世界変動展望

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Jikei Heart Study,Kyoto Heart Study,VART の平均血圧値等の疑義とカンデサルタンについて

2013-05-27 20:23:17 | 社会

図1 Jikei Heart Study[2] , Kyoto Heart Study[3], VART[4] の平均血圧値と標準偏差の比較 - [1]
同じ色の枠どうしが同じ

現在のバルサルタン事件の疑義は臨床研究においてバルサルタンを投与したグループと他の薬を投与したグループ(コントロール群)で平均血圧値や標準偏差が異常にそろうこと等である。

京都大学の由井芳樹がランセット上で指摘したのが図1の不自然さだ[1]。いちいち色枠で示さなくてもわかると思うが、バルサルタン群とコントロール群で同じ色のものどうしが同じになっている。薬を投与した後の平均血圧値はどの試験も同じかほとんど同じになっている。平均血圧値や標準偏差は統計的な値だから、各臨床研究でここまで酷似するのは驚異的な類似といえるだろう。

それは不自然なので改ざんしたのではないかという疑義を持たれている。

Kyoto Heart Studyに関しては『「NPO法人臨床研究適正評価教育機構」の理事長・桑島巌氏が言う。「あの論文は、発表当初から大きな問題がありました。『脳卒中や心筋梗塞のリスクが下がった』という研究結果を強調したかったからか、不自然なデータが見られたんです。バルサルタンを投与した高血圧患者1500人と、バルサルタン以外の降圧剤を投与した患者1500人を約5年間調査した結果、双方のグループが到達した血圧値(1500人の平均)がほぼ揃っていました。データが操作され、血圧値が合わされた可能性が高い。なぜか? 実はバルサルタンは、降圧剤としてはそれほど高い効果はない。ほかの降圧剤と効き目で勝負しても優位性で劣るんです。だからこそ、プラスαの薬効を目立たせるため、血圧値を合わせる必要があったのでしょう。 '09 年に開かれたヨーロッパ心臓病学会で、松原氏はこの論文内容をスピーチしたのですが、ヨーロッパの医師たちはデータの信憑性が乏しかったためか、黙殺しました。スイスの高血圧の専門家だけが『本当ならば素晴らしい薬だ』と断ったうえで、『私の母親には投与したくないが、妻の母親になら使う』と皮肉っていました」[5]』と述べられている。

Kyoto Heart Studyはバルサルタンが脳卒中や狭心症のリスクを下げるというプラスアルファの薬効があることを示した。同様にJikei Heart StudyやVARTでも上述のように平均血圧値等がほとんど揃い、プラスアルファの薬効があることが示された。

これが何を意味するのかは現在調査中だが、少なくともなぜこれほど平均血圧値等がそろうのかを明らかにする必要がある。また[1]で由井は"the significant effectiveness of valsartan on angina pectoris in this study and the Kyoto Heart Study is different from that found in other ARB trials and daily clinical practice."[参考訳:この研究(Jikei Heart Study)とKyoto Heart Studyにおける狭心症に関するバルサルタンの重要な有効性は他のARBの試験や日常の診療でわかったものとは異なる。]と述べている。プラスアルファの薬効が本当に正しいのか、きちんと検証する必要がある。

それにしても[2]の統計解析者はバルサルタン製造元のノバルティスファーマ社の元社員で、Kyoto Heart StudyやVARTなど他のバルサルタン臨床研究にも関与していたことがわかっている。まさか・・・。

ところで、降圧剤カンデサルタン(商品名・ブロプレス、製造元・武田薬品工業株式会社)の臨床試験であるCASE-Jに桑島巌が見解を述べている。HIJ-Create結果)についても最近コメントした人がいた。今のところは何も疑義は出ていない。

バルサルタン事件で日本の臨床研究の信頼は失墜したので、今後は何も事件が発生しないとよい。

参考
[1]Yoshiki Yui:"Concerns about the Jikei Heart Study" The Lancet, Volume 379, Issue 9824, Page e48, 14 April 2012 
doi:10.1016/S0140-6736(12)60599-6

該当部分

[2]Mochizuki S, Dahlöf B, Shimizu M, et al for the Jikei Heart Study group. Valsartan in a Japanese population with hypertension and other cardiovascular disease (Jikei Heart Study): a randomised, open-label, blinded endpoint morbidity-mortality study. Lancet 2007; 369: 1431-1439

[3] Sawada T, Yamada H, Dahlöf B, Matsubara H for the KYOTO HEART Study Group. Effects of valsartan on morbidity and mortality in uncontrolled hypertensive patients with high cardiovascular risks: KYOTO HEART Study. Eur Heart J 2009; 30: 2461-2469.

[4]Narumi H, Takano H, Shindo S, et alon behalf of the VART Investigators. Effects of valsartan and amlodipine on cardiorenal protection in Japanese hypertensive patients: the Valsartan Amlodipine Randomized Trial. Hypertens Res 2011; 34: 62-69.

[5]フライデー 記事 2013.4.26

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6 コメント

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Unknown (Unknown)
2013-05-27 21:51:41
rctだから,ベースラインの値がそろうのは自然に思いますが.情報発信しているんだから,あなたも統計の専門家のコンサルティングをつけてデータを適切に評価して議論してはどうでしょうか.
Unknown (Unknown)
2013-05-27 22:50:17
桑島何某の赤字のコメントは個人の感想であり引用に値すると感じませんが
効く人には効いてると感じます
回答 (世界変動展望 著者)
2013-05-28 02:37:38
何の根拠もないですが、あなたはひょっとしてノバルティスファーマ社かバルサルタンの臨床試験に関与した研究者の方ですか?それともN.K.?

さて回答ですが、少なくともランセットの由井芳樹医師の指摘に従えばベースラインのものでも同じ色の枠どうしは不自然なデータです。

Jikeiに関しては論文を見たところ、あなたのいうようにRCTで被験者を分けたようです。私は医学はあまり詳しくないですが、一般に血圧値は一人一人違うわけでランダムに分けたグループの平均血圧値や標準偏差が同じになるのはめったにないと思いますが、医学的な知見では違うのでしょうか?

桑島巌のフライデーでの言及は平均血圧値がそろったことに対する一つの説として紹介しました。正しいかどうかは今後の調査でわかるでしょう。
血圧0.9の差は大きな差 (ノスカール)
2013-05-28 16:19:36
他の試験を見比べましたが、試験にエントリーした時の血圧は小数点1位の値が違うくらいの差しかありません。しかし、0.9の血圧差は意味があることを指摘する研究者がおられます。

Ontarget試験 ACE阻害薬(ラミプリル)とARB(ミカルディス)を比較した研究について、東北大学大学院薬学研究科大久保孝義先生は、Pharma Medica2008年6号で以下のように説明されておられます。

2008年4月,両薬剤問の直接比較試験であるONTARGETの結果が発表された。本試験はHOPE試験に準じた心血管イベント高リスク患者を対象に行われた試験である。その結果,プライマリーエンドポイントにおいてARBはACE阻害薬に対して非劣性である
ことが示された。しかし,ACE阻害薬群の収縮期血圧降圧度は0.9mmHgとARB群に比べ小さいにもかかわらず,冠動脈イベントはARB群で上昇傾向にあった。このデータをBPLTTCの結果におおよそ当てはめてみるとどうなるだろうか? すると,ACE阻害薬, ARBの両方からの評価において,ONTARGETの成績はBPLTTCのメタ回帰直線上に乗ることが示されたこれはBPLTTCの次期サイクルにおいて実施される予定の個別データに基づく分析ではないものの,ONTARGETの成績がこれまでのACE阻害薬とARBの違いに関するデータの範躊から逸脱するものではなく,BPLTTCに含まれる他の試験と同様,ACE阻害薬のもつ「降圧とは独立した」冠動脈イベント抑制効果を支持することを示す結果である。
追加です。 (ノスカール)
2013-05-28 16:50:10
降圧を超えた効果を証明しようとすると、ここまで血圧が一致しなければならない。

プラセボコントロールのARBの試験では
試験名 薬剤 収縮期の降圧度の差、拡張期の差
SCOPE Candesartan 3.2 1.6
TRANSCEND Telmisartan 4.0 2.2
PROFESS12 Telmisartan 3.8 2.0
NAVIGATOR Valsartan 3.2 1.4
ACTIVE Irbesartan 2.9 1.9
ROADMAP Olmesartan 3.1 1.9

心血管イベントの相対リスクと95%信頼区間は
SCOPE 0.89 (0.76-1.38)
TRANSCEND 0.92 (0.82-1.05)
PROFESS 0.95 (0.86-1.04)
NAVIGATOR 0.99 (0.86-1.08)
ACTIVE 0.99 (0.91-1.08)
ROADMAP 4.94 (1.43-17.06)

ARBでは、降圧を超えた効果どころか、降圧度差にも関わらず、イベントの有意低下が確認されていない。

国内でのバルサルタン4試験では降圧効果がほぼ完ぺきに一致すること、3試験では血圧を超えた臓器保護効果が認められること、残る1試験でアムロジピンと統計学的に同程度の効果があることが、ねつ造を疑われても仕方がないところとなんでしょう。
回答 (世界変動展望 著者)
2013-05-29 02:01:50
私は専門外なので噂は聞きませんが、バルサルタン以外に臨床試験の疑義はないのでしょうか?カンデサルタンで情報提供してくれた人はいましたが。