*HP「中東と石油」に本シリーズ(1)埋蔵量~(5)原油価格が一括掲載されていますのでご覧ください。
BPが毎年恒例の「BP Statistical Review of World Energy 2009」を発表した。以下は同レポートの中から石油に関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。
石油篇(1):世界の石油の埋蔵量
2008年末の世界の石油確認可採埋蔵量(以下単に「埋蔵量」と言う)は1兆2,580億バレル(*)であり、可採年数(R/P)は42年である。可採年数とは埋蔵量を同年の生産量で割った数値であるが、これは現在の生産水準をあと何年続けられるかを示している。
(*)バレルは石油で使われる単位で、1バレル=159リットル
埋蔵量を地域別に見ると(上図。なお拡大図は「地域別石油埋蔵量(2008年末)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-2-91-Proved-Oil-Reserve.gif)、中東地域が全世界の埋蔵量の60%を占めている。これに次ぐのがヨーロッパ・ユーラシア地域の11%、アフリカ、中南米地域各10%、北米6%であり、最も少ないのがアジア・大洋州地域の3%である。このように世界の石油埋蔵量は圧倒的に中東地域が多い。
次に国別に見ると、世界で最も石油埋蔵量が多いのはサウジアラビアの2,641億バレルであり、これは世界全体の21%を占めている。第二位はイラン(1,376億バレル、11%)、第三位イラク(1,150億バレル、9%)と続き、以下ベスト・テンにはクウェイト、ベネズエラ、UAE、ロシア、リビア、カザフスタン、ナイジェリアの各国が挙げられる。昨年に比べベネズエラとUAEの順位が逆転しているが、その他は昨年と同じである。これら10カ国の世界シェアの合計は81%に達する。このように石油は一部の国に偏在しているのである。(詳細は表「国別可採埋蔵量ベスト20(2008年末)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/1-D-2-91%20Proved%20Oil%20Reserve%20by%20Countries.htm参照)
因みにOPECを構成する13カ国(*)の合計埋蔵量は9,558億バレル、世界全体の76%を占めている。次回石油篇(2)「生産量」で触れるが、OPECの生産量シェアは45%であり、埋蔵量シェアよりかなり低い。このためごく最近までは石油市場におけるOPECの発言力は強く無かった。しかし世界の埋蔵量の4分の3を有するOPEC諸国の存在感は決して小さくない。
(*)イラン、イラク、クウェイト、カタール、サウジアラビア、UAE、アルジェリア、アンゴラ、リビア、ナイジェリア、エクアドル、ベネズエラ及びインドネシア(なお2008年中にアンゴラ及びエクアドルが新規に加盟し、インドネシアは脱退した。)
可採年数についてオイルショック直後の1980年以降の推移を見ると、1980年に29年であったものが80年代末には40年以上に伸びている。しかしこの可採年数はその後20年近く殆ど変化がなく2008年末は42年となっている(詳細は図「埋蔵量・生産量と可採年数の推移(1980~2008年) http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-2-92-History-of-Reserve.gif参照」)。
1980年代に可採年数が伸びたのは、オイルショックの値上がりにより石油の消費(=生産)が減退する一方、石油の経済価値が高まった結果全世界で石油資源の探査活動が活発化し、埋蔵量が増加したためである。逆に1990年代は80年代に油価の低迷により探査活動も低迷、その反面景気の回復により石油の消費が着実に増加したことにより可採年数は毎年少しずつ短くなった。2000年以降も石油の消費(=生産量)は毎年増加しているが、増加分を補う追加埋蔵量があったため、可採年数は横這い状態で推移している。
(石油篇第1回完)
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