石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

石油と中東のニュース(3月16日)

2020-03-16 | 今日のニュース

(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil
(コロナウィルス関連ニュース)

・イスラエル、テロ対策技術の応用を検討、スマホの位置情報とメガデータで感染者追跡

・イランの死者、600人を超える

・サウジ、公務員に16日間の在宅命令。レストラン、ショッピングセンター閉鎖

・ドバイ、超高層タワー展望台観覧中止等

(石油関連ニュース)

・サウジアラムコ決算発表、利益世界一の882億ドル。 *

*参考「2019年上半期アラムコと国際石油企業の業績比較


(中東関連ニュース)

・10年目に入った終わりの見えないシリア内戦。死者38万人、うち一般市民12万人

・イスラエル、野党ガンツ党首に組閣命令。新型コロナウィルスで議会は閉会

・サウジ汚職摘発委員会、捜査結果を公表。219名を起訴

・オマーン、来年1月からスーパーのポリ袋禁止

 

 

 

 

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サウジアラビアを危うくする二人の王子:皇太子と石油相 (中)

2020-03-16 | 今日のニュース

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0498TwoSaudiPrinces.pdf 
 

(英語版)
(アラビア語版)

Part 2. アブドルアジズ石油相の賭け

 3月5日、オーストリアのウィーンでOPEC臨時総会が開催された。前年12月の総会及びそれに続くロシアなど非OPEC産油国、いわゆるOPEC+(プラス)との会合で、それまでの日量120万バレル(B/D)の減産量を今年3月までさらに50万B/D上乗せし170万B/Dとすることが決定されている。因みにサウジアラビアは40万B/Dを自主減産すると表明、合計で世界の原油生産量の2%に相当する210万B/Dが市場から消え、OPEC+は石油価格のさらなる上昇を目論んだのである 。

 ところが米国のシェールオイル企業はOPEC+の減産効果を帳消しする増産姿勢を強め(「米国の石油生産量の推移(2017年~2019年12月」参照)、世界の石油市況は供給過剰の状況を脱しなかった。そこに降って湧いたのが新型コロナウィルス問題である。中国は湖北省全域を封鎖したが、その後も全世界に蔓延し世界の経済がマヒしている。供給過剰と需要減退が重なり原油価格は急落した。

 このためサウジアラビアはOPEC+による減産強化が避けられないと判断、従来の210万B/Dに加え、さらに150万B/Dの追加減産を提案した。OPEC加盟国が100万B/D、ロシアなど非OPEC国が50万B/Dを分担するという案である。5日のOPEC総会ではサウジアラビアの提案通り6月末まで150万B/Dの追加減産を実施することを公式発表した 。奇妙なことには同じ日に減産を年末までとする第二のプレスリリースが発表されたのである 。OPEC総会後にプレスリリースが二度も発表されるのはかつてないことでありOPEC事務局の混乱の様相がうかがえる。一連の決定にはOPECの盟主サウジアラビアの事実上の権力者ムハンマド皇太子の意思が反映されていることは間違いなく、アブドルアジズ石油相が皇太子に振り回され、他のOPEC諸国がサウジアラビアに振り回されたと推測される。

 OPECが発表した減産量はロシアなど非OPECも対象としており、したがって総会翌日ロシアを含めたOPEC+会合で最終決定されるべきものである。しかしこれまでの210万B/D減産の結果、米国がシェールオイルを増産、結局米国が漁夫の利を得ていることをロシアは苦々しく思っていた。従って150万B/Dの追加減産には当初から反対であった。

 サウジアラビアがOPEC+の事前会合で追加減産のプランを持ち出したとき、ロシアのノバク石油相はプーチン大統領と打ち合わせる必要があるとしてモスクワに一時帰国した。一方、サウジアラビアはノバク石油相の最終確認を得ないまま5日のOPEC総会で今年末までのOPEC+の追加減産を一方的に決定し、公表したのである。ノバク石油相がウィーンに戻ったのは6日のOPEC+会合当日の朝であった。因みに1か月前サルマン国王とプーチン大統領は電話会談で石油市場の安定が必要であると確認している 。アブドルアジズ石油相はOPEC+の会合でロシアがサウジ案を受け入れるものと思い込み、プーチン大統領の本心を読めなかったようである。いずれにしても彼の強引な総会運営と見通しの甘さがOPEC+協調減産決裂の原因であろう。

 OPEC+体制の崩壊に加え、先の見通せない新型コロナウィルス問題が重なり原油価格は30ドル台まで暴落した。中国をはじめ世界の景気回復の兆しが見えない中では原油価格も当分回復の見込みがなさそうである。そのような中でサウジアラビアは顧客向け価格の引き下げ 並びにアラムコの生産能力を1,300万B/Dに引き上げる方針 を打ち出した。サウジアラビアは価格維持のためのスウィング・プロデューサーの役割を捨て、無謀ともいえる180度の政策転換に乗り出した。これらはすべてムハンマド皇太子の意向であろう。今回の一連の動きを見る限りアブドルアジズ石油相は皇太子の意のままに動く単なる操り人形にしか映らない。

 ともあれサウジアラビアの石油政策は低価格と大量放出で米国のシェール業者を市場から退場させる方針であることがはっきりした。しかしこれによってサウジアラビアが受ける傷も浅くない。これは米国とサウジアラビア双方にとって体力を賭けたチキンレースである。過酷なレースの中でアブドルアジズ王子は右往左往するばかりである。

(参考レポート)「指導力が問われるサウジ新石油相アブドルアジズ王子」(2019年10月)

以上


本件に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
荒葉一也
Arehakazuya1@gmail.com 

 

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