石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

OPEC+(プラス)の協調減産を分析する(3)

2024-06-18 | OPECの動向

3.原油価格の推移(2022年夏~2024年現在) (図2-D-2-02参照)

OPECプラスの協調減産の見直しに最も大きな影響力を与えるのは石油価格の動向である。米国EIAの月別統計で見ると、2022年1月に87ドル/バレルであったBrent原油価格は3月に100ドルを突破、6月には123ドルまで高騰したが、その後急速に下落、9月には90ドルと年初の水準に逆戻りした。

 

OPECプラス最大の産油国であるサウジアラビアは財政が均衡する原油価格は85.8ドルと言われ価格の下落に敏感である。またウクライナとの戦争で戦費調達に頭を悩ませるロシアも原油価格の下落を見逃すことはできなかった。

 

そこで両国はOPECプラスの全加盟国に呼びかけ11月以降2百万B/Dの協調減産を行うこととした。しかしその後も原油価格は下げ止まらず同年12月にはついに81ドルまで下がった。減収分を増産で補おうとする一部加盟国の議論を抑え、ロシアとサウジアラビアは更なる減産による価格アップを狙った。その結果が2023年5月からの9カ国による166万B/D自主減産である。これにより原油価格は幾分上向き始めた。そこでサウジアラビアは更なる追加措置として100万B/D自主減産を率先して実施、他国にも呼びかけ、2022年6月、8カ国による220万B/Dの追加減産を推進した。

 

3度にわたる合計586万B/Dの減産により今年4月に原油価格は90ドル/バレルまで戻ったものの現在は一進一退を繰り返している状況である。このことはOPECプラスの価格支配力が低下していることを意味している。かつて1970年代の二度にわたる石油ショックの頃、OPECは世界のエネルギー市場を意のままに操っていたが、現代ではOPECの原油供給シェアが低下しただけでなく、原油から天然ガス、さらには自然エネルギーなどエネルギー市場を取り巻く環境が変化し、OPECプラスの神通力も衰えた。このことが次項に述べる通りOPECプラス自身の結束力を弱めているように見受けられる。

 

(続く)

 

 

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見果てぬ平和 ― 中東の戦後75年(169)

2024-06-18 | 中東諸国の動向

(英語版)

(アラビア語版)

 

(目次)

 

第7章:「アラブの春」―はかない夢のひと時(2

 

169 もう沢山!長期独裁に倦んだ大衆(2/4)

MENAで最初に独裁者の地位を得たのはリビアのカダフィであった。カダフィのことは第4章でもふれたが、彼は1969年にクーデタで当時の国王を倒して最高指導者となった。若干27歳であった。彼はそれから42年間もその地位を保ち、2011年に内戦で69歳の人生を終えた。

 

彼の後に現れたのがシリアのハフィーズ・アサドである。シーア派の一派とされるシリア北部のアラウィー派の少数部族出身のアサドは空軍将校を経てバース党内で頭角を現した。1971年に大統領に選出されたハフィーズは長期政権体制を確立し次男のバシャール・アサドを後継者に指名して2000年に心臓まひで死亡した。バシャール・アサドは現在も同国大統領の座にある。親子で通算するとすでに半世紀以上経過している。

 

このほか1970年代に一国のトップに駆け上り、その後長期間にわたり独裁を続けた人物にイエメンの故サーレハ大統領とイラクの故フセイン大統領がいる。サーレハは陸軍総司令官を経て36歳の時の1978年に統一前の北イエメン大統領に就任、南北統一後も大統領の座を守り2011年のアラブの春で失脚した。彼は下野した後も反政府のフーシ派と連合勢力を結成、首都サナアを占拠して復活を狙っていたが、2017年にフーシ派によって暗殺された。2011年までの大統領在任期間は33年に達する。そしてイラクのサダム・フセインはバース党幹部から1979年にイラク大統領に就任した。その後、イラン・イラク戦争さらに湾岸戦争をしぶとく生き延びたが、2003年のイラク戦争で失脚、裁判によって処刑された。彼の大統領在任期間は24年間であった。

 

(続く)

 

 

荒葉 一也

E-mail: Arehakazuya1@gmail.com

 

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