「うつろ庵」の裏手に、粋な散歩道が2キロ程も連なっている。
その散歩道に「花水木」が、「ひょうきんな」表情で咲き始めてから、かれこれ一か月もの日数があっという間に過ぎた。カメラに収めたまま忙しさに紛れてご紹介するのが遅れたので、花水木からブーイングを受けそうだ。
本来の花水木の綻びは、この写真を写してからもっと後のことだが、本物の花水木の花は小粒で目立たぬので、この萼が開くのが開花だと理解されているようだ。鮮やかなピンクの萼も、真っ白な萼も花びらに見えるから、無理もない誤解だが、真に罪作りな花水木だ。ピンクや白い萼が、「ひょうきんな」恰好で中に守っている緑の小粒が、本来の花水木の莟だ。
3・11以来、東日本大震災と福島原発事故の関連報道が続き、虚庵居士もそれに翻弄されてきた。 原子力に携わってきたお仲間は、悔しさに歯ぎしりしつつも、些かなりとも収束のためにお役に立ちたいと念じ、情報交換や提言の取りまとめに時間を忘れて取り組んできた。虚庵居士もその中の一人だが、 唯一の原爆被災国でありながら、放射能・放射線について何ら学ぶ機会がなかった市民の皆さんが、 放射能に怯え放射線被ばくの不安に駆られているのは、見るに忍びないものがある。
たまたま生涯学習センターからの要請で、「低炭素化社会と原子力発電について」の講演をお約束していたが、今回の福島原発事故を踏まえて、急きょテーマを「東日本大震災 原発事故と放射能」に切り替えて、一昨日できる限る平明なお話をさせて頂いた。聴講希望者が募集数をはるかに超えたので、抽選で数を絞ったとうかがい、聴講できなかった皆さんに申し訳ない思いで一杯だ。
事態は徐々に落ち着きつつあるが、ここに至って政府や東電の記者会見での発言に、ちぐはぐなところが散見されるのは、何故だろうか。本来ならば、技術情報も指示した事実関係も、その間に食い違いや齟齬があってはならぬはずであるが、誠に由々しき事態である。事故の収束と市民のご理解に、些かなりともお役に立てればと努めて来たが、残念だ。今回のような国難の時こそ、関係者相互の理解や情報開示には、何よりも透明性が求められるところだ。
花水木の萼が花びらだと騙されるのは、花の世界に限った笑い話で済ませるが、原子力事故に関してはあってはならぬ齟齬だ。関係者は改めて襟を正して貰いたい。
花水木の花綻べば笑ふかも
踊るや花びら ひょうきん者かな
花びらと思ふは萼ぞと聞かされて
腕で頭を抱える友かな
粒々の小粒の莟がやがて咲き
くれない実る秋をぞ偲びぬ
あまたなる市民は集いぬ原発の
事故をし憂い不安を抱きて
もろびとの真摯な眼差しわれ見つめ
ひと言毎にうなずく彼らは
納得と安らぎを得るしるしなれ
ほほえむ挨拶 残して帰るは