現在のバルサルタン事件でノバルティスファーマ社と京都府立医大が癒着し、M元京都府立医大教授らがノ社に有利になるように研究成果を改ざんして発表したと疑われている。ノ社は奨学奨励金1億440万円を京都府立医大に交付し、ノ社社員が統計解析者として臨床研究に参加したことが確認されている。フライデーの記事だと医師の座談会でノ社から数万円の謝礼が出たり、記事が出たときに原稿料が出たという記載がある[2]。同大とノ社の間で癒着があったのか、そのために不正が起きたのかどうか、具体的にどのような癒着があったのかは今は不明。バルサルタン臨床研究の改ざんについては同大が現在調査中。
さらに、バルサルタン臨床研究の不正疑義が慈恵医大、滋賀医大、千葉大でも浮上し、千葉大以外では調査されている[3][4]。他にも名古屋大学でバルサルタンの臨床研究が行われたが今のところ疑義は生じておらず、名大は調査の予定はないという[4]。
しかし、京都府立医大、慈恵医大、滋賀医大、千葉大、名大のバルサルタン臨床研究ではいずれも同じノ社社員が参加していたことが判明した[1][3][5][6]。どの研究も利益相反とノ社社員がどのような役割を果したのかが注視されている。
この事件は京都府立医大にはノ社から金の流れがあったことが確認されているが、その他の大学に対してノ社が金銭面等で厚遇したのかはわかっていない。おそらく毎日新聞などの記者たちが現在その方面も調べているだろう。例えば情報開示請求で金銭を交付した団体にノ社が含まれるかどうか、ノ社が含まれているとしてどれくらいの額かなど調べればある程度わかるだろう。
最近ノ社(スイス)は医師たちにリベートを支払い自社の薬剤を優先的に処方させようとした疑いで米司法省から提訴された[7]。『米司法省によると、ノバルティスの米国支社には、処方箋を出す医師たちに報奨を与え、高価な自社ブランド薬剤の売り上げを増加させた疑いがもたれている。[7]』という報道を見ると、フライデーが伝えたノ社の厚遇と似たような感じを受ける。
こういう不適切な戦略はノ社の方針なのだろうか。臨床研究に参加していたノ社社員が単独で暴走した事件ではないと思う。
バルサルタン事件の根本原因にはリベートなどノ社と研究者・研究機関の不適切な関係があるかもしれない。現在は京都府立医大以外にノ社から奨学奨励金等を受けていたという報道はないが、根本的な解決のためには調べる必要がある。
一番最悪のなのは京都府立医大以外にも慈恵医大等でノ社の有利になるようにバルサルタンの効果を改ざんして発表し、ノ社とバルサルタン臨床研究のすべての大学が癒着していたというケース。京都府立医大だけでも大問題なのにノ社の誘惑を受けた機関はすべて悪の道に走ってしまったのなら、日本の研究界の名誉や信頼は目も当てられないほど甚大な損害を受けるだろう。
無論これは最悪のケースで、まだ疑惑の段階で不正と決まったわけではない。ただ、京都府立医大の事件については日本循環器学会が論文として成り立たないほど多数の重大な解析の誤りがあるとして論文を撤回したし、著者であるM元教授らが不正を知らなかったとは考え難い。即ち意図的な不正が濃厚。その意図とは?循環器学会は「多数の重大な解析の誤り」の具体的内容を明らかにしないが、このサイトで追究している不正の態様(例)を見ると、バルサルタンの効果を良く偽装しノ社を有利にする意図を感じる。皆さんはこういう様を見てM元教授のグループとノ社がどういう関係だったと思いますか?
今後慈恵医大等の調査で同様にノ社に有利になるように研究成果を改ざんして発表したということになったら、上で述べた最悪のケースに発展するかもしれない。
私はこの問題は金銭面の流れ等癒着の調査で東京地検特捜部など強力な捜査機関が捜査を行った方が真相の究明や不正の改善でよいのではないかと思う。この事件は研究者だけではなく、研究機関が当事者である可能性も高く、研究機関に調査を任せたのでは十分な解決にならない可能性もあるからだ。昨年発覚した辻本豪三元京大薬学研究科教授とメド城取との癒着で生じた研究費不正事件は当初京大の独自不正経理調査で「不正経理なし」という結果だったが、東京地検特捜部の捜査で不正が発覚し、辻本らは逮捕された。これを契機に平野文科相(当時)は『「(大学の)調査で分からなかったものが出てきた。しっかりと調査ができるような方策を検討しなければいけない」と話し[8]』、文科省独自の不正経理調査がはじまった。
辻本の事件で京大が不適切な調査をしたように研究機関が当事者となる事件を研究機関に調査させたら調査の構造上不公正である。そのために辻本事件では京大が当初「不正経理はない」と回答したのだろう。京都府立医大のバルサルタン事件でも同大は当初予備調査で不正を否定し正式に「不正なし」と結論したが、私は同大が不正を隠蔽するためにわざとクロをシロと判断したと思う。
なぜなら、論文が成り立たないほど多数かつ重大な研究不正疑惑の指摘を学会から受けたら、通常の研究者なら不正の疑いを持ち、本調査が必要と結論する。予備調査は不正の疑いがあるかどうかを審査するだけだから、そんなに難しい判断ではなかったはずだ。にも関わらず、予備調査の担当教授が不正なしと判断し、同大がそれを正式な結論としたことは不可解といわざるを得ない。
ここからは推測にすぎないが、予備調査を担当した教授や同大もバカではないから、ノ社の有利になるようにバルサルタンの臨床研究の成果を改ざんした疑いがあることを学会からの告発で当然わかっていただろう。それを本調査して真相を明らかにしたら、どういうことになるか想像に難くなかったはずだ。単にM元教授らのグループの責任に留まらず、日本の臨床研究の信頼を根幹から揺るがす事件の責任を同大も追及されると予想できた。(今後本当にそうなるだろう。)
この問題は明らかに京都府立医大も当事者だ。当事者の同大がバルサルタン事件の調査をやり難いのは確かだろう。
だからこそ特捜のような強力な捜査機関が本件を捜査するのが真相の解明と不正の改善の上でよいと思う。
バルサルタンは年間1000億円以上売り上げるノ社の看板商品で、ノ社と研究機関が癒着しノ社の有利になるように嘘の研究成果をでっちあげ、期待した効果が出ないかもしれない薬を作って世界中に販売し患者に使わせるというのは極めて悪質。京都府立医大等の職員はみなし公務員だからリベートで嘘の研究成果を発表したというなら、加重収賄罪(刑法197条の3 1項、2項)になるし、ノ社の責任者は贈賄罪(刑法198条)となる[9]。臨床研究に参加したノ社社員もノ社の有利になるようにデータを改ざんしたのなら背任罪(刑法247条)になり得る[9]。
本件は特捜が大好きな大規模事件に発展するかもしれないので、金の流れ等癒着の側面は当事者である研究機関やノ社に任せるより特捜が捜査した方がずっと効果を期待できる。
真相の徹底した究明と不正改善を期待する。
参考
[1]毎日jp 写し1、写し2,写し3 2013.3.28
[2]フライデー p86 2013.4.19 発売
"ドル箱降圧剤の論文撤回、京都府立医大有名教授と製薬会社ノバルティスの闇
◆ 松原弘明・京都府立医科大学元教授、降圧剤「バルサルタン」 "
写しその1, 写しその2, 写しその3 .
[3]世界変動展望 著者:"慈恵医大のバルサルタン不正疑惑も調査へ!ノバルティスも調査!" 世界変動展望 2013.4.25
[4]毎日jp 写し 2013.5.1
[5]世界変動展望 著者:"白橋伸雄がNagoya Heart Study、VARTのバルサルタン論文でもノ社所属を表記せず統計解析者として名を連ね" 世界変動展望 2013.4.30
[6]世界変動展望 著者:"滋賀医大もバルサルタン論文を調査、またしても白橋伸雄ノ社社員が論文にノ社所属を表示せず名を連ね" 世界変動展望 2013.5.2
[7]AFB BBNEWS 記事 2013.4.27
[8]毎日新聞web 2012.7.3
[9](加重収賄罪) 刑法197条の3 1項 公務員が前二条の罪を犯し、よって不正な行為をし、又は相当の行為をしなかったときは、一年以上の有期懲役に処する。
同2項 公務員が、その職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、若しくはその要求若しくは約束をし、又は第三者にこれを供与させ、若しくはその供与の要求若しくは約束をしたときも、前項と同様とする。
(贈賄罪) 刑法198条 第百九十七条から第百九十七条の四までに規定する賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、三年以下の懲役又は二百五十万円以下の罰金に処する。
(背任罪) 刑法247条 他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
知り合いの人が入院させてる。いくら健康な男性でも書類を改ざんされてる。