世界変動展望

私の日々思うことを書いたブログです。

研究不正事件に対する見解

2011-02-28 21:01:33 | 社会

最近研究の捏造、改ざん事件が続いている[1]。捏造や改ざんをした研究者はほとんどのケースで懲戒解雇になっている[7]。捏造、改ざんは科学に対する信頼を根幹から揺るがすことであり、研究者としての最も基本的なモラルの欠如だから、懲戒解雇は当然だろう。

しかし、捏造、改ざんでも研究機関によっては懲戒解雇にならないこともあるようだ。琉球大学医学系の教授は論文38編でデータを流用する等して懲戒解雇処分となったが、後に大学と和解し、停職10ヶ月の処分で済んだという[2][3][4]。私が知る限り、捏造を実行した研究者が懲戒解雇にならなかった例はこれしかない。これは不当処分だろう。これほど捏造しておきながら、停職10ヶ月は軽すぎる。

思うに、懲戒処分は処分者側との利害関係で大きく変わる可能性がある。被処分者を重く処罰することに何らかの不都合がある場合は、甘くなるのだろう。琉球大学のケースはどうだかわからないが、こんな不当処分を見ると何か裏があるのではないかと疑ってしまう。不正行為者の論文には同大学長の岩政輝男が共著者になっているものもあったらしく、それが関係しているのかもしれない[5]。

他にも東北大学井上明久総長のケースが疑わしい。現在彼は論文の捏造等で裁判中だ。裁判前に大学に対し、匿名の告発があり、東北大の調査委員会は井上氏が潔白だと結論を出した[6]。しかし、裁判の結果井上氏が黒と判明したら、東北大は調査委員会を立ち上げておきながら、正しく調査できなかったことになり、大学の信用は著しく失墜するだろう。調査対象が学長等権力者だったら、事実を歪めて調査・裁定する研究機関の負の側面が浮彫りになるだろう。

東北大のケースはまだ真相がわかっていないのであくまで仮の話だが、もし井上氏の捏造が事実だとしたら、調査・裁定の不適切さの問題は東北大に限らず他の大学でも同様といえるかもしれない。なぜなら、上の琉球大の捏造事件でも明らかに不当な処分がなされているし、利害関係が絡んだときの不当処分の問題はどの研究機関でもおき得ると考えられる。

多くのケースでは大学の調査委員会の調査、裁定は適切に行われるが学長など権力者が関係する事件では、調査や裁定を研究機関外の者等利害関係のない者が中心に行い、より高度な中立性の担保が求められるだろう。

もっとも、捏造等をした研究者が停職程度で済んだとしても、その後研究者としてやっていけないだろう。その者に対する信頼は著しく失墜し、誰もその者を信用しないからだ。その結果、事実上研究者生命は絶たれる。地位を失わなかったとしても、信用がなくては仕事ができない。単に出勤して給料をもらうだけの存在になるだろう。不正行為者にとってはそれでも随分ましなのかもしれないが、職場に居続けるのは地獄で、相当辛い。辞めた方が幸福かもしれない。それに大して貢献できない職員に給料を払い続けるのは損失だ。

先にも述べたとおり捏造・改ざんは科学に対する信頼を根幹から揺るがすことで、こういう事件が度々起きることは本来もっと重大視されても不思議ではない。ちょうど大相撲の八百長や検察の証拠改ざん事件が各機関の存続問題に関わるのと同じである。相撲界等は信用を根幹から揺るがす事件が起きたとき、本当に機関の存続が危ぶまれるほど大問題になるのに、科学の世界ではこれほど捏造・改ざん事件が続いても、大相撲界ほどひどい事態にならないのは、正直少し甘いのではないかと思う[1]。

科学に対する信頼が損なわれることのないような制度を作るべきである。

参考
[1] 科学界における最近の捏造、改ざん事件 電子ジャーナル情報源, ここにあるのは一部で他にもいくつかある。
[2] ここでいうデータ流用とはある実験等の結果を異なる実験等の結果として使いまわすこと。データの捏造、改ざんの一種とされる。
[3] ”論文データ流用 卒業生学位取り消しも"  琉球新報 2010.8.26
[4] "琉大、教授の解雇撤回 論文データ流用問題" 琉球新報 2010.3.5
[5] "論文データ流用 岩政学長も1編共著" 琉球新報 2010.11.27
[6] "井上総長に係る研究不正等の疑義に関する匿名投書への対応・調査報告書" 東北大学 匿名投書に関する対応・調査委員会 2007.12.25
[7] 著者が捏造・改ざん事件の報道を読んだ範囲での話し。捏造等の罰則は原則解雇だと思う。例えば秋田大学の懲戒標準量定(第2 6(1)~(3))によると、捏造、改ざん、盗用は懲戒解雇又は諭旨退職となっている。


一関市博物館、和算に挑戦-平成22年度上級問題解答

2011-02-27 15:55:55 | 物理学・数学

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本問は(5)まではそれほど難しくありません。√r=pとして変形すると、4次方程式が得られますが、手計算で解くのはかなり難しいです。大学以降でそのような方程式を見たら、数値計算で解くのが一般的です。私の解答例にある二分法とは、方程式を数値的に解く方法の一つで、非常に簡単です。詳しくはネットや専門書で調べてください。高校生以下はそういう方法を学習していないのですから、かなり難しかったと思います。

一関市博物館の解答例によると、4次方程式を2次方程式に変形でき、手計算で解けるようですが、かなりの計算技量が要求され、手計算で解くのはかなり難しいと思います[5]。普通こんなふうに解けませんよね。解答例の講評によると、「手強く、難渋することが多いのが和算」とのこと。きっと昔の和算家もたいへん苦労したんでしょう。多くの人は手計算解法を見つけることに一番苦労したと思います。そこが本問の一番難しい点でポイントなのでしょうが、私は高い計算力を問う点はあまり好きではありません。

先にも述べましたが、大学以降で本問のような複雑な方程式を見たら数値計算で解くのが普通で、どうしても解析解を得る必要がない限り、4次方程式の解の公式を使ったり4次方程式を巧妙に2次方程式に直して解析解を得たりしません。

一関市博物館の解答例は最終的には近似解を答えとしている以上、同博物館の解答例は複雑で難しいだけで、あまり利点のある解法ではないと思います。少なくとも学術研究の世界では、最終的に近似解を得るのが目的なら、わざわざ参考[5]のような複雑で難しい解法を取る人は、ほとんどいないでしょう。

「高校生でも解ける問題である以上、手計算解法が建前」と同博物館は考えているのでしょうし、挑戦者の中にも「手計算解法するのがルール」と暗黙のうちに考えている人も多いでしょう。しかし、本問は入学試験等のテストではないので、手計算解法に拘束される理由はありません。数値解法でもきちんと解答の正しさが示せるならよいのではないでしょうか。一関市博物館に問い合わせたところ、数値計算でも正解となり、現にそれで解答した人もいたようです。

本問は大学生以上の人が解くには、数値計算ができる点で、適切な難度かもしれませんが、高校生には大学以降の普通の解法ができず、非常に難しくなるため、よい問題と思いません。本問は今までで一番難しい問題だったと思います。応募者数が84人、正解率が55.4%と例年より低かったのは、そのためでしょう[6]。

来年はもっと簡単な問題がいいですね。

参考
[1] 一関市博物館 平成22年度和算に挑戦の問題
[2] 世界変動展望 著者:"一関市博物館、平成22年度和算に挑戦の解答例について" 世界変動展望 2010.12.9
[3] 世界変動展望 著者:"一関市博物館、和算に挑戦-平成22年度初級問題解答" 世界変動展望 2011.2.27
[4] 世界変動展望 著者:"一関市博物館、和算に挑戦-平成22年度中級問題解答" 世界変動展望 2011.2.27
[5] 一関市博物館の上級問題の解答例 2011.2.27
[6] 平成22年度和算に挑戦の応募者数、正解率など 2011.2.27


一関市博物館、和算に挑戦-平成22年度中級問題解答

2011-02-27 15:50:53 | 物理学・数学

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本問は難しくありません。解くのに苦労はなかったでしょう。

参考
[1] 一関市博物館 平成22年度和算に挑戦の問題
[2] 世界変動展望 著者:"一関市博物館、平成22年度和算に挑戦の解答例について" 世界変動展望 2010.12.9
[3] 世界変動展望 著者:"一関市博物館、和算に挑戦-平成22年度初級問題解答" 世界変動展望 2011.2.27
[4] 世界変動展望 著者:"一関市博物館、和算に挑戦-平成22年度上級問題解答" 世界変動展望 2011.2.27


一関市博物館、和算に挑戦-平成22年度初級問題解答

2011-02-27 15:50:50 | 物理学・数学

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小中学生で"3+7+11+・・・+115"の計算法を知らない人は少し考えた又はめんどくさかったかもしれません。これをまともに計算しても答えは出せるので、そういう解答をした人もいると思います。

S = 3     +  7    +   11 + ・・・ + 115   ・・・ (1)
S = 115  + 111 + 107 + ・・・ +    3  ・・・ (2)

(1)+(2)より、
2×S = 118 × 29

よって S = 118×29 ÷ 2 = 1711 となります。
数学者ガウスは小学生の時に、居残りで"1 + 2 + 3 + ・・・ + 100 = 5050"を上と同様の方法で解き、教師を驚かせたという逸話があります。小中学生の方も、できれば小学生時代のガウスと同じようにスマートに上の和を求められるとよいですね。高校生以上の方は等差数列の和を学習しているので、簡単です。

参考
[1] 一関市博物館 平成22年度和算に挑戦の問題
[2] 世界変動展望 著者:"一関市博物館、平成22年度和算に挑戦の解答例について" 世界変動展望 2010.12.9
[3] 世界変動展望 著者:"一関市博物館、和算に挑戦-平成22年度中級問題解答" 世界変動展望 2011.2.27
[4] 世界変動展望 著者:"一関市博物館、和算に挑戦-平成22年度上級問題解答" 世界変動展望 2011.2.27


データ流用の琉球大医学部教授の停職処分について

2011-02-05 21:46:20 | 社会

琉球大学医学系の教授は論文38編でデータを流用する等して懲戒解雇処分となったが、後に大学と和解し、停職10ヶ月の処分で済んだ[1][2][3][4]。これは著しく研究者倫理に反する者を雇い続けることになり、不当処分だ。

裁判ではデータを流用しても結論に影響しないから懲戒解雇は重すぎると主張したようだが、それを理由に処分を軽減するのは間違っている。確かに結論に影響が出るかどうかは重要な事項だが、もっと重大な問題は研究者としての倫理意識である。

当然のことながら、研究者は真正な事実を伝えなければならず、意図的に不真正な事実を伝えてはならない。これは研究者として最も基本的なモラルであり、これを破ることは研究界に対する信頼を根幹から揺るがす重大な非違行為である。

そういう最も基本的なモラルを論文38編で破るという大規模な不正をした人物を、単に論文の結論に影響がないから処分を軽減するというのは間違っている。問題なのは論文の結論ではなく、教授の倫理意識である。

最も基本的なモラルを何度も破って研究界の信頼を失墜させた人物を再び教授として雇い続けるのは間違いであり、かかる人物は研究の世界から永久追放しなければならない。このような人物に研究を続ける資格はない。学長との関係で不当な処分をしたのかもしれないが、琉大は自浄能力があるかどうか世間から厳しい目で見られていることを忘れてはならない。

(作成日:2011-05-13 21:46:20)

参考
[1]ここでいうデータ流用とはある実験等の結果を異なる実験等の結果として使いまわすこと。データの捏造、改ざんの一種とされる。
[2]”論文データ流用 卒業生学位取り消しも"  琉球新報 2010.8.26
[3]"琉大、教授の解雇撤回 論文データ流用問題" 琉球新報 2010.3.5
[4]"論文データ流用 岩政学長も1編共著" 琉球新報 2010.11.27


大相撲八百長問題

2011-02-05 21:09:17 | 社会
八百長のやり取りと見られるメールが見つかり、大相撲の八百長問題が浮上した。春日錦、恵那司、千代白鵬は八百長への関与を認めている。日本相撲協会は長い間一貫して八百長はないとしてきたが、ついに八百長が表面化した。

しかし、相撲ファンの間では八百長はずっと昔から疑われていて、八百長は存在すると考える人も多かった。千秋楽で勝ち越しをかける力士があっさりと勝つ取り組みを何度も見たことがあるからだ。例えば大関互助会が一つの例だろう[1]。大関も十両も陥落すれば優遇的な立場を失うので、勝ち星を譲り合うことで陥落を防ごうとする動機は十分ある。以前も述べたが、そういう馴れ合い相撲は客の信頼を裏切る背信行為だ。

客は真剣勝負をやっているふりを見て楽しんでいるわけではないから、八百長なら興ざめする。例えば、通算勝利1000勝達成、通算最多勝利の更新が間近、幕内最高勝数達成などの記録達成のために大関魁皇は賞賛されているが、そういう記録がもし八百長を含めた記録だったらどうだろう?本当にみんな賞賛するだろうか[2]。そんないんちきで記録を作ったとしても、全然すごくない。確かに、魁皇の八百長の証拠はないが、私は彼の相撲はあっさり勝つ内容がしばしばあるため、見ていてつまらない[2]。

放駒理事長は八百長を新しい問題と公言しているが、おそらく嘘で、八百長は昔から存在する。組織ぐるみでその存在を隠蔽してきたにすぎない。長い間一貫して八百長を否定してきた相撲協会も今度ばかりは八百長を認めざるを得ないだろう。

政府は相撲協会の公益法人認可取り消し等、厳しい制裁措置を検討している。もしそうなれば、相撲協会は様々な優遇措置を受けられなくなり、経済的に追い詰められるだろう。ファンからの信頼を著しく失墜させたことも大きく影響する。客は演劇を見に高いお金を払って相撲を見に行っているわけではない。

相撲界は解散の危機さえある。大相撲の300年以上の歴史も幕を降ろすのか?力士暴行事件、薬物汚染、野球賭博問題、今回の八百長問題、これだけ不祥事が続けば普通の会社なら信用を失い倒産するだろう。相撲界が解散したとしても、全く不思議ではない。

相撲協会には、これから2つの道がある。相撲をプロレスと同じように八百長ありの演劇と考え、お金を稼ぐ商売とすること。もう一つは、真の真剣勝負をするスポーツに改善すること。おそらく後者を選ぶのだろうが、不祥事が起きるたびに世間から厳しく非難され、強く改善を求められてきたにも関わらず、これほど不祥事が続いたことを考えると、彼らに自浄は期待できない。協会の根本的な体質が悪いから、不祥事が限りなく続くといわれても仕方ない。

相撲協会を一度解体してしまって、ゼロから新しい組織や大相撲界を作り上げた方が大相撲はよい国技、スポーツとなろう。それくらいやらないと今の大相撲界はだめである。

参考
[1]世界変動展望 著者:"大関互助会など力士間の八百長はあるのか?" 世界変動展望 2009.7.28
[2]世界変動展望 著者:"魁皇の記録は素直に褒められない" 世界変動展望 2010.12.10