「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「珊瑚樹の新緑と ひと言」

2011-05-01 15:21:07 | 和歌

 「うつろ庵」の珊瑚樹の生垣が、若葉で煌めいている。

 狭い敷地だが、東・南・西の三方が珊瑚樹で囲われているので、この時節の「うつろ庵」はご近所でも羨望の的だ。東側の生垣の足元には白つつじが連なり、南側は門を挟んで両側に、珊瑚樹を背にした大紫つつじが咲き乱れている。西側は窓の日除けを兼ねて、珊瑚樹の背丈を軒下まで伸ばしているので、日に透ける新緑のカーテンと木漏れ日が、リビングに至福の空間を提供してくれる。

 この時節の珊瑚樹は古い葉を振り払い、枝々は新緑を一斉に芽吹き、日に日に目覚ましい成長を遂げる。それ故に艶のある新緑は太陽に煌めき、皆さんの羨望の的になる。





 しかしながら、油断すると枝々はたちまち育って、生垣の枝葉は密に重なり盛り上がり、窒息状態になる。更に手を拱いていると背丈も忽ち徒長する。「うつろ庵」は幸にして三方が道路ゆえ、脚立を立てて剪定する作業は困らないが、切り取った枝葉の量は膨大な量になって、処分に困惑することとなる。そんな大げさな剪定作業はご免だ。

 そこで、若葉が芽吹いて間もないうちに、余分な枝葉を摘み取るのが虚庵居士の毎朝の日課だ。
芽吹いて間もない枝葉は柔らかいので、鋏を使うまでもなく指先で摘み取れるのだ。ものぐさ爺さん流の剪定術だ。珊瑚樹の生垣を「透かし造り」に保つのは並大抵ではないが、道行く皆さんやご近所の皆さんのひと言が、ご褒美代わりである。

 この時期になると、新入生や新入社員など新たな環境に馴染めないで、戸惑う若者が出始める。いわゆる5月病だ。家族や周りの人々のほんのチョットした気配りで、彼らはどんなにか救われる筈だ。虚庵居士のような爺様ですら、「道行く人のひと言」がご褒美になり、励ましを受けるのだから、敏感な若者へのひと言は素晴らしい「良薬」になるに違いあるまい。身近な新人に、ほんのチョットしたひと言を、話しかけてやりたいものだ。






            咲き誇る花にはあらねど緑葉の

            煌めく姿に見惚れぬるかも


            珊瑚樹の若葉茂れば指先で

            摘み整えるは愛撫ならむや


            ご褒美は道行く人のひと言ぞ
            
            日毎の芽摘みに珊瑚樹応えて


            子供らにひと言かけましひと言は

            子らを励まし支えになるらむ