「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「木瓜の初花」

2013-01-08 00:33:03 | 和歌

 正月早々の散歩で、木瓜の初花に出合った。

 寒気の厳しい正月であったが、木瓜の花は寒さをも厭わず、道端の陽だまりに咲いていた。生憎カメラを携えていなかったので、その姿を瞼に焼き付けて帰ったが、初々しい木瓜の花を読者の皆さんにご紹介出来ないのは、誠に残念だった。

 

 翌日の散歩には、バカチョンカメラを手に持って門を出たら、虚庵夫人がすかさず
「あら、昨日の木瓜の花を写しに行くんですの?」との問いかけがあった。虚庵夫妻の散歩コースは、暗黙裡に毎回ルートを変えているので、そんな心算はなかったが、昨日の木瓜の花が瞼に浮かび、それも一案だとの思いが頭を過ぎった。

 ところが習性とは怖ろしいもので、それ程の未練がありながら、足は別のコースを歩み始めていた。

 正月の朝寝・朝酒・お節料理で、些かエネルギー過剰だった虚庵夫妻は、何時の間にか最も過酷なコースを歩んでいた。
過酷とは云え、平地の住宅街から高低差百メートル足らずの峠道を登り、頂上から東京湾を遠望し、ひと山を越えて隣町に至る片道七・八キロ程の道程だ。
「くたびれたら電車で帰れる」との気安さもあって、時々辿る散歩道だ。

 そんな途上で、図らずも木瓜の初花が待ち受けていて、感激だった。

 この木瓜の木は、虚庵居士の背丈を遥かに凌ぐ大きさであったが、疎らな花と共に、まだ固い莟も沢山控えていて、「どうぞ又遊びにお出で下さい」と語りかけている風情であった。


           山越えて辿り来ればじじ・ばばを

           待ちにけらしも木瓜の初花


           寄り添いて木瓜の初花咲く様は

           無邪気に笑ふ乙女子思ほゆ


           枝先の一輪の木瓜と語らひぬ

           気品を湛える清しき乙女と


           未だ固き莟の数々告げるかな

           またのお越しをお待ちしますと