世界変動展望

私の日々思うことを書いたブログです。

東京慈恵会医大、Jikei Heart Studyの捏造を認める!

2013-07-30 19:15:29 | 社会

上昌広のツイート(2013.7.30) - 日付は都合により著者が削除

バルサルタン臨床試験の不正疑惑で東京慈恵会医大が実施したJikei Heart Study(代表 望月正武 武蔵野大学メディカルセンター 院長)でも改ざんなどの不正があったことを同大が認めたようです。報道その2)もありました。

京都府立医大の調査でKyoto Heart Studyが発表した狭心症のリスクを他の薬より下げるとする効果が改ざんによるものだったと判明したので、同様の効果を発表したJikeiも不正が濃厚だと思っていました。状況からいって、Kyoto とJikeiに共通する何者かが不正をしたという疑惑が深まったと思います。

研究機関・研究者と企業との癒着。京都府立医大だけでなく慈恵会医大まで誘惑に負けて不正に走ってしまったというケースは以前に紹介したように最悪のケースに向かうと思います。両研究に関与したノ社の元社員が単独で不正を行ったという可能性もあります。

捏造や改ざんがあったということははっきりしたので、これ以降は特捜など強制捜査権を持つ機関が徹底的に調査すべきです。研究者や企業は企業等の利益のために嘘の成果をでっちあげ期待した効果が出ないかもしれない薬を作って世界中に販売し患者の健康を危険にさらしただけでなく詐欺で国民の貴重な税金や保険料から巨額の薬代を詐取しました。これは極めて悪質な行為であり、明らかに犯罪と処断しなければならないことです。そうでなければ社会正義が保てません。

この事件は一刻もはやく刑事告発すべきです。大学が告発しないなら誰かが告発するかも?刑事告発は誰でもできるわけですし。

なお、慈恵医大の中間報告書関連)が公開されました。

関連
[1]世界変動展望 著者:"慈恵医大のバルサルタン不正疑惑も調査へ!ノバルティスも調査!" 世界変動展望 2013.4.25
[2]世界変動展望 著者:"Jikei Heart Study,Kyoto Heart Study,VART の平均血圧値等の疑義とカンデサルタンについて" 世界変動展望 2013.5.27


アクセスランキングトップ10入り!

2013-07-27 00:00:39 | Weblog

おかげさまでgooのアクセスランキングでトップ10入りしました。過去最高のユニークアクセス数とページビュー数でした。この日は人気記事ランキングでもトップ10入りしました。

実は過去にもっと上の人気記事順位を獲得したこともあります。

読者の皆様のおかげで高順位を獲得することができました。どうもありがとうございます。


京都府立医大、バルサルタン臨床試験にデータ操作があったと中間発表!

2013-07-11 21:18:58 | 社会

『降圧剤:データ操作 京都府立医大認める 学長ら会見

毎日新聞 2013年07月11日 21時38分(最終更新 07月11日 21時40分)
 ◇ノバルティスファーマ元社員がデータ解析

 降圧剤バルサルタンに血圧を下げる以外の効果もあるとした臨床試験疑惑で、京都府立医大(吉川敏一学長)は11日、同大の研究チームによる臨床試験について「医師が入力した患者データと、解析に使ったデータが一致せず、バルサルタンに効果が出るよう解析データが操作されていた」として、論文不正があったと発表した。販売元の製薬会社ノバルティスファーマ(東京)の元社員がデータを解析していたことも確認した。製薬社員が関与した論文が、薬の売れ行きに有利になる形で操作されており、日本の医薬研究への信頼を根底から損なわせる重大事態に発展した。今後はノ社の不正への関与が焦点となる。事態を重く見た厚生労働省は、文部科学省と連携して再発防止策を協議する方針。

 府立医大は、学長らの給与を自主返納する。吉川学長は「深くおわびし、再発防止に努めたい。申し訳ございません」と謝罪した。関係者の処分も検討する。

 論文の責任者は松原弘明元教授(56)。研究チームは、2000年のバルサルタン発売後、府立医大病院とその関連病院で臨床試験を実施した。高血圧患者約3000人を、バルサルタン服用の約1500人と別の降圧剤服用の約1500人とに分けて、経過を比較。「バルサルタンには他の降圧剤に比べて、脳卒中を45%、狭心症を49%減らす効果がある」などと結論付け、09年に欧州心臓病学会誌で発表した。

 この日の発表によると、府立医大は、患者約3000人分のデータのうち、患者のカルテ調査ができた223人分を調べた。その結果、解析に使ったデータには、カルテに記載のない脳卒中や狭心症などの症例があったり、カルテに記載のある患者の症例がなかったりする例が計34件存在した。これらはいずれも同種の降圧剤に比べてバルサルタンの効果を強調する方向で操作されていた。

 バルサルタンを服用したグループと、服用しなかったグループで、試験終了時に血圧が一致していた点も「不自然だ」と指摘されてきた。この点については、問題はなかったとした。

 大学の聞き取りに対し、松原元教授は「意図的なデータ操作はしていない」と説明したという。元教授の代理人弁護士は「現時点では詳細についてコメントを差し控える」と話した。


ノ社は5月、社員の試験への関与を認めたが、「社員による意図的なデータの改ざんはなかった」と説明。だが、社内調査結果によると、ノ社の社員が患者のデータを自宅のコンピューターにコピーして解析し、「例示」と称して研究チームに結果を提供していた。

 バルサルタンの臨床試験は、府立医、慈恵医、滋賀医、千葉、名古屋の5大学が実施した。昨年、名古屋を除く4大学の論文について、専門家が医学誌上で科学的な疑問点があると指摘していた。日本循環器学会が府立医大に調査を要請し、大学が3月に検証チームを設置していた。

 ノ社は、2月の定例記者会見で「医師主導で行われた試験であり、会社は関与していない」と説明していた。3月以降、毎日新聞の報道で、社員が統計解析などを手伝っていたことや、ノ社が府立医大側に1億円余の奨学寄付金を提供していたことが判明したが、論文上はこうした事実が伏せられていた。批判の高まりを受け、ノ社は5月、役員の減給を発表した。【河内敏康、八田浩輔】

 ノバルティスファーマの話 大学や患者に心配をかけて申し訳ない。ただし、大学の報告だけでは、恣意(しい)的なデータ操作があったとは確認できない。解析に使う患者データは、試験の第三者委員会の判定に従って変更されるのが一般的で、まず委員会の記録を確認すべきだ。
 ◇ことば【バルサルタン】

 ノバルティスファーマが商品名「ディオバン」で、2000年に国内販売を始めた高血圧治療薬。12年度の国内売上額は約1083億円。世界約100カ国でも承認されている。京都府立医大と東京慈恵会医大が各3000人を対象にした大規模臨床試験では、血圧を下げるだけでなく、脳卒中や狭心症のリスクも小さくする効果があり、同種の別の薬より優れているとの結論が出た。

写し1写し2

降圧剤不正:誰が操作「特定できず」 大学側後ろ向き答弁

毎日新聞 2013年07月11日 21時22分

 日本で最も売れている医療用医薬品である降圧剤「バルサルタン」を巡る臨床試験疑惑は11日、京都府立医大が初めて不正を認めたことで新たな局面に入った。データ操作は、誰が何のために行ったのか。販売元のノバルティスファーマ(東京)の社員(既に退職)はどう関与したのか。疑惑は深まるばかりだ。

 「今回の事態を招いたことを極めて重く受け止め、心からおわびします。関与した者の厳正な処分を行いたい」。この日、京都市内の京都府立医大で行われた記者会見で、吉川敏一学長は深々と頭を下げて陳謝した。

 報告書では、統計解析を担当した元社員や、研究を主導した松原弘明元教授(56)を含む複数の人物がデータ操作に関わることが可能だったとする一方、調査委員長の伏木信次副学長は「意図的な操作かどうかも含めて特定することはできなかった」と、後ろ向きな答弁に終始した。

 大学の問題点として「研究室には統計解析に通じた人材がおらず、製薬企業従業員の力を期待した点に問題があった」と指摘した。再発防止策として、統計の専門家を学内に配置するほか、製薬企業からの研究費の寄付や研究者の講演料の受け取り状況についてもホームページで公開するとした。薬を日常的に利用する患者などからの問い合わせに応じるため、院内に専用相談窓口を設ける。

 厚生労働省研究開発振興課は「調査結果は、捏造(ねつぞう)や改ざんを強く示唆していると理解している。極めて遺憾な事態だ。具体的な責任は誰にあるのか、大学には引き続き調査を求める」(一瀬篤課長)とし、文部科学省と再発防止対策を協議する方針を示した。

 医学系118学会が加盟する日本医学会の利益相反委員長、曽根三郎・徳島大名誉教授は「客観的に見たら研究不正だ。操作された結果を元に販売促進に利用されてきた事実は重い。企業の責任は大きく、大学への調査への協力を含めて説明責任を果たすべきだ」と指摘する。【八田浩輔、五十嵐和大】

 

『治療薬論文でデータ操作…京都府立医科大が発表

京都府立医科大は11日、高血圧治療薬「ディオバン」の臨床研究をめぐる松原弘明元教授らの論文について、「データが操作され、論文の結論に誤りがあった可能性が高い」とする調査結果を発表した。

 脳卒中や狭心症を抑える効果が実際よりも高くなるようにデータが操作されていた。

 松原元教授らの論文は2008年~12年に国内外の学会誌などに発表された。3000人の患者を対象にディオバンを使うと、従来の薬と血圧の下がり方は同じでも、脳卒中や狭心症などのリスクは45%も減るという内容だった。

 しかし、専門家から「データが不自然だ」などと指摘され、論文は相次いで撤回された。府立医大は3月に外部有識者を含む調査チームをつくり、データの検証や関係者からの聞き取りなどを進めていた。

(2013年7月11日21時03分  読売新聞)』

『薬効のデータに“操作の疑い”
7月11日 21時27分

大手製薬会社「ノバルティスファーマ」の高血圧の薬の効果を調べた複数の大学の臨床研究に、この会社の社員が関与し、薬の効果に疑問が投げかけられていた問題で、京都府立医科大学の調査委員会は、データに何らかの操作があった疑いがあるとしたうえで、ほかの薬より脳卒中や狭心症を減らせるとした臨床研究の論文の結論には誤りがあった可能性が高いとする調査結果を発表しました。

この問題は、ノバルティスファーマが販売する高血圧の治療薬「ディオバン」の効果を調べた京都府立医科大学などの臨床研究にこの会社の当時の社員が関与し、データの解析などを担当していたもので、「他の薬より脳卒中などのリスクを下げる効果が高い」などとした論文が発表され、薬の販売促進に使われていました。
これについて京都府立医科大学の調査委員会は、11日夜、患者のカルテに書かれた情報と論文作成に使われたとされる解析データに食い違いがあり、データに何らかの操作があった疑いがあるとしたうえで、ほかの薬より脳卒中や狭心症を減らせるとした結論には誤りがあった可能性が高いとする調査結果を発表しました。
ノバルティスファーマは、この臨床研究の結果を、薬の販売促進などに使っていて、ディオバンは、年間1000億円以上を売り上げる商品になっていました。
これについて厚生労働省の治験推進室は「京都府立医科大学の発表は、臨床研究のデータを操作したことが強く示唆される内容で、このようなことが起きたのは非常に遺憾だ。今後については、京都府立医科大学以外に同様の臨床研究が行われた4つの大学の調査結果などを踏まえたうえで対応を検討したい」と話しています。
京都府立医科大学の調査結果について、ノバルティスファーマは「大学の報告からは、臨床研究の際の外部の委員会の判定記録との照合結果が示されていないので、恣意的なデータの操作があったとは確認できない。大学関係者の方々や患者様に対して、ご心配をおかけしていますことを申し訳なく思っています。今回、京都府立医科大学の報告においても、ディオバンの降圧効果に問題がないことが確認されました」とするコメントを発表しました。

NHKニュース

ノバルティスファーマーの見解毎日新聞その1毎日新聞その2朝日新聞

"薬効のデータに“操作の疑い" NHKニュース 2013.7.12
"バルサルタン:臨床試験疑惑 元社員、大阪市大調査も拒否 データ解析担当" 毎日新聞 2013.7.12
"バルサルタン:臨床試験疑惑 現場医師ら憤慨「患者の信頼失う」" 毎日新聞 2013.7.12
"Kyoto Heart Studyのデータ操作について" 日本循環器学会 2013.7.12
"京都府立医大「調査に限界」と釈明 高血圧薬論文めぐり" 朝日新聞 2013.7.12
"降圧剤不正:厚労省、調査状況把握へ…検討委員会を設置" 毎日新聞 2013.7.12
"薬効データ改竄 医療現場への重大な背信行為" 読売新聞 社説 2013.7.13
"薬の効果偽装―教訓導く徹底調査を" 朝日新聞 社説 2013.7.13
"降圧剤試験不正 第三者機関で解明せよ" 毎日新聞 社説 2013.7.13
"バルサルタン:臨床試験疑惑 山田・京都府知事、捜査機関が解明を" 毎日新聞 2013.7.13
"ディオバン服用の知事、告訴含めた対応を要請" 読売新聞 2013.7.13
"Diovan Data Was Fabricated, Say Japanese Health Minister And University Officials" Fobes 2013.7.12
"京都府立医科大のKYOTO HEARTの会見に出席しました" 日経バイオテクONLINE Vol.1907 2013.7.12
"臨床研究論文 データ操作の疑い"  NHK NEWSweb 2013.7.12
"厚労大臣トップに再発防止策を検討へ" NHKニュース 2013.7.13
"「関与の元社員と連絡取れず」" NHKニュース 2013.7.13
"薬効データ改竄 信頼回復と再発防止急げ薬効データ改竄 信頼回復と再発防止急げ" 日本産経新聞 社説 2013.7.14
"発症判定の議事録存在せず 高血圧薬論文巡り京都府医大" 朝日新聞 2013.7.13
"臨床データ操作 企業関与に厳格なルールを" 琉球新報 社説 2013.7.14
"降圧剤:厚生労働相、販売元の製薬会社は調査協力を" 毎日新聞 2013.7.16
"治療薬データ改ざん、元社員の聴取必要…厚労相" 読売新聞 2013.7.16
"降圧剤問題:製薬医学会が緊急提言" 毎日新聞 2013.7.18
"クスリの闇/「日本一売れた薬」の効能はこうしてでっち上げられた
   ◆     ノバルティスファーマ、降圧剤「バルサルタン」、ドラポ " フライデー p98 、2013.7.19 発売 目次
"「Kyoto Heart Study」臨床研究に係る調査報告書" 京都府立医科大学 2013.7.11、ウェブページ
"Tampered Data Cast Shadow on Drug Trial" Science Vol. 341 no. 6143 p. 223 、 19 July 2013 、 DOI: 10.1126/science.341.6143.223

--

やっぱりデータ操作がありましたね。今後どうなっていくのでしょうか。

朝日の記事では『研究では販売元のノバルティス日本法人の元社員が統計解析を担当していたことが判明している。調査委はこの元社員に話を聴こうとノバルティスに協力を求めたが、すでに退職しているとして断られたという。

 伏木副学長は「データ不正はあったと考えている」としながらも、だれがやったのか、故意にやったのか調べようがないとし、「大学の調査では限界があるので、この報告を最後にする」と語った。

とある。これに対し一言。文科省のガイドラインに

被告発者が自己の説明によって、不正行為であるとの疑いを覆すことができないときは、不正行為と認定される。

とある。京都府立医大は文科省のガイドラインを守れ!被疑者が説明を拒否したなら、自己の説明で疑いを覆せないのだから不正行為を認定するのがルールだ。指針はきちんと示されている。研究機関にとって規則等は紙切れに過ぎない。現在の研究不正調査制度の問題の一つだ。

京都府立医大の判断は自分たちのリスクを避けるためにわざとクロという判断を避けたもので、非常に不当。30件以上もバルサルタンの効果があるようにデータを間違えるわけがない。同大のような判断をしたら、被疑者が自白しないかぎり不正は認められない。

確かに伏木(京都府立医大副学長)がいうように現在の調査制度では不十分だ。しかし、同大がリスク回避のためにガイドライン等を守らず、わざと不正の認定を避けていることも問題だ。研究機関の不正に対するこのような消極的態度も研究不正調査制度の問題の一つだ。

必ず改善を要する(関連)。


ブログほぼ休止、コメント投稿、ツイッター、フェイスブック完全休止のお知らせ

2013-07-06 17:50:06 | Weblog

著者が多忙となり、今後しばらくの間はブログで簡単な内容を少しだけ公開することにします。コメントは受理しますが返答しません。ツイッターとフェイスブックは完全休止します(ツイッターの相互フォローを除く)。今後の著者の状況の変化により従来どおりの活動を再開します。

本ブログをご愛読いただいている方々には大変申し訳ありません。従来どおりの活動が再開できるように著者も現状の変化に努めます。

しばらくの間ブログで簡単な記事を少しだけ公表するだけの活動になることを御了承ください。

世界変動展望 著者

2013.7.6


LPSA及び石橋の対局放棄に対する青野照市の怒り

2013-07-04 19:43:52 | 囲碁・将棋

6月7日の総会で、私は理事職に復帰した。
最初の仕事は、スポンサーを非難し対局を拒否して
棋戦の存続を危うくするという信じられない行為の、後始末から始まると思う。

取材の時間も取れなくなるため、
本連載はいったんここで休載させていただきます。
長期間にわたりご愛読いただいた読者に感謝します。

( 将棋世界2013年8月号 青野照市九段 「将棋時評」最終回 より )

--

やはり青野は怒っている。当然だ。


官邸主導で国際標準の論文不正対策を作るのか?

2013-07-04 01:26:20 | 社会

ツイートはこちら (2013.7.3)
(注) ツイートの日付は都合により著者が削除

残念ながら官邸主導で国際標準の論文不正対策を作るかどうかは現時点では不明。仮にこれが事実だとしてどういう対策を作るのか?今までのように研究機関に丸投げする、規定の遵守も研究機関任せでは全くだめだ。現在の研究不正調査制度の問題点を認識し、客観的、積極的に調査でき、強制調査もできる警察的な第三者機関の設立、実効的な規定策定、論文数水増しによる業績評価の問題改善などを実現してほしい。


日本高血圧学会、第三者検証の中間報告でVARTは不正なしと公表!

2013-07-02 21:20:10 | 社会

2日、日本高血圧学会がバルサルタンの臨床試験の一つVART(責任者、小室一成東大医学系教授ら、実施大学、千葉大)について第三者による検証結果を中間報告した。それによると、

日本高血圧学会の記者会見資料 - データはこちら [1]

第三者委員とオブザーバーは

日本高血圧学会の記者会見資料 - データはこちら [1]

第三者委員に森下竜一(大阪大学医学系教授、日本高血圧学会理事写し1写し2)、オブザーバーに堀内正嗣(愛媛大学医学系教授、同学会理事長)の名が。過去にはフライデーで高血圧学会の幹部に対する報道があった(その1その2)。同学会はフライデーの報道に対し抗議した。皆さんはどう思いますか?

高血圧学会はVARTはデータがロックされ変更できなくなった以降に元ノバルティスファーマ社社員の統計解析に関する一般的なアドバイスを受けたと説明。データロック以降の統計解析を第三者に依頼したという。その結果、平均血圧値の疑義については「血圧値は基本的に論文通り一致しており、特段の疑念はなかった。」とした。

表1 Jikei Heart Study[2] , Kyoto Heart Study[3], VART[4] の平均血圧値と標準偏差の比較 - [5]
同じ色の枠どうしが同じ

京大の由井芳樹がランセット誌で指摘したのが上の疑義だが、高血圧学会の第三者委員会によると疑義はないという。偶然これだけ一致するのか?

第三者委員会はプライマリーエンドポイント(主要評価項目)についても特に問題なくバルサルタンにとって有利に改ざんした痕跡は認められなかったと判断した。

高血圧学会の調査では、元ノ社社員が関与した以降に不正の疑いがあり、その部分のみ調査して不正はないと判断したようだ。他の者の不正の可能性に関しては考えていないのか?

皆さんはどう思いますか?

これは私の憶測に過ぎないが、高血圧学会がカルテとの照合をする前に不正なしと公表したのは、フライデーの報道等で疑惑の目がVARTだけでなく同学会にも向けられており、はやくそれを払拭したかったという思惑があったのではないか。今後カルテとの照合を千葉大と協力して行うとしているが、カルテの保存期間が過ぎているものもあり、「カルテの保存期間が過ぎていて検証できない。」という形で幕引きを狙っているのかもしれない。

京都はさすがにそれでは済まされないと思うが、慈恵やSMARTなどそういう形でうやむやにすることは可能性として考えられるだろう。表向きには"不正と証明できないので不正なし"という形になるかもしれないが、少なくとも私はグレーの薬・バルサルタンを自分や家族に使いたいと思わない。人に使われる薬なのにグレーのままエビデンスとなる論文を有効にしておくことは許されない。

皆さんはどう思いますか?無論、私は本当に不正がないならそれでいいと思う。

参考
[1]日本高血圧学会の記者会見資料 2013.7.2
[2]Mochizuki S, Dahlöf B, Shimizu M, et al for the Jikei Heart Study group. Valsartan in a Japanese population with hypertension and other cardiovascular disease (Jikei Heart Study): a randomised, open-label, blinded endpoint morbidity-mortality study. Lancet 2007; 369: 1431-1439

[3] Sawada T, Yamada H, Dahlöf B, Matsubara H for the KYOTO HEART Study Group. Effects of valsartan on morbidity and mortality in uncontrolled hypertensive patients with high cardiovascular risks: KYOTO HEART Study. Eur Heart J 2009; 30: 2461-2469.

[4]Narumi H, Takano H, Shindo S, et alon behalf of the VART Investigators. Effects of valsartan and amlodipine on cardiorenal protection in Japanese hypertensive patients: the Valsartan Amlodipine Randomized Trial. Hypertens Res 2011; 34: 62-69.

[5]Yoshiki Yui:"Concerns about the Jikei Heart Study" The Lancet, Volume 379, Issue 9824, Page e48, 14 April 2012 
doi:10.1016/S0140-6736(12)60599-6

[6]毎日新聞:"バルサルタン:高血圧学会、千葉大論文に「不正なし」" 2013.7.2

記事写し

『バルサルタン:高血圧学会、千葉大論文に「不正なし」

毎日新聞 2013年07月02日 20時14分

 降圧剤バルサルタンに血圧を下げる以外の効果もあるとした臨床試験疑惑で、日本高血圧学会は2日、千葉大の研究チームの論文に「現段階では不正なデータ操作は見つかっていない」とする中間報告結果を公表した。同学会誌が2011年にこの論文を掲載したため、外部の有識者を交えた委員会でデータを再検証した。今後、学会とは別に調査している千葉大と連携し、カルテの照合などの追加調査を行うという。

 今年に入り、販売元「ノバルティスファーマ」社員の試験への不透明な関与が明らかになったため、学会側が調査を進めてきた。

 論文の著者らは調査委に対し、患者データを点検して操作できないようにロック(固定)した後に、社員から統計解析に関するアドバイスを受けたと説明。また、調査委が業者に委託してロックされた後のデータを再解析したところ、論文の数字と一致したという。

 千葉大の試験は、バルサルタンを使った患者は別の降圧剤を使った患者と比べ、血圧の下がり方は同じでも心臓や腎臓を保護する効果が高いとした。【八田浩輔】』


設置すべきは米国ORIのような機関ではなく、どんな分野も客観的、積極的、強制的に調査できる第三者機関

2013-07-01 00:27:37 | 社会

誤解している人が多いが米国のORI(研究公正局)は学術分野の警察ではない。私も山崎茂明(愛知淑徳大学教授)の著書を読むまで誤解していた[1]。米国ORIは生命科学系の不正調査を行っているが、公正に関する啓発活動が中心である。不正の調査対象も「公衆衛生庁によって助成された研究プロジェクトに関係する不正行為の告発に対応し、研究の公正さを監視する責任がある。故に、他省庁や民間の研究プロジェクトは、研究公正局の不正調査対象にならない。[2]」

だから、もしバルサルタン事件が米国で起きても米国ORIの調査対象にはならないかもしれない。上昌広(東大医科学研究所特任教授)は

『論文捏造は、過失による医療事故と同列に扱うべきではない。

「故意犯」は、本来、強制調査権を有する司法が取り扱うべきだ。ところが、医学研究は高度に専門的だ。警察には敷居が高い。

論文捏造を放置していると、医学界は信頼を失う。実は、世界中が、この問題に悩み、試行錯誤を続けている。例えば、米国では、1992年に研究公正局(ORI)という公的機関が創設され、調査、および処分を行っている。

このような組織は、日本でも必要ではなかろうか。透明性を担保し、社会が信頼してくれるなら、設立母体は官民を問わない。[3]』

と述べている。他にも論文不正調査機関について議論するサイトがあり、そこでの議論(その1その2)を見ると、"ORI=学術界の警察"のような感じで述べられている。要するにこれらの主張は研究不正に関して強制調査権を持ち、客観的かつ積極的に調査を行う第三者調査機関を設置すべきというものだが、そうなら日本に作るべきは米国ORIのような機関ではなく、まさに学術界の警察機関(以下、学術警察)だ。そして調査対象は公的資金が使われた生命科学系研究に限らず、バルサルタン事件のような臨床研究や井上明久事件のような材料科学の不正事件など研究分野は何でもきちんと調査や処分の対象とならなければならない。

そうでないと意味がない。

もともと日本で学術警察を作るべきだと主張されるようになったのは、一言でいえば現行制度が不十分なものだからだ。現行は被疑者の所属機関が調査するだけの制度だが、井上明久事件のように大学や学会が隠蔽してしまうと改善しようがない。他にも恣意的調査裁定は珍しくない。バルサルタン事件は任意調査に限界があるいう指摘もあり、研究という調査対象に対する高度の専門性や任意では関係者が必ずしも調査に協力的でないことなどから強制調査機関の必要性が主張されている。

私も現状では学術警察の設置に賛成する。しかし、学術警察を作っても文科省役人等の天下り先になるだけで実効性がないのではないかと指摘する人もいる。確かにその危険はある。学術警察を作っても役人の天下り先になるだけでは、いったい何のための機関がわからない。絶対にそのようなことがあってはならない。そうならないための対策もあわせて考え、作る必要がある。

学術警察を作らずに現状の研究不正問題を改善する方法があるか考えてみたが、今のところいいアイデアは浮かばない。上のような問題は学術警察を作らないと改善できないのではないか。引き続き対策は考えるが、よいアイデアがあればコメントを投稿していただきたい。

ある方と話して研究不正の再発防止は動機まで踏み込んで調べる必要があり、それらを積み重ねてケーススタディとすることが不可欠だと提案された。以前も動機に関しては紹介したことがある。再掲になるかもしれないが、近いうちに動機が推測できる研究不正事例を紹介し、事例分析する。

参考
[1]山崎茂明:"科学者の発表倫理-不正のない論文発表を考える " 丸善出版 2013.6.30
[2]山崎茂明:"連載 論文発表の倫理(11) 研究公正局の新たな展開" あいみっくVol.32 No.1 2011.2
[3]上昌広:"バルサルタン問題解明のための障壁 「故意犯」に如何に対応するか" Yahoo Japan ニュース 2013.6.29

(本来の発表日 2013.7.1)

本記事の引用サイト
[1]武市正人(大学評価・学位授与機構教授、前日本学術会議副会長)のブログで紹介されました。 写し。 2013.8.26
[2]尾崎美和子(アジアメディカルセンター代表)が"日本の科学を考える"で紹介しました。写し。 2013.8.6頃

※本記事は"日本の科学を考える"というサイトの研究不正に関する議論を一部参考にしていますが、大部分は自分の調査に基づく独自見解です。同サイトの議論のまとめではありません。