世界変動展望

私の日々思うことを書いたブログです。

江の1年間を振り返って

2011-11-29 00:23:20 | スポーツ・芸能・文芸

大河ドラマ江が27日放送終了した。毎週見ていたのである程度面白かったとは思うものの、漫画的で荒唐無稽な展開が多く、及第点とまではいかなかった。しかし、一部は面白い話があったので、それだけでもよかったと思う。

来月から坂の上の雲の第三部(最終)がはじまる。こちらの方はとても面白いので楽しみにしている。来年の大河ドラマ平清盛も楽しみにしている。


白鵬優勝! - 平成23年大相撲九州場所

2011-11-28 00:51:27 | スポーツ・芸能・文芸

平成23年大相撲九州場所は横綱白鵬が優勝した。成績は14勝1敗。立派な成績だ。白鵬はこれで優勝21回、大横綱谷風の優勝相当成績に並んだ。

一方で関脇稀勢の里は千秋楽で琴奨菊で敗れ、大関昇進の目安とされる三役で3場所33勝に届かなかったものの、来場所の大関昇進が確実視されている。1年間で白鵬に3回勝ったことや長期間安定した成績を残したことが評価されたらしいが、おそらくそれは表向きの理由で八百長問題など相次ぐ不祥事の中、日本人大関誕生によって少しでも人気や客を取り戻したいという相撲協会の思惑が甘い昇進を許したのだろう。外国人ならおそらく昇進していない。

出島や雅山など大関に昇進しても優勝争いに絡むことなく、すぐさま陥落していった力士の影響で近年は大関昇進基準が厳しかったのが実情だ。それを考えれば基準を満たすことなく、優勝もなく大関に昇進することは甘い昇進と見るのが適切だろう。稀勢の里は甘い昇進で運よく大関になれたなどと言われないためにも、大関昇進後にきちんと活躍してほしい。

1年の大相撲はすべて終了したが、来年はもっとよい相撲を期待している。


獨協医大の無責任さについて

2011-11-27 00:00:35 | 社会

獨協医大や名古屋市立大医学部で研究不正が告発されてから相当な期間が経過した。文部科学省等のガイドラインによれば本調査はとっくに終わっている時期だろう。しかし、一向に調査結果を公表しない[1]。この問題はマスメディアでも報道された。にも関わらず何の説明もしないのは今の時点では責任を果しているといえない。

特に独協医大は8月頃までには調査結果を公表すると公言したのに、それを翻した。しかも、不正論文ですら、自主的な撤回をしていない。諭旨解雇になった元教授も同様である。これは研究機関や研究者としてあまりに無責任だ。研究をやってお金をもらっているにも関わらず、虚偽の結果を放置して他の研究者たちに大迷惑をかけるのは著しく倫理に反する。

機関が不正や虚偽だとわかっていて、それを速やかに改善せず論文を公表し続けることは機関が不正や虚偽を追認し、不正行為者と一緒になって新たに組織ぐるみで不正や虚偽結果を発表することに等しい。不正・虚偽発表公認研究機関だ。

虚偽の結果は速やかに訂正・撤回して当然である。そんなことすらできない研究機関や研究者は学界や社会の一員としての資格がなく排除すべきである。強く非難されて当然だ。

参考
[1]文部科学省のガイドラインによれば本調査の期間は相当の期間(例えば概ね150日)と定められており、どの研究機関も90~150日程度である。獨協医大、名古屋市立大学の本調査期間はとっくに相当な期間を過ぎている。


大学入試で総合型試験導入など絶対やめろ!センター試験を廃止しろ!!

2011-11-25 23:56:28 | 政治・行政

大学入試センターが読解力や推論力・分析力を問う「総合型試験」の導入の可否を、4年後までをめどに検討するらしい[1]。推薦入試、AO入試で大学生の学力が低下しているため検討しているらしい[1]。同試験は法科大学院の適性試験をベースに問題が検討されるという[1]。

はっきりいって、こんな試験改悪は絶対にやめてもらいたい。なぜなら、こんな試験は受験生たちに今のセンター試験以上に何の役にも立たない努力をさせることになるからだ。法科大学院の例を見ればわかるように、適性試験の能力など何の役にも立っていない。中央大学のように適性試験を考慮しない大学院すらあるように、重要なのは入学後等、将来進む分野に直結する能力であり、何の役にも立たない勉強を無理やりやらせるのは無駄であり、受験生もやる気がでないだろう。彼らがかわいそうである。適性試験で主に選抜された法学未習者の司法試験受験生が既習者受験生よりかなり合格率が悪いように適性試験の能力など何の役にも立たないことは証明されている。適性試験の勉強をさせるより、理系に進む人たちに将来使うであろう数学や英語の勉強をさせた方がよほど有益だし、受験生もモチベーションが保てるだろう。

そもそも今のセンター試験ですら私は廃止を主張している。数学や英語の能力を問うているが、高得点には数学等の能力よりセンター試験固有の事務処理的な能力が必要で、数学者ですら数学の問題を時間内に処理するのが難しいと新聞で読んだことがあるし、私もセンター試験の問題を見て、数学能力とは関係ない固有の事務処理能力が要求されている様を感じ、こんな試験なら廃止した方がいいと思った。

センター試験やその前身である共通1次試験は大学ごとの個別入試だけだと難問・奇問が多くなり、受験生の健全な学習の妨げになるという発想から生まれたものだ。確かにそれで難問・奇問は一掃されたが、上で述べたような問題を作り出した。そもそも、難問・奇問を一掃したければ、各大学がそういう問題を出さなければいいだけだ。今の2次試験の質で問題を出せばいいだけだと思う。

また、受験生の学力低下を防ぎたいなら、推薦入試やAO入試を廃止するのはわかるが、なぜ総合型入試を導入しようとするのかわからない。単に一般入試の枠を増やせばいいだけではないか。何の役にも立たない総合型試験の能力をもとに選抜を行うよりずっといい。

思えば、時代が進むほど試験は受験生にとって嫌なものに変化していく。例えば大学入試は最初は大学ごとの個別試験しかなかったのに、共通1次試験、センター試験の導入で受験勉強の負担が増えた。文系の人は数学や理科、理系の人は国語や社会など、苦手でやりたくもない勉強を大学入試を突破するため、しぶしぶ勉強するはめになった。さらにセンター試験は文系の人は社会が2科目中1科目選択から2科目必須、理系の人は2科目中1科目選択から2科目必須と負担がさらにきつくなり、数年前に英語でリスニングの試験が導入され、さらに負担が増えた。ほとんどの受験生がやりたくないと思っていただろう。

文部科学省はなぜこんなにも共通試験とか受験生の負担増に拘るのかよくわからないが、おそらく受験生のためにこういう制度を実施しているわけではなく、自分達の理想とする勝手な教育像を実現するために自己満足でしかない制度を導入するのだろう。

こういう制度変遷を見ていると、昔の人ほど昔に大学受験を突破してよかったと思うだろう。総合型入試の導入など絶対にやめ、センター試験を廃止し、今の2次試験の質のまま昔の個別入試だけかす制度にすべきである。

参考
[1]毎日新聞 (web) 2011.11.25


超光速ニュートリノを否定する論文が発表!

2011-11-23 20:18:21 | 物理学・数学

超光速ニュートリノを否定する論文がイタリアの研究チームによって発表された。

『スイス・ジュネーブ郊外の欧州合同原子核研究機関(CERN)から発射されたニュートリノの観測 データを、オペラとは別の観点で分析した。米国のノーベル物理学賞受賞者らが「光速を超えれば、ニュートリノは光や電子などを放出し、エネルギーをほとんど失う」ことを理論的に示しているが、今回の実験ではエネルギーを失った形跡が見られず、「光速は超えていない」と結論した。[1]』

少なくともこの論文は超光速ニュートリノを直接的に否定するものではない。上の米国のノーベル物理学賞受賞者とはグラショーのことで、「光速を超えれば、ニュートリノは光や電子などを放出し、エネルギーをほとんど失う」ことを理論的に示したらしいが、これはあくまで理論であって確かなものではない。今回の報告はグラショーらの理論を前提にしているので、これが間違っていればエネルギーの放出が検出されないのは当然だ。理論的に示されても、実験で観測されなかった例などいくらでもある。そのケースは理論が間違っていたというだけである。

確かにまだ追試で超光速ニュートリノを検証していないから、これが間違っていることは否定できない。しかし、今回の超光速ニュートリノの報告は直接的にニュートリノの速度を測定した上での報告だから、この検証は同様の直接的な追試実験で行うべきで、それが一番確かな検証である。理論を前提にした間接的な実験検証では直接的な実験結果に比べて根拠が弱い。

まず間違いなく同様の速度測定が行われるだろうから、その結果で真偽を確かめるのが適切だろう。もし超光速が確かならグラショーらの理論に何か問題があったという結論になろう。

参考
[1]Yomiuri Online 2011.11.24


加藤一二三、1300勝達成!

2011-11-22 20:16:46 | 囲碁・将棋

加藤一二三九段(71歳)が11月1日に東京・将棋会館で行われた第70期C級1組順位戦(対 片上大輔六段戦)に勝ち、大山康晴十五世名人、中原誠十六世名人に次いで3人目となる公式戦通算1300勝を達成した。加藤一二三の1300勝は四段昇段後57年3カ月、71歳10カ月での達成。

現在のところ、加藤一二三は通算勝利数では大山康晴(1433勝)、中原誠(1308勝)に次ぐ3位。中原の記録を抜くのはほぼ確実だが、おそらく大山の記録には届かないだろう。おそらく時間の問題で羽生と谷川が中原と加藤の記録を抜くだろうが、数年は大山、加藤、中原が通産勝利数1~3位となろう。

主に昭和時代に活躍して1300勝を達成すればすごい記録といえるだろう。おめでとう、加藤一二三。


2011年11月18日の幸運

2011-11-18 20:57:25 | Weblog

今日は歩いていて財布を拾った。警察に届けたところ何と中身は現金約7万円、キャッシュカード、銀行の預金カード数枚、運転免許証など、財布自体もグッチの財布で貴重品が多かった。幸い落とし主からすぐ連絡があり、お礼にわざわざ遠くから訪問するという。

遺失物法で報労金として拾得物の価格の5~20%を受け取れる権利があり、このケースだと現金約7万円とグッチの財布の価格の5~20%ということになる。キャッシュカード等は経済的価値はないので基礎金額に算入しない。グッチの財布がどれくらいの価格なのかわからないが、買ったときはたぶん数万円、現在の価値だと数千円だろう。すると、基礎金額は7万5千円くらいだろうか。5%で3750円、20%だと1万5千円。割合は当事者同士の話し合いで決まる。

しかし、せっかく好意で届けたのに報労金の額を高くしてくれるように交渉するのは「結局金目当てか。」と思われて嫌ですね。でも、私にはよいことがあったので今日はよい日だった。


フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」が2012年6月東京都美術館で公開!

2011-11-10 23:16:25 | 絵画

フェルメールの代表作で最高傑作とも言われる「真珠の耳飾りの少女[1]」が2012年6月に東京都美術館で公開されることが発表された。2012年6月頃から「マウリッツハイス美術館展」を開催し、そこで「真珠の耳飾りの少女」が公開される。

こういう有名な絵はたくさんの人が見にきてたいへんだろう。私はモナ・リザが日本に来たとき見たが、確か大変客が多く3時間くらい並んでようやくモナリザの展示場までたどり着き、多くの人の後ろから遠くに見えるモナ・リザをわずか5分程度見て帰ってきた。これだけ長時間並んで遠くからちょっとしか絵が見れず、かなり不満だった。当時はまだ30代だったが、かなり疲れた。もうこんな大変な思いをしてまで見たくないなと思ってしまった。真珠の耳飾りの少女はモナ・リザほど高名でないのでモナ・リザほど客はこないだろうが、かなり客は訪問するだろうから、見るのは大変な気がする。

でも見たいので東京都美術館に行くかもしれない。

参考
[1]フェルメール:"真珠の耳飾の少女" Wikipedia


研究業績虚偽報告の処分量定

2011-11-09 00:50:21 | 社会

研究業績報告書で虚偽の業績を報告すると懲戒処分となるが、その量定はどのくらいか。過去の事例をもとに考察する。まず懲戒処分の種類だが、重い方から順に懲戒解雇、諭旨解雇、降格、停職、減給、戒告。懲戒処分をするほど不正が重くない場合は、訓告、厳重注意という処分になる。無論、訓告の方が厳重注意より重く、厳重注意は書面又は口頭で行われる。

さて、業績虚偽報告の処分量定を過去の不正事件と共に紹介する。

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(1) 名古屋大学COE業績虚偽報告事件(2005年)

不正行為の主観 過失
処分 訓告

事案の概要
名古屋大学多元数理科学研究科の教授がCOEの予算を取るための業績報告書で掲載予定でない論文数本を掲載予定と報告[1]。調査委員会は「(業績報告書に記載した論文のうち)2本は重大な誤記載であり、本人は故意ではないと否定しているが、自己の業績を高く見せようとしたと疑われても仕方がない」と結論[1]。教授は訓告処分、予算は返還となった[1]。

私見
この事件は「重大な誤記載」とされCOEの予算も返還となっているのに、不正行為者が訓告で済むのは甘すぎると思う[1]。以下の事案で紹介するが、過失でももっと処分が重いのが通常であり、このケースは例外的と考えるべきだろう。甘い処分には何か裏があるのかもしれない。

(2) 信州大学法科大学院設置申請の業績虚偽報告事件(2005年)

不正行為の主観 過失
処分 停職3ヶ月、減給2ヶ月など

事案の概要
信州大学が法科大学院設置申請の際に文科省へ提出した業績報告書に5名の教授の論文が完成済みでないのに完成済みと記載されていた[2]。文科省は法科大学院設置申請を却下。論文完成が完全に間に合わなかった教授2名は停職3ヶ月、減給2ヶ月[2]。両教授は法科大学院担当を辞職[2]。申請後まもなく論文を完成できた教授3名は原稿提出遅延として訓告等の処分[2]。

私見
論文が完全に間に合わなかった教授2名は重過失、完成できた教授3名は軽過失と判断されたのだろう[3]。

(3) 東京海洋大学准教授業績虚偽報告事件 (2011年)

不正行為の主観 過失
処分 停職2ヶ月など

事案の概要
東京海洋大学の准教授が採用選考の際に提出した業績報告書に原稿提出段階にも関わらず、印刷中と記載した著書2編があった[4]。また、論文1編を投稿中と記載したにも関わらず、実際は研究代表者が投稿していなかった[4]。准教授は重大な過失があるとされ、停職2ヶ月[4][5]。採用選考委員であり上記著書の共著者であった教授は誤記載を見逃した等により、停職14日[4]。採用選考委員長の教授は不公正な選考により大学の信用を害した責任として、戒告[4]。

私見
大学の発表では准教授は『応募にあたり記載内容について厳正に記載する責務があるが、確認を行うことなく応募書類に「投稿中」と記載した。[4]』とある。採用選考の提出書類等きちんと確認して厳正に記載すべき書類を誤記載すると、重過失が認められることがある[5]。

大学の発表では虚偽報告だけだが、処分を受けた准教授らには論文の盗作疑惑があり、学会と裁判中。

(4) 高知大学助教授業績詐称事件 (2006年)

不正行為の主観 故意
処分 降格

事案の概要
高知大学理学研究科の助教授が助教授昇進審査の際の個人調書に架空の論文を記載し、助手へ降格処分[6]。調書に記載した論文18本のうち2本は架空で、実際に書いた論文は16本だった[7]。

私見
文献からは故意かどうかわからないが、架空の業績を報告したことを考えるとまず間違いなく故意だろう。昇進審査の際に不正があったので、昇進取り消しという意味での降格処分なのかもしれない。ちなみに、不正行為者は現在どこに所属しているのか不明なので、おそらく居づらくなって辞職したのだと思う。

(5) 東京大学トルコ人助教業績詐称事件 (2010年)

不正行為の主観 故意
処分 懲戒解雇相当 ※

事案の概要
東京大学工学系トルコ人助教が科研費の実績報告書に架空の論文等を記載した[8]。また、助教採用選考の際に、学歴詐称、盗用のある博士論文で得た博士号を記載する等不正な方法で採用されたとして懲戒解雇相当となった[8]。助教の博士号は東大が取り消し[9]。

私見
実績報告書の虚偽記載だけでなく、学歴詐称等もあわせて懲戒解雇相当とされたので、虚偽記載だけでどれだけの量定になるのか不明。しかし、この助教は他にもかなり大規模な業績詐称をしているので、この不正だけでも懲戒解雇になっただろう。この事件は助教の学歴、職歴、業績のかなり大規模な詐称、博士論文に盗用が発覚したことによる東大初の学位取り消しで有名になった。ここまで大規模な詐称は極めて珍しい。稚拙で大規模な詐欺的手口を見抜けず、なぜ東大が不正行為者に博士号を与え、助教として採用したのか、東大のずさんな選考等も話題になった。

※法的には懲戒解雇ではなく任意退職。非違行為のひどさから事実上・経済上の扱いとして懲戒解雇相当とされ、退職金が支給されなかった。東大がこの助教を懲戒解雇できなかったのは、解雇前に元助教から退職願いが出され民法の規定により雇用契約が解約されたため。当然だが、非職員に懲戒処分はできない。

(6) 信州大学助教授業績詐称事件 (2006年)

不正行為の主観 故意
処分 懲戒解雇

事案の概要
信州大学助教授が助教授昇進試験の際に自分の論文の学会誌掲載が決定したかのように装った書類を提出し、懲戒解雇[10]。さらに私文書偽造罪で告発された[10]。

私見
論文掲載を見せかけるために偽造した掲載証明書を提出した点が悪質と判断されたと思う。犯罪行為だし、ここまでやったら懲戒解雇はやむを得ないだろう。

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以上を見ると、故意の虚偽報告は懲戒解雇、降格など非常に重い処分となっている。停職の事案すらないのだから、それだけ重大な不正行為ということだろう。過失ですら、停職2,3ヶ月など重い処分が多い。業績報告書はきちんと確認し厳正に記載する責務があるので、誤記載は原則重過失と判断されるのだろう。(1)の事例は私見でも述べたとおり不当に軽い処分なので、例外的なものと考えた方がよい。

多くの研究機関では虚偽報告の標準量定は停職、減給、戒告となっている。しかし、採用・昇進選考等特に厳正な報告が求められるときに虚偽報告すると、不当な方法で採用・昇進された等の懲戒事由にも該当し、標準量定より重い処分となることが多い。例えば採用・昇進選考に故意の不正があれば、採用・昇進が取り消されるのは当然だろう。学生だって入試でカンニングをすれば合格を取り消される。それと同じだ。

処分量定は研究機関によってまちまちなので上の事例は参考程度のものだが、各大学との処分均衡を考えると、故意の虚偽報告は解雇や降格、最低でも停職数ヶ月、重過失は減給、停職が相場だろう。故意は解雇もあり得るとしたが、上の懲戒解雇事案は大規模な詐称や証明書偽造などかなり悪質なケースなので、単に故意の虚偽報告を1回しただけなら懲戒解雇は重すぎると思う。ただ、降格処分の例もあるから、そのケースでも停職以上の量定は十分考えられる。

しかし、運良く停職・降格で済んだとしても故意の虚偽報告はその後の昇進が閉ざされる可能性が高い。故意の虚偽報告は論文の盗用などと同じくあってはならない重大な不正で、露見すると著しく信用を失うし、上司や大学の名誉に傷をつける。昇進を決める上司らの顔に泥を塗った人がその後昇進できるかどうかは想像に難くないだろう。例えば(4)の高知大学の元助教授が降格処分を受けた後に大学を去った理由はおそらくその大学にいてもずっと助手のままで、かつ色々な冷遇で職場にいるのが耐えられなかったからだろう。

また、何度も虚偽報告すると解雇になっても不思議はない。故意の虚偽報告の動機はほとんど業績をよく見せるためだろうが、それだけでなく不正を隠すなど不法な動機があれば、より悪質と判断される。そのケースは重い処分を覚悟すべきだ。

以上、業績虚偽報告はかなり重い処分なので、研究者の方はくれぐれも虚偽報告しないでほしい。業績虚偽報告は研究者としての自殺行為だ。また、国公立大学や国立研究所の職員が職務に関して虚偽の文章を作成し、行使すると虚偽公文書作成罪、偽造公文書行使罪(刑法156条、同158条1項)になり、犯罪となる[11][12][13]。

参考
[1] 名古屋大学COE業績虚偽報告事件 オリジナルの記事はasahi.com 2005.9.12
[2] 信州大学法科大学院設置申請業績虚偽報告事件1 文部科学省
[3] 信州大学法科大学院設置申請業績虚偽報告事件2 全国国公私立大学の事件情報 2005.6.10
[4] 東京海洋大学の懲戒処分公表 2011.4.5
[5] 東京海洋大学業績虚偽報告 MSN産経ニュース  2011.4.5
[6] 高知大学助教授虚偽報告  全国国公私立大学の事件情報 2006.1.25
[7] 毎日新聞 2005年12月23日 3時00分
[8] 東大工学系トルコ人助教懲戒解雇処分の公表 東京大学 2010.4.2
[9] 東大の博士号取り消し公表 東京大学 2010.3.5
[10] 信州大学助教授業績詐称事件 47NEWS 2006.7.20
[11]国公立大学や国立研究所の職員は刑罰法規では公務員とみなされる(国立大学法人法19条、地方独立行政法人法58条[16]。国立研究所は該当する独立行政法人法の該当条文。例えば独立行政法人物質・材料研究機構法14条、独立行政法人日本学術振興会法12条など。刑法7条1項)。

公務員が職務に関し虚偽の文章や図画を作成、行使すると虚偽公文書作成罪(刑法156条)、偽造公文書行使罪(刑法158条1項)になる。刑法156条では有印(作成名義人が書かれている文章等)と無印(作成名義人が書かれていない文章等)で区別するとあるが、判例によれば記名があれば署名ありとしているので、無印のケースは極めて稀。従って、通常虚偽有印公文書作成・行使罪となる。作成罪と行使罪は牽連犯(刑法54条1項)なので1年以上10年以下の懲役となる。

国公立大学や国立研究所の職員の方は虚偽報告すると懲戒処分だけでなく刑罰も科せられる可能性があります。決して犯罪者にならないでください。

ちなみに、同罪の公訴時効は7年で親告罪ではありません[15]。従って、刑事訴訟法(以下、刑訴法)第239条1項により誰でも告発できますし、告発があれば警察は受理義務(犯罪捜査規範第63条1項)があり、捜査義務(刑訴 第189条2項)が生じ、証拠書類等を速やかに送検しなければなりません(刑訴第242条)[18][19][20][21]。検察官が不起訴処分(起訴猶予を含む)にしても、検察審査会法第2条2項、同第30条により告発者は不起訴処分への不服申し立てができ、検察審査会で認められれば強制起訴できます[22][23]。また、公務員は職務に行うことにより犯罪があると思料するときは、刑事告発をしなければなりません(刑訴法第239条2項)[18]。

[12]刑法156条:公務員が、その職務に関し、行使の目的で、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は文書若しくは図画を変造したときは、印章又は署名の有無により区別して、前2条の例による。
[13]刑法156条1項:第154条から前条までの文書若しくは図画を行使し、又は前条第1項の電磁的記録を公正証書の原本としての用に供した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は不実の記載若しくは記録をさせた者と同一の刑に処する。
[14]刑法155条: 行使の目的で、公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造した者は、1年以上10年以下の懲役に処する。
2 公務所又は公務員が押印し又は署名した文書又は図画を変造した者も、前項と同様とする。
3 前2項に規定するもののほか、公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は公務所若しくは公務員が作成した文書若しくは図画を変造した者は、3年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。
[15]刑事訴訟法250条2項:  時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
(略)
四  長期十五年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については七年
五  長期十年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については五年
[16]国立大学法人法19条:国立大学法人の役員及び職員は、刑法 (明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。
[17]刑法7条1項: この法律において「公務員」とは、国又は地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する議員、委員その他の職員をいう。
[18]刑事訴訟法第239条1項:何人でも、犯罪があると思料するときは、告発をすることができる。
同2項:官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。
[19]犯罪捜査規範第63条1項 司法警察員たる警察官は、告訴、告発または自首をする者があつたときは、管轄区域内の事件であるかどうかを問わず、この節に定めるところにより、これを受理しなければならない。
[20]刑事訴訟法第189条2項 司法警察職員は、犯罪があると思料するときは、犯人及び証拠を捜査するものとする。
[21]刑事訴訟法第242条 司法警察員は、告訴又は告発を受けたときは、速やかにこれに関する書類及び証拠物を検察官に送付しなければならない。

[22]検察審査会法第2条  検察審査会は、左の事項を掌る。
一  検察官の公訴を提起しない処分の当否の審査に関する事項
二  検察事務の改善に関する建議又は勧告に関する事項

2  検察審査会は、告訴若しくは告発をした者、請求を待つて受理すべき事件についての請求をした者又は犯罪により害を被つた者(犯罪により害を被つた者が死 亡した場合においては、その配偶者、直系の親族又は兄弟姉妹)の申立てがあるときは、前項第一号の審査を行わなければならない。

[23] 検察審査会法第30条 第二条第二項に掲げる者は、検察官の公訴を提起しない処分に不服があるときは、その検察官の属する検察庁の所在地を管轄する検察審 査会にその処分の当否の審査の申立てをすることができる。ただし、裁判所法第十六条第四号 に規定する事件並びに私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律 の規定に違反する罪に係る事件については、この限りでない。


江戸時代以前の姫の衣装の高級さについて

2011-11-07 00:00:59 | Weblog

最近和服の店に行って内掛けを見た。値段が約200万円。かなり高級だ。店の人に「今大河ドラマ江がやっていて、江や茶々が内掛けを着ているが、戦国期の姫の内掛けはどれくらいの価値ですか?」と聞くと店員は「あれは絹だし、全部手作業で作ってるから、この200万円の内掛けよりずっと価値が高いです。どれくらいの値段になるかわかりませんけど、ずっと値段が高いことは間違いありません。」と回答した。

おそらく数千万円とか、場合によっては億円単位かもしれない。そう考えると昔の姫は非常に高級なものを着ていたといえる。大名というのはどれだけ金持ちなのか。国民全員が平等という考えの現代では、特定の人物だけが他から利益をむしりとって贅沢に暮らす様が否定されるが、昔の封建時代は偉い人はとことん金持ちですごい。

参考[1]によると、時代によって異なるが100万石が現在の年収100億円~491億円、1万石で年収1億円~4億9千万円に相当するらしいので、確かにそれだけ収入があれば数千万円の内掛けの一つや二つ買えるだろう。10万石以上の大大名なら年収10億~49億円に相当するのだろうし、それだけ大金持ちなら数千万円の内掛けなど安いだろう。

昔のお姫様は本当に高級なものを身につけていた。昔の女性にとっては本当に憧れの対象だったろう。西洋ではシンデレラのように平民がお姫様になる物語があるが、そんな話が作られるのもわかる気がする。

参考
[1]知行の価値が載っているサイト