世界変動展望

私の日々思うことを書いたブログです。

文科省は井上明久事件の第三者調査機関を直ちに設置せよ!

2012-09-08 00:30:22 | 社会

東北大学井上明久事件の第三者調査委員会はいまだにできたという報道がない。この問題は直ちに調査機関を設置し、解決しなければならない。不正の問題は調査しても何もいい事はない、そんなことに労力を費やすなら他の研究に費やすべきだという人はいるかもしれない。

しかし、この問題を放置する損害を考えてほしい。何十億円という無駄な研究費が税金から支出され、できもしないバルク金属ガラスのために多くの人が時間・労力・研究費を浪費してきた。放置するということは、これからもそういう大きな損害をおかす危険性を放置するということだ。放置していい問題では決してない。

井上明久、東北大学、日本金属学会らの名誉を守るという身勝手な理由のために、不正を放置していいということは絶対にない。この問題に関しては東北大学や日本金属学会に任せたのでは自浄作用がないために解決しないのは明白であり、それは多くの人がわかっている。

文科省は大学や学協会の自律性に任せるといって放置しているが、そういう態度は無責任極まりない態度といわれても仕方ないだろう。なぜ、こんな状況になっても第三者調査機関を設置しないのか。文科省はやる気がなく、責任放棄しているとしか思えない。

この問題は直ちに第三者調査機関を設置し、解決しなければならない。文科省は監督責任として直ちにそれをせよ!


裁判の証明度

2012-09-07 00:32:29 | 法律

裁判では証拠をもとに事実認定する。どの程度の証明がされれば認定されるかというと、判例上は「高度の蓋然性」を証明すれば認定される。ただ、実務上は民事は刑事よりやや低い証明度でよいとされている。詳しく説明すると、刑事事件では

「元来訴訟上の証明は,自然科学者の用いるような実験に基づくいわゆる論理的証明ではなくして,いわゆる歴史的証明である。論理的証明は『真実』そのものを目標とするに反し,歴史的証明は『真実の高度な蓋然性』をもって満足する。言い換えれば,通常人なら誰でも疑いを差し挟まない程度に真実らしいとの確信を得ることで証明ができたとするものである。」(最高裁昭和23年8月5日判決)

民事事件ではいわゆる東大ルンバール事件の判例

「訴訟上の因果関係の立証は,1点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく,経験則に照らして全証拠を総合検討し,特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり,その判定は,通常人が疑を差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし,かつ,かつ,それで足りるものである。」(最二小判昭50・10・24 民集29巻9号1417頁)

これだけみると、刑事も民事も同じ証明度が要求されていると考えられます。刑事では「合理的な疑いを容れない証明」とも言われます。通常裁判では自然科学の証明と違って反証が残されており、全く反証を許さない証明がされないと事実認定できないとすると、全く認定できないのでこのように扱われているわけです。ですので、上でいう「疑い」というのは合理的な疑いを指し、合理性のない疑いは含みません。最近最高裁も

「刑事裁判における有罪の認定に当たっては,合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の立証が必要である。ここに合理的な疑いを差し挟む余地がないというのは,反対事実が存在する疑いを全く残さない場合をいうものではなく,抽象的な可能性としては反対事実が存在するとの疑いをいれる余地があっても,健全な社会常識に照らして,その疑いに合理性がないと一般的に判断される場合には,有罪認定を可能とする趣旨である。」(最高裁平成19年10月16日判決)

と端的に示しています。

では、刑事と民事では同じ証明度が要求されるのかというと、実務上はそうではなく、民事の方が若干低い証明度でもいいようです。根拠は様々な民事訴訟の専門書にそう書かれているからです。それなら事実と考えて間違いないでしょう。なぜ違いがあるのかというと、刑事と民事では訴訟目的が違うからです。

刑事は真相の究明だけでなく、人権を守ることも重要な目的です。有罪となれば刑罰という非常に重い制裁が与えられるので、絶対に間違いない判断が要求されます。故に非常に高度な蓋然性を証明する必要があるのでしょう。それに対し民事は私的な紛争を解決することが目的です。当事者間の公平性や弱者救済といった観点で訴訟を行いますから、刑事に比べて緩い証明度でもいいのでしょう。アメリカでは証拠の優越程度の証明度でよいとされているようです。

では具体的な事例で「高度の蓋然性」の証明を見ましょう。

事案
暴力団員の被告人らが被害者の少女に覚せい剤を注射し、被害者は錯乱状態になった。しかし、被告人らは何の救急医療の要請もせず放置し、被害者は死亡。被告人らは保護責任者遺棄致死罪で起訴。被告人らが救急医療の要請をしなかったことと、被害者の死亡との因果関係が争われた。

判決 (最高裁第三小法廷 決定 平成元年12月15日)
上告棄却(保護責任者遺棄致死罪の確定)

判旨
『・・・「原判決の認定によれば、被害者の女性が被告人らによって注射された覚せい剤により錯乱状態に陥った午前零時半ころの時点において、直ちに被告人が救急医療を要請していれば、同女が年若く(当時一三年)、生命力が旺盛で、特段の疾病がなかったことなどから、十中八九同女の救命が可能であったというのである。

そうすると、同女の救命は合理的な疑いを超える程度に確実であったと認められるから、被告人がこのような措置をとることなく漫然同女をホテル客室に放置した行為と午前二時一五分ころから午前四時ころまでの間に同女が同室で覚せい剤による急性心不全のため死亡した結果との間には、刑法上の因果関係があると認めるのが相当である。」したがって、原判決がこれと同旨の判断に立ち、保護者遺棄致死罪の成立を認めたのは、正当である。』

この判例では「十中八九確からしい」ことを「合理的な疑いを超える程度に確実」と考えているようです。専門書によっては「高度の蓋然性=十中八九確からしい」という趣旨で書いてあるものもあります。要するに8割方の証明でいいということです。実務上本当にこの程度でいいのかわかりませんが、「8割方の証明」と記載している専門書がいくつかあるのは事実です。

統計的な検定だと有意水準は1%か5%にとることが多く、2割は高すぎてまずとらないと思いますが、裁判では意外と高いですね。


詐欺的なgooのアクセス表示について

2012-09-06 00:05:27 | Weblog

昨日の記事で述べたが、gooのユニークアクセス数や総ブログ数は実態を示しておらず、詐欺的な印象を受ける。知らない人はアクセス数70、順位3万とみて、

「統計的には全ブログのうち70%以上の人が自分のブログよりアクセス数がない。」
「3万/170万≒1.8%だから、すごく高順位だ。」

などと誤解してしまう人もいるかもしれない。

実際はgooのアクティブユーザー数が約3万人なので、順位が3万というのは最下位に近く、アクセス数も1日平均で一桁の可能性も十分ある。それが、アクセス数70で、上位1.8%と示すのだから詐欺的だ。明らかに実態を反映していない。

gooの言い分としては「アクセス数も全ブログ数もきちんとカウントされているものを表示している。不当表示ではない。」と言い張るに違いない。アクセス数はクローラーのアクセス数でもカウントし、全ブログのうち約98%は活動しておらず、誰にも見られていない、存在していないブログ同然なのに堂々と全ブログ数として表示する。

「アクセス数をよく見せかけて、客を獲得しよう。」

そういうgooの思惑は多くの人がわかるだろう。gooというとNTTレゾナント社の運営。通信の最大手企業ですら、そういう詐欺的な手法をとる。大手だから信頼性があると思ったら間違いで、金儲けのためには手段を選ばず平気で不当なことをやる。

2007年にNTTドコモやKDDIが基本料金半額を大々的に宣伝したが、実は囲い込みの作戦で、半額にする変わりに決まった時以外の解約は高額の解約料を取られる仕組みだった。それを宣伝で言わなかったがため、公正取引委員会から不当表示として厳重注意されたことがある。

重要なのは受け手にとって不当な情報でないことだ。利益のためにgooは上のようなアクセス数や全ブログ数の表示は不当でないと主張するだろうが、そういう不当な判断はやめるべきだ。

思えば国民にとって不利益なのに、研究機関にとってだけ都合がいい業績を水増し表示し、「適切だ!」と開き直る例はいくらでもある。本当にだめだな。


アルファブロガーを目指して

2012-09-05 00:02:01 | Weblog


2012年9月1日のアクセスランキング

訪問者数はユニークアクセス数のことで、gooのユニークアクセス数はこんな数字だが、実態的には絶対にこんなに高くないだろう。この日は1758298ブログ中の94位だが、単純計算で上位0.0053%。この計算では超人気ブログだが、gooのアクティブユーザー数は約3万人と言われているので、実際は100×94/30000 ≒ 0.31 %。これでもかなりの高順位。実際はこの日ほどアクセス数を頂くことは稀で、1年で10回あるかないかくらい。

平常時は700~1000くらいで推移している感じで、調子がいいと1000を超える。お盆の頃とか長期休暇のときは700台のアクセスで、順位は300~600番くらい。それでもアクティブユーザー中上位1~2%。


ブログの1日の平均ユニークアクセス数 [1]

gooのアクセス数は信用できないので、推定になるが、ブログの平均アクセス数の調査によると、上位1~2%は500~1000程度。2%程度の順位もあることを考えると、この中の下の方であろう。そう考えると、私のブログの1日あたりの平均アクセス数は500より少し高いくらいだろう。500以上のアクセスをとっているのは全ブログ中で1.7%しかないので、それでも高順位。

1日の平均ユニークアクセス数が500というのは、そんなに高い印象を受けないが、上位1.7%以内と言われると、高いアクセス数という印象を受ける。有意水準は5%にとることも多く、5%以下の確率は「ほとんどないこと」と扱う統計もあるので、1.7%という数字は「ほとんどない珍しいブログ」と考えてもいいかもしれない。

実際はこれくらいのアクセス数をとってるサイトはよく見るし、めったにないという感じではない。それは多くの人がそういうサイトにばかりいくから、珍しいと思わないのかもしれない。統計的に考えると、そういうサイトはほとんどなく、大部分はあまりアクセス数がないサイトだ。

私は将棋が好きなのでgooブログを使う棋士と比較すると、渡辺明ブログは最近の彼のコメントから考えると、gooのユニークユーザー数が5000~10000くらいだろう。1万も超えているかもしれないが、絶対に2万まではいってないだろう。それでも比較にならない。有名人だから当たり前か。初の東大卒の棋士として有名な片上大輔六段のブログ([2])のユニークアクセス数は自分が見た限りでは800くらいで、私のブログと同じか少し低いくらい。

渡辺明のような将棋界を代表する棋士と比べると、知名度の関係でまだ勝てないが、一般棋士ならいい勝負又は勝っているという人はいるようです。

このブログも成長したものだ。この調子でアルファブロガーになりたいものです。

参考
[1]リサーチバンクの調査 2010.9
[2]daichanの小部屋


業績リストの論文数水増し例2 - 獨協医大の事例

2012-09-04 02:57:56 | 社会

獨協医大の服部良之は改ざんにより諭旨解雇となった。この事件では科研費が使われ、申請の際の業績リストに二重投稿論文等があったという[1]。獨協医大は不正が行われたにも関わらず科研費を返還しないと公言し、返還があった事実も確認されていない。

現在までマスメディアでは全く問題視していないが、業績審査をする際にこのような水増し業績に基づいて評価をするのは非常に問題だと思う。評価を錯誤におちいらせ、科研費を得るのは詐欺罪にも該当する。

研究者や研究機関はやりたい放題で、二重投稿論文等で水増しした業績リストで申請しても「不正ではない」と開き直っているが、不適切なものはきちんと不適切と指摘し、改善をしなければならない。研究費は貴重な税金から支出されているのだ。そのことを忘れてはならない。

業績リストの作成にはきちんとルールを定めるべきだ。二重投稿論文等を載せても不正でないとか、やりたい放題の現状は必ず改善しなければならない。

それにしても、なぜマスメディアはこういう問題を報道しないのだろう?上でもいったように詐欺的な手法で評価や研究費を得ているのは、国民にとって大きな損失だし、決して放置していい問題ではない。

昨年の不正経理の調査のように研究機関の独自調査に任せると保身のために不公正極まりない調査結果ばかり出るだろうが、第三者機関が積極的に調査したら、多くの研究機関で不適切極まりない調査結果が出るだろう。

あまりにでたらめだ。良識が完全に欠如している。

きちんと調べれば、そういう深刻な実態がわかるはず。その認識からはじめて改善の一歩が踏み出されるだろう。

参考
[1]服部良之グループの科研費申請の際の業績リスト


藤井善隆、麻酔学会を退会、除名不可能、しかし永久追放に!

2012-09-03 18:30:25 | 社会

『論文捏造:元准教授が麻酔学会退会 除名処分、不可能に

 麻酔学に関する172本の研究論文を捏造(ねつぞう)したとされる元東邦大准教授、藤井善隆医師(52)が、所属する日本麻酔科学会(森田潔理事長)を退会していたことが1日分かった。同学会は論文捏造問題を受けて、最も重い「除名」処分を検討していたが、藤井医師の退会により処分ができなくなった。

 同学会の調査特別委員会は今年6月末、藤井医師が1991~2011年に国内外41の専門誌に発表した論文212本のうち少なくとも172本にデータ捏造の不正があったとする調査結果を公表。学会としての処分を8月中に出す方針で検討していた。

 調査委によると、藤井医師は7月中旬に退会届を提出。8月24日の同学会の理事会で検討したが、定款などに照らして受理せざるをえないとの結論になった。ただし「麻酔科医および研究者の信用を失墜させ、国民への安全な医療提供にも悪影響を与えた」として今後、藤井医師の再入会を認めない「永久追放」とすることで一致した。捏造と認定した172本の論文の共著者となっている学会員12人に対する処分は引き続き検討する。


 藤井医師は今年2月、勤務していた東邦大で書いた論文に研究手続き違反などの不正があったことを認め、同大から諭旨退職処分を受けた。一方、同学会が「捏造」と認定した調査結果については全面否定している。

 調査委の委員長を務めた澄川耕二・長崎大教授は「(自主的な退会は)本人が学会の調査結果を認めたためととらえている」と述べる一方、「過去には除名した会員を再入会させた例もあり、永久追放はある意味では除名より重い」と話した。学会員資格を失っても麻酔科医としての診療行為は続けられるという。

 藤井医師の論文をめぐっては、今年4月に国内外の23専門誌の編集長が不正の疑いを指摘し、関係する大学や病院など7機関を対象に同学会が調査していた。不正が認定された論文数としては世界最多とみられる。【久野華代】[1]』

『元会員藤井善隆氏の論文捏造に関する理事会声明

【2012年08月30日】


 日本麻酔科学会は,本年3月8日に表面化した本学会会員である藤井善隆氏(当時)の論文捏造疑惑問題に関し,「藤井善隆氏論文調査特別委員会」を立ち上げ,論文内容,生データ,実験ノート等の各種資料の精査や研究実施施設における研究関連記録の調査,藤井善隆氏本人並びに関係者への面接調査により事実関係を調査した結果,調査対象とした原著論文212編のうち,捏造なし(論文再現可能な生データがあり,対象数が確認できるもの)3 編,捏造あり(対象数,実験条件,薬物投与記録のいずれかを満たさないもの)172 編,その他(捏造の有無を判断するに足る情報が得られなかったもの)37 編などとする調査結果を纏め,これを本年6月29日に公表いたしました.
 この調査結果を受けた本学会としては,同会員に対して厳正なる処分手続きを行うべき重大事項であると認識し,定款にもとづき,社員総会にて同会員の除名決議を求めるべく検討を始めておりました.
 しかしながら,その後に同会員より本学会に対して退会届が提出され,社団法人に関する法律および定款に照らし合わせた結果,本学会としてはこれを受理せざるを得ないとの判断をいたしました.
 この結果,藤井善隆氏は退会いたしましたが,本学会としては,本邦の麻酔科医および研究者全般の信用を多大に失墜させ,国民への安全な医療提供にも多くの悪影響を与えた同氏には,医師,研究者としての資格はないと判断し,永久に本学会への再入会を認めないことと致しました。関連諸団体,施設におかれましても,このような案件を二度と繰り返さないためにも,藤井氏の今後の活動に対してはご留意をしていただくよう,これら事実を公表して,強く要請を致す次第です.
 本学会は,今後,研究活動の不正行為を防止するための教育,啓発活動を継続的に実施し,再発防止に努めることを理事会で確認し,ここに声明として明らかに致します.


2012年8月25日
公益社団法人 日本麻酔科学会 理事会』

麻酔学会は藤井を除名にできなかった。不正を犯した者が懲戒解雇になる前に辞職するのと同じで藤井の退会は形式上不利益処分を受けたことを避けるためのもの。退会や辞職を認めない団体もあるが、定款上では仕方ないのだろう。ただ、永久追放される点では除名でも変わりないので除名にならなかったとはいえ、重い不利益を被る点では変わりない。本来なら除名にして永久追放すべきなので、定款の不備はまずい。そういえば、諭旨解雇で済ませた東邦大はきちんと懲戒解雇に訂正するんだろうか。こんなやつに退職金を払うなんてバカバカしすぎる。そもそも東邦大は生データの不存在を立証しているのに捏造を認定しないから、こういうとんでもないことが起きたのだ。退職金を返還できない場合は学長らが責任を持って自腹から返還してほしい。

私は藤井から医師資格や博士号を剥奪すべきだと思う。こういう人物は医療活動もさせてはならない。麻酔科学会も藤井は「藤井は医師、研究者としての資格はない」「関連諸団体、施設においても藤井の活動に留意せよ(=藤井は極悪人だから、相当の扱いをせよ。)」と述べている。博士号剥奪は実現すると思うが、医師の資格剥奪もぜひ実現してほしい。

これで服部良之や川上明夫のように、研究機関をクビになってもどこかの病院でしゃあしゃあと医師を続けていくようでは制裁が軽すぎる。

参考
[1]毎日新聞 web 2012.9.1
[2]日本麻酔科学会の公表 2012.8.30


ハーバード大、期末試験で100人以上が不正行為!

2012-09-02 00:30:17 | 社会

『ハーバード大、期末試験で100人超不正か 酷似答案
2012.8.31 14:20 [米国]

 米ハーバード大は30日までに、春学期の期末試験に不自然な答案があり100人以上が不正行為に関わった恐れがあるとして調査を始めた。言葉遣いが全く同じ長い文が用いられ、答案を共同で作ったり、盗用したりした疑いがあるという。AP通信が報じた。

 問題になっている試験は自宅で資料に当たることが許されるリポート形式で、提出された答案を調べていた大学スタッフが酷似部分に気づき、5月に担当部局に報告した。同試験は他の学生との相談は認めないルールの下で実施された。受験した250人の約半数に不正の疑いがある。

 現在、大学側が学生を呼び出し、調査を進めている。不正と判明した場合、最も重い処分は1年の停学という。(共同)[1]』

よく大学のレポートでこういうことをやる学生がいますが、試験でやるのは珍しいでしょうね。停学1年は重い処分です。

参考
[1]MSN産経ニュースより 2012.8.31 オリジナルは共同通信の記事だろう。


材料の機械的性質の捏造、改ざん - 東北大学井上前総長事件

2012-09-01 01:30:27 | 社会

いつもデータの使い回し関連の不正ばかり扱っているので、今回は違う不正疑惑を紹介します。題材は井上明久東北大前総長が行った材料の機械的性質に関する捏造・改ざんです。昨年6月24日にApplied Physics Lettersの論文(以下APL論文)が二重投稿を理由に撤回となりました。井上はこの論文の筆頭著者です。

この論文は以前に重複データを別の実験条件に変更して、別実験の結果と偽装した捏造があったことを紹介しました[1]。実はこれだけでなく材料の機械的性質の捏造、改ざんもあったのです[2]。

(1)全ひずみ量、ヤング率の改ざん

結論からいうと、APL論文に記載されている材料の全ひずみ、ヤング率は以下のように改ざんされています。


図1 全ひずみ量、ヤング率の改ざん (一番上の行の値が真値)[2]


この図は何かというと金属に圧縮試験をしたときの結果の一部です。全ひずみ量というのは圧縮して金属が破断するまでに基準長の何%ひずんだかを示す量で、ヤング率は弾性変形([3])で単位ひずみ量あたりの応力のこと。ヤング率というのはフックの法則のばね定数と同じものです。

こういう全ひずみ量やヤング率はどう求めるかというと、材料に圧縮試験をした時の応力ひずみ曲線から求めます。


図2 材料の応力ひずみ曲線とそれから求められる全ひずみ量、ヤング率 [2]

全ひずみ量もヤング率も求め方は簡単で、まず全ひずみ量は破断点からひずみ軸に垂線をおろし、その交点と原点との長さが全ひずみ量です。図から、ガラス材(as-cast)が約1.3%、準結晶材(quasicrystalline)が約1.7%と求まります。

ヤング率は弾性領域の比例定数を求めればよく、ガラス材が約130GPa、準結晶材が約150GPaと求まります。

しかし、論文記載の値はガラス材が全ひずみ量2.2%、ヤング率85GPa、準結晶材が全ひずみ量約3.1%、ヤング率88GPaであり一致しません。なぜ一致しないのでしょうか。それは後に考察します。今は論文記載の値が通常求められる値と一致しないということを理解してください。

論文の値はどちらも展性が大きく、ヤング率が低い方へ変っています。これは後の考察で重要です。

(2)0.2%耐力の捏造・改ざん

APL論文に記載されている材料の0.2%耐力([4])も以下のように捏造、改ざんされています。


図3 0.2%耐力の捏造 (一番上の行の値が真値) [2]

図4 材料の応力ひずみ曲線とそれから求められる0.2%耐力 [2]

0.2%耐力の求め方も簡単で、応力ひずみ曲線から求めます。ひずみ軸で原点から0.2%だけ正の点から弾性領域の応力ひずみ曲線に平行に線をひき、曲線と交わった点の応力が0.2%耐力です。図4のガラス材(左側)は破断点から真下に向かって線が延びていますが、実測値なら通常はひずみ軸まで垂直に線が延びるにも関わらず、そうなっていないので、これはただの補助線と考えられます[2]。

このやり方に従って0.2%耐力を求めると、ガラス材は求めらず、0.2%耐力は存在しません。準結晶材は目視では1800~1860MPaの間に見えます。

しかし、論文にはガラス材が1750MPa、準結晶材が1780MPaと記載されており、一致しません。なぜ一致しないのでしょうか。それは後に考察します。今は論文記載の値が通常求められる値と一致しないということを理解してください。

(3)適切にデータ解析する意思がない

以上で説明したように、APL論文のデータは通常求めた値と一致しません。これは単純ミスで生じたと考えることはできないと思います。なぜなら、上で求めたデータの求め方は簡単で、きちんと解析をやればまず間違いません。ミスでこれだけたくさん上のように間違うことは難しいです。特にガラス材の0.2%耐力は応力ひずみ曲線がほぼ弾性領域しかないのは一見してわかるので、0.2%耐力が求められないことは一見しただけでわかったはずです。

普通に考えて、著者が論文掲載の応力ひずみ曲線から適切にデータを求めようとしたとは思えません。

解析を実施せずにデータを捏造したか、求めた値を改ざんしたと判断されます。応力ひずみ曲線のデータを違うデータと取り違えたのではないかと考える人もいるかもしれません。確かにこの事例だけみると、その可能性はないとはいえないでしょう。しかし、青木清氏(北見工業大学名誉教授)らによると、同じ誤りが6編もの論文に共通しているそうです[2]。さすがにそれだけの論文で同じ不正疑惑があると、過失によるデータの取り違えと考えるのは合理的ではありません。

著者はデータを捏造又は改ざんした可能性が高いです。

(4)著者にとって有利な方向へ変更

(1)でガラス材、準結晶材の全ひずみ量は展性が大きい方向へ変更され、ヤング率は低い方向へ変更されていると述べました。一般にガラス材、準結晶材は硬く、脆く、延性が乏しいという欠点があります[2]。展性も乏しいのでしょう。展性が大きい方向への変更はこの欠点を改善する効果を出しています。

また金属ガラスは低ヤング率という特性があります。しかし、通常のやり方で求めたヤング率は通常の結晶金属のものとあまり変わりません[2]。論文記載のヤング率は「金属ガラスは低ヤング率という特性を持つ」という方向と合致し、有利な効果を出しています。

つまり、論文記載の全ひずみ量、ヤング率は著者にとって有利な方向での変更です。しかも、同じ変更が6編もの論文で共通しているそうです[2]。

本当に過失ならミスはランダムで規則性はないはずです。これほど有利な方向にだけ偶然間違うのは不合理です。「有利な結果を発表するためわざと虚偽の値を発表した」と考えるのが至極当然です。

(5)結論

最終的には第三者調査機関が判断することになりますが、総合的に考えてAPL論文は捏造論文と考えざるを得ません。客観的な側面から考えて、著者は適切なデータ解析をする意思があったと思えないし、常に有利な方向で捏造まがいのデータを作成しており、作為がなかったとは考えられません。

それだけでなく、キャプションで実験条件を変更してデータを使いまわす捏造、二重投稿など不正がたくさんあります。APL論文は極めて悪質な不正論文で、とても酷いあり様です。とてもまっとうな研究者が書いた論文とは思えません。以前に井上に対する怒りを記事にしたのは、こういう理由です[6]。

「論文のタイトル、著者、実験条件を変えて既発表論文を別の論文に見せかけよう。」
「優れた材料ができたように偽装しよう。」

客観的証拠から、著者のそういう意思を感じます。おそらくこれは多くの人にとって同じではないでしょうか。そういう意思や著者の欺網は常識的思考力があれば誰でも見抜けると思います。そういう当たり前の判断を東北大学や日本金属学会がしていれば、この問題はとっくに解決していたでしょう。

しかし、ただでさえ不正の認定に関しては非常に消極的で、常識的には不正でもわざと過失で済ますことも珍しくない研究機関にとって、日本学術界の重鎮に対する調査や裁定は、どうしても不正認定を避けるという方向でしか動かなくなりました。匿名投書に対する不公正な調査、不条理な告発握りつぶしはその表れに他なりません[6][7]。

これほど不正や所属機関や学協会の不公正さが明白でも、一向に文科省等は第三者調査機関を作る動きを見せません。あまりに無責任です。

一刻もはやく第三者調査機関を作って客観的、公正、厳正、積極的に不正の調査をし、事態を改善する必要があります。

参考
[1]世界変動展望 著者:"上下逆などの細工ありの使い回し例 - 東北大学井上明久前総長事件" 世界変動展望 2012.8
[2]青木清氏らのJSTへの告発文 2012.3.22
[3]弾性変形:「外力を受けて変形した物体が、外力をとり除くと完全に元の形に戻るような変形。」(大辞泉より) 弾性変形は応力とひずみが比例関係にある。
[4]0.2%耐力:除荷した後に残る塑性ひずみが0.2%(0.002)になる時の応力のこと[5]。明確な降伏応力がない材料で替わりに用いる値。
[5]CAE技術者のための情報サイト 2012.8.31閲覧
[6]世界変動展望 著者:"東北大学は井上明久総長を即刻懲戒解雇せよ!退職金を絶対に支給するな!!" 世界変動展望 2012.3.28
[7]世界変動展望 著者:"結論ありきの調査委員会か?- 井上明久不正事件、匿名投書への対応" 世界変動展望 2012.6.28
[8]世界変動展望 著者:"研究機関のあらゆる不正を調査する第三者調査機関を必ず設置せよ!" 世界変動展望 2012.5.30