石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

(ニュース解説)OPEC総会で加盟国拡大を非公式協議(第1回)

2006-06-19 | OPECの動向

第1回:ベネズエラがアンゴラなど3カ国のOPEC加盟を提案

  去る6月1日にベネズエラのカラカスで開催された第141回臨時総会は現行生産枠28百万B/Dの維持を決定し平穏に終わった。しかしこの総会で主催国のベネズエラはOPECの拡大を提案している。これに対しOPECスポークスマンは、拡大提案は総会の正式議題ではないと否定したため提案は非公式協議事項とされ、総会後のプレスリリースでも一切言及されなかった。

  総会前にベネズエラのラミレス石油相は同国の国営放送で、アンゴラ、スーダン及びエクアドルの3カ国がOPEC加盟を望んでいる、と語った。またチャベス大統領は、ボリビアにOPECオブザーバーの地位を与えるよう画策したと言われる(注1)。  

 OPECは1960年にイラン、イラク、クウェート、サウジアラビア及びベネズエラの5カ国で結成された。その後8カ国が参加したが、90年代前半にエクアドル及びガボンが脱退した結果、現在のメンバーは創設メンバー5カ国にインドネシア、ナイジェリア、アルジェリア、カタール、リビア、UAEの6カ国を加えた11カ国である。

  当初OPECは欧米石油企業(いわゆるメジャー)に握られていた石油の支配権を産油国に取り戻すことを主眼としていた。しかし資源の国有化が進展し、OPEC加盟国の生産量が全世界の生産量の過半に達した1970年代前半(第一次オイルショック時代)には、OPECは石油価格の決定権を握る強力なカルテル機構となり、1980年前半までの高価格時代を演出したのである。

  しかし1980年後半から1990年代にかけて逆に石油価格は長期にわたり10ドル(バレル当り)台に低迷した。当初OPEC最大の生産国であるサウジアラビアは市場への供給を自らカットする、いわゆるスィング・プロデューサとして価格の下落を阻止しようとしたが、世界の原油生産に占めるOPECの生産シェアが30%前後にまで下落していたため、OPECだけで価格が操作できる状況ではなかった。

  このためOPECは、メキシコ、ノルウェーなど非OPECの有力産油国にOPEC加盟を呼びかけ、ソ連崩壊後はロシアにも参加を勧誘したほどである。OPECは石油価格の決定権を取り戻すために組織のてこ入れを図ろうとしたのである。結局メキシコ、ノルウェー、ロシアを含めこれまでのところOPECへの新たな加盟国は無い。しかしこの事実からもわかる通りOPECは決して閉鎖的な組織ではないのである。ただしサウジアラビアをはじめとするOPEC主流派は、石油を政治・外交的な武器に利用することには反対である。OPECは政治をタブーとしているのである。

  しかしベネズエラの今回の提案には明らかに政治的な意図、端的に言えばOPECを反米闘争の手段にしようとする意図がうかがわれる。

  次回はアンゴラ、スーダン及びエクアドル(同国はかつてOPECのメンバーであった)がOPEC加盟候補とされた理由について考えてみたい。

 注1 6/2 Arab News ‘OPEC officials hold enlargement talks’ (AFP電)参照

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