合唱団の成果発表の場として合唱コンクールがある。コンクールはNHK全国学校音楽コンクール(Nコン)と全日本合唱コンクール(朝コン)が有名。高校以下の合唱団はコンクールに出場するところが多い。大会に出場しない野球部がほとんど目標がないのと同じで、高校以下の合唱団にとってはコンクール出場は不可欠の目標といえる。
しかし、大学や一般の合唱団はコンクールに出場しないところも多く、私の主観ではそういう団体の方が多いと思う。そのような団体にとっては自分たちの定期演奏会等で成果を発表することを大きな目標にしていることが多い。
ではなぜ大学や一般の合唱団はコンクールに出場しないところが少なくないのか。コンクール出場については合唱団ごとに考え方が違い、その考え方に基づいてコンクール出場を決めている。いくつかの合唱団の考えを紹介する。
○コンクールに出場するある大学合唱団の考え
合唱コンクールに出て、大きな賞を受賞すれば宣伝効果が出てよい。コンクールに出て賞をとることは嬉しいし、そのために活動するのはやりがいがある。だから合唱コンクールに出場する。
○コンクールに出場するある一般合唱団の考え
コンクールに出た方が音楽が自己満足にならなくてよい。自己満足の音楽ではなく、ある程度客観的によい音楽を作りたい。
○コンクールに出場しないある大学合唱団の考え
合唱コンクールに出場すると、審査員受けする音楽を追求せざるを得ず、面白くない。そんなことを目指すよりも自分たちが求める音楽を追求したい。だからコンクールには出場しない。
○一部のコンクールに出場しないある中学合唱団の考え
某合唱コンクールは審査基準が客観的でなく、一生懸命よい音楽を作っても、明らかに自分たちより悪い音楽の合唱団よりも評価が低くなることがあり、到底納得できない。そんなコンクールに出場しても一生懸命がんばってきた生徒がかわいそうだからコンクールに出場しない。
私が知る限りは上のようなものがある。考え方は様々だ。当然のことながら、コンクール出場にはよい点と悪い点がある。審査基準が客観的でないというのはデメリットの一つといえるだろう。昨日の記事で紹介したように今年朝コンで全国3位で33年連続全国大会金賞の福島県立安積黎明高等学校がNコンでは東北大会銅賞どまりだったことは、審査基準がNコンと朝コンで違うことが原因である。
合唱コンクールの審査は芸術審査だから、野球の得点のように客観的な審査は不可能で、主観的にならざるを得ない。そのためしばしば不条理な結果を招く。
合唱コンクールで優秀な成績を収めたい合唱団の多くは、おそらく審査員を事前に指導に招き、指導を参考にして音楽を作るということをやっている。事情を知らない人は高名な指導者なので指導してもらったと思っているかもしれないが、その大きな目的は審査員の評価基準を事前に知ることでコンクールで有利になることである。
こういう話を聞くと「そこまでして合唱コンクールで金賞をとりたいのか。」「それは癒着じゃないの?」と批判する人がいるだろう。確かにそういう側面はある。しかし、これがコンクール(特に朝コン)で優秀な成績を収めるための現実だ。
特に朝コンがそうだが、コンクールは出場キャリアの長い合唱団の方が有利だ。審査には基準があって、どの様に音楽を作れば得点が高いか、減点されないか、というノウハウは出場キャリアの長い合唱団の方が多く持っているので、そのような合唱団が有利になる。
その他特に朝コンでは指導者の肩書きや政治力なども少なからず結果に影響を与えている印象を持っている。コンクールを主催する合唱連盟の理事等が指導者をしている合唱団の成績は聴いた限りではあまり良い音楽と思えなくても、なぜかよい事があったりする。酒を飲みながら裏話をきくと、本来良い音楽ではなかったが、お情けで特別賞を出したりなど、公正な評価とは到底考えられないような取り扱いも現実に存在する。
朝コンでは審査員ごとの順位評価が公表されるが、5人の審査員中4人が1位とした合唱団が、残り一人の審査員は最下位に評価するといったことは、現実に起きる。
私は過去に朝コンで全国優勝を果した合唱団の演奏を聴いたことがあり、その合唱団の指揮者はその都道府県の合唱連盟でトップを務める高名な人物だった。しかし、演奏は全く満足できるものではなく、なぜこのような団体が全国優勝したのか疑問を感じた。
私が聴いた限りでは、コンクールで金賞をとっても下手な合唱団は結構あると思う。所詮アマチュアの合唱団だからかもしれないが。
上の合唱団の中にはコンクールでよい結果を収めると宣伝効果が出ると主張するが、端的にいってアマチュアの合唱団の力量などたかが知れていて、合唱コンクールで金賞をとったから演奏を聴こうという人はほとんどいない。即ち宣伝効果はほとんどない。むしろ、合唱連盟に所属して雑用をやらされて、定期演奏会等の準備の時間をとられてしまう点はデメリットだと感じる合唱団もある。
一方で、コンクールに出場した方がいいと感じる合唱団も存在する。特に引退後の高齢者中心の合唱団に多いのだが、声が全然揃っていない、和音も汚く響く、音程もリズムも正確でない、ハーモニーも何もない、音楽をやっていると思えない酷い合唱団が存在する。こういうのも失礼だが、演奏を聴くと不快になってしまう。趣味でやっているとはいえ、もう少しいい音楽を作るように努力すべきだ。こういう合唱団は完全に個々が好き勝手に歌っているだけの合唱団なので、コンクールに出場してもう少し客観的によい音楽を目指した方がいいと思う。
こういう合唱団は発声練習をもっと頑張った方がよい。発声練習は大変地味な作業で、確かにつまらない印象がある。つまらないので練習であまりやらない合唱団も存在する。しかし、発声練習をきちんとやらないと絶対によい声を作れない。ひいては良い音楽を作れない。良い音楽を作れなければ、面白くないと思うなら、きちんと発声練習をしないとダメだということになる。確かにつまらないのはわかるが、がんばるべきだ。
発声も学んでみると男声と女声では体の構造が違うため、発声法が違うのだ。無論、共通する部分も存在する。発声の本を読んでいくと少し専門的なことも書かれていて、正直よくわからない部分もあるのだが、とにかく大事だということはわかる。
声がよいという点は特に声楽家が審査員の場合は高い評価を得られる可能性が高い。朝コンで声質がよいと思った合唱団は声楽家の審査員の評価が高かった。他にも作曲家等の審査員がいるので、声がよいだけでは無論だめなのだが、良い音楽のためには必要な要素の一つだ。
以上、あなたの合唱団は合唱コンクールに出場したいですか、それとも出場したくないですか?
合唱コンクールは以前は聴きにいっていたし、複数の大学・一般の合唱団の定期演奏会を聴きにいったが、近年は耳が肥えてきたのか、いい音楽ばかり求めて、コンクールや演奏会に行かなくなった。聴いていてもアマの合唱団だと満足しない。
大阪ハインリッヒ・シュッツ室内合唱団など一部気に入った合唱団も存在するが、少ないですね。皆さんはどんな合唱団が好きですか?