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ダロウェイ夫人 (映画)~「めぐりあう時間たち」に寄せて~

2008年03月23日 | 映画
映画「ダロウェイ夫人

英文学史といえば必修のヴァージニア・ウルフ女史。彼女の同名小説を映画化した作品。

まずは、主人公と周囲の人々の過去と未来が交差する。現在は年配になった主人公ダロウェイ夫人。回想で若い頃のクラリッサ(のちのダロウェイ)。現在のダロウェイは、国会議員の妻、そして1女の母として、平凡だが落ち着いた生活を送っている。若い頃の彼女はピーターと恋仲だが、ダロウェイと出会い結婚をする。果たしてこれで良かったのかと思う話を軸に、戦争から帰って来て精神を病んだ若者の話があるところでつながる。

なんだか似たつくりの映画を思い出しませんか?J・ムーアやM・ストリープの出た「めぐりあう時間たち」は、まさに「ダロウェイ夫人」を巡る話でしたよね。N・キッドマンはウルフの役でしたし。
3つの話がつながってくる、主人公の心象風景の語りで展開していく、生と死、まさに「ダロウェイ夫人」の手法そのものを取り入れて書かれた作品だったのですね。当時は単にウルフとその作品ををモチーフにした映画という観点でしか観ていませんでした。
だから映画って面白い。

それから、当時の町並みや衣装をきちんと再現している点が美しく、素晴らしいです。TVシリーズの「名探偵ポワロ」も当時の服を探して直して再現しているといいますが、それに匹敵するほど素敵です。
ストーリー的には内面描写なので、派手な起承転結があるわけではありません。「鳩の翼」「眺めのいい部屋」などの英文学映画がお好きな方にはオススメです。

監督: マルレーン・ゴリス 出演: ヴァネッサ・レッドグレーヴ 、 ナターシャ・マケルホーン 、 ルパート・グレイヴス
1998、イギリス/オランダ