川端裕人のブログ

旧・リヴァイアさん日々のわざ

旅する名前

2007-09-29 17:49:52 | ひとが書いたもの
旅する名前―私のハンメは海を渡ってやってきた旅する名前―私のハンメは海を渡ってやってきた
価格:¥ 1,890(税込)
発売日:2007-08
紹介したい本がたくさんある。ゆえあって、たくさん読んでいるからなのだけれど……。さっき読み終わった、車育子(ちゃ・ゆっちゃ)さんの本。
ゆっちゃさんは、ゆーさんこと岸裕司さんの「ワイフ」で、何度もお会いしたことがある。その縁でご恵贈いただいた。


ゆっちゃさんのハンメ(おばあちゃん)についての記述から始まって、みずからハンメになった「今」まで、内省的な文章で綴られている。
それが、響く。
ゆっちゃさんは、「名前」を旅し、また、「国籍」を旅する。
それにしても、「国籍」の違いというのは、日本という国において社会において、かくも重たくことあるごとに、不自由・不都合を生じるのものか。
そのことを訴えるのを主眼とした記述ではないだけに、しんしんしみてくる。
そりゃあ知識としては知っているのだ。けれど、生きられた体験として語ってもらったことはないなあ、と気づいた。


後半、ゆーさんが登場して、秋津コミュニティのことも出てくるので、「学校を基地に」を裏から読むというのも可能。和田中の藤原校長にいわせると、岸裕司はジョン・レノンなので、その背後には、こういうヨーコがいたのだな、と。
ちなみに、ゆっちゃさんに言わせると、秋津コミュニティのキモは、「地域の生涯学習と学校教育を、学校開放でマッチングさせると、地域も学校も家庭も豊かになる」だ。
おっしゃる通り。
でも、この本の価値はそういう部分じゃないな。


子育てについて述べているあたりで、息子さんが機関車トーマスが好きだった話が出てくる。
その瞬間に、ぼくの子育て体験にもつながって、ぴしっと一本の線がつながった。


人に勇気を与えてくれる本だと思う。
癒やすわけでも鼓舞するわけでもなく、このような人(たち)と肩を並べ同じ時代を生きているのだということを、あらためて感じさせてくれる。



Farewell Summer

2007-09-29 11:33:00 | ひとが書いたもの
たんぽぽのお酒 (ベスト版文学のおくりもの)たんぽぽのお酒 (ベスト版文学のおくりもの)
価格:¥ 1,890(税込)
発売日:1997-08

もうすぐ、続編の「さよなら僕の夏」が同じ訳者・同じ出版社から出ます。これはちょっとした「事件」。
老境の作家があらためて描くダグラス・スポールディングに乞うご期待。
ゆえあってゲラを読んだので、ここで注意を喚起しておきますね。
「たんぽぽのお酒」を未読の方は、この機会に(今のうちに)ぜひ。