石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

OPEC+(プラス)の協調減産を分析する(2)

2024-06-17 | OPECの動向

2.来年の生産レベル(今回決定事項)と今年5月の各国生産量(OPEC月報)の比較(表1-D-2-37参照)

6月2日のOPECプラス閣僚会合(OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting, 略称ONOMM)では減産幅を縮小することが合意された。同時に来年のOPECプラスの生産量を3,973万B/Dとし、各国毎の望ましい生産水準(Required Production Level for 2025)も公表された[1]。(注、OPEC加盟国のうちイラン、リビア、ベネズエラは協調減産の対象外、アンゴラは昨年OPEC脱退)

 

3,973万B/Dの国別内訳を見ると、最も多いのはサウジアラビアの1,048万B/Dで、ロシアの995万B/Dがこれに続いており、両国だけで全体の49%を占めている。3位以下の主な国とその生産量は、イラク(4,431千B/D)、UAE(3,519千B/D)、クウェイト(2,676千B/D)、メキシコ(1,753千B/D)、カザフスタン(1,628千B/D)、ナイジェリア(1,500千B/D)、アルジェリア(1,007千B/D)などである。

 

6月11日にはOPEC事務局から月例レポートが刊行された。レポートではOPECプラスの全対象国、即ちOPEC12カ国及び非OPEC10カ国の3,4及び5月まで3カ月の月間生産量が公表されている。因みにこのような全OPECプラスの国別生産量が公表されるようなったのは5月の月例レポートからである。

 

これによれば今年5月のOPEC・非OPEC22カ国の合計生産量は4,108万B/Dであり、内訳はOPEC(12カ国)2,663万B/D、非OPEC(10カ国)1,445万B/Dである。主な国別ではロシア918万B/D、サウジアラビア9百万B/D、イラク420万B/D、イラン323万B/D、UAE294万B/D、クウェイト242万B/D、メキシコ163万B/Dなどである。なお協調減産に加わっていないイラン(323万B/D)、リビア(117万B/D)及びベネズエラ(82万B/D)を除くと、合計生産量は3,585万B/Dであり、内訳はOPEC 9カ国が2,141万B/D、非OPEC10カ国が1,445万B/Dとなる。

 

5月の実生産量と来年の生産量(上記)を比較すると、OPECプラス19カ国全体で今後2025年12月までに生産量が387万B/D増える計算になる。OPECプラスから見ればそれだけ減産を緩和すると言うことである。国別の減産緩和量は、サウジアラビアの148万B/D(900万B/D→1,048万B/D)を筆頭に、ロシア77万B/D(918万B/D→995万B/D)、UAE 58万B/D(294万B/D→352万B/D)、クウェイト26万B/D(242万B/D→268万B/D)、イラク24万B/D(420万B/D→443万B/D)などが比較的大きな減産緩和量を確保している。特にUAEがクウェイト、イラクなど他の湾岸産油国に比べ優遇されていることが特徴的である。

 

(続く)

 

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

     前田 高行    〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

[1] OPECプレスリリース:

https://www.opec.org/opec_web/en/press_room/7337.htm

https://www.opec.org/opec_web/static_files_project/media/downloads/Production%20table%20-%2037th%20ONOMM.pdf 

 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 見果てぬ平和 ― 中東の戦後... | トップ | 中東と石油のニュース(6月17日) »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

OPECの動向」カテゴリの最新記事