2日、日本高血圧学会がバルサルタンの臨床試験の一つVART(責任者、小室一成東大医学系教授ら、実施大学、千葉大)について第三者による検証結果を中間報告した。それによると、
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日本高血圧学会の記者会見資料 - データはこちら [1]
第三者委員とオブザーバーは
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第三者委員に森下竜一(大阪大学医学系教授、日本高血圧学会理事、写し1、写し2)、オブザーバーに堀内正嗣(愛媛大学医学系教授、同学会理事長)の名が。過去にはフライデーで高血圧学会の幹部に対する報道があった(その1、その2)。同学会はフライデーの報道に対し抗議した。皆さんはどう思いますか?
高血圧学会はVARTはデータがロックされ変更できなくなった以降に元ノバルティスファーマ社社員の統計解析に関する一般的なアドバイスを受けたと説明。データロック以降の統計解析を第三者に依頼したという。その結果、平均血圧値の疑義については「血圧値は基本的に論文通り一致しており、特段の疑念はなかった。」とした。
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表1 Jikei Heart Study[2] , Kyoto Heart Study[3], VART[4] の平均血圧値と標準偏差の比較 - [5]
同じ色の枠どうしが同じ
京大の由井芳樹がランセット誌で指摘したのが上の疑義だが、高血圧学会の第三者委員会によると疑義はないという。偶然これだけ一致するのか?
第三者委員会はプライマリーエンドポイント(主要評価項目)についても特に問題なくバルサルタンにとって有利に改ざんした痕跡は認められなかったと判断した。
高血圧学会の調査では、元ノ社社員が関与した以降に不正の疑いがあり、その部分のみ調査して不正はないと判断したようだ。他の者の不正の可能性に関しては考えていないのか?
皆さんはどう思いますか?
これは私の憶測に過ぎないが、高血圧学会がカルテとの照合をする前に不正なしと公表したのは、フライデーの報道等で疑惑の目がVARTだけでなく同学会にも向けられており、はやくそれを払拭したかったという思惑があったのではないか。今後カルテとの照合を千葉大と協力して行うとしているが、カルテの保存期間が過ぎているものもあり、「カルテの保存期間が過ぎていて検証できない。」という形で幕引きを狙っているのかもしれない。
京都はさすがにそれでは済まされないと思うが、慈恵やSMARTなどそういう形でうやむやにすることは可能性として考えられるだろう。表向きには"不正と証明できないので不正なし"という形になるかもしれないが、少なくとも私はグレーの薬・バルサルタンを自分や家族に使いたいと思わない。人に使われる薬なのにグレーのままエビデンスとなる論文を有効にしておくことは許されない。
皆さんはどう思いますか?無論、私は本当に不正がないならそれでいいと思う。
参考
[1]日本高血圧学会の記者会見資料 2013.7.2
[2]Mochizuki S, Dahlöf B, Shimizu M, et al for the Jikei Heart Study group. Valsartan in a Japanese population with hypertension and other cardiovascular disease (Jikei Heart Study): a randomised, open-label, blinded endpoint morbidity-mortality study. Lancet 2007; 369: 1431-1439
[3] Sawada T, Yamada H, Dahlöf B, Matsubara H for the KYOTO HEART Study Group. Effects of valsartan on morbidity and mortality in uncontrolled hypertensive patients with high cardiovascular risks: KYOTO HEART Study. Eur Heart J 2009; 30: 2461-2469.
[4]Narumi H, Takano H, Shindo S, et alon behalf of the VART Investigators. Effects of valsartan and amlodipine on cardiorenal protection in Japanese hypertensive patients: the Valsartan Amlodipine Randomized Trial. Hypertens Res 2011; 34: 62-69.
[5]Yoshiki Yui:"Concerns about the Jikei Heart Study" The Lancet, Volume 379, Issue 9824, Page e48, 14 April 2012
doi:10.1016/S0140-6736(12)60599-6
[6]毎日新聞:"バルサルタン:高血圧学会、千葉大論文に「不正なし」" 2013.7.2
記事、写し。
『バルサルタン:高血圧学会、千葉大論文に「不正なし」
毎日新聞 2013年07月02日 20時14分
降圧剤バルサルタンに血圧を下げる以外の効果もあるとした臨床試験疑惑で、日本高血圧学会は2日、千葉大の研究チームの論文に「現段階では不正なデータ操作は見つかっていない」とする中間報告結果を公表した。同学会誌が2011年にこの論文を掲載したため、外部の有識者を交えた委員会でデータを再検証した。今後、学会とは別に調査している千葉大と連携し、カルテの照合などの追加調査を行うという。
今年に入り、販売元「ノバルティスファーマ」社員の試験への不透明な関与が明らかになったため、学会側が調査を進めてきた。
論文の著者らは調査委に対し、患者データを点検して操作できないようにロック(固定)した後に、社員から統計解析に関するアドバイスを受けたと説明。また、調査委が業者に委託してロックされた後のデータを再解析したところ、論文の数字と一致したという。
千葉大の試験は、バルサルタンを使った患者は別の降圧剤を使った患者と比べ、血圧の下がり方は同じでも心臓や腎臓を保護する効果が高いとした。【八田浩輔】』