で半世紀経た今も独裁者の椅子に座り続けている。
彼らが最初に権力の座に就いたのは1980年前後が多い。また権力の座を滑り落ちた年が2011年、12年に集中していることに気付かれるであろう。これはいうまでもなく2010年末に始まった「アラブの春」の影響である。
(続く)
荒葉 一也
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