旅する名前―私のハンメは海を渡ってやってきた 価格:¥ 1,890(税込) 発売日:2007-08 |
ゆっちゃさんは、ゆーさんこと岸裕司さんの「ワイフ」で、何度もお会いしたことがある。その縁でご恵贈いただいた。
ゆっちゃさんのハンメ(おばあちゃん)についての記述から始まって、みずからハンメになった「今」まで、内省的な文章で綴られている。
それが、響く。
ゆっちゃさんは、「名前」を旅し、また、「国籍」を旅する。
それにしても、「国籍」の違いというのは、日本という国において社会において、かくも重たくことあるごとに、不自由・不都合を生じるのものか。
そのことを訴えるのを主眼とした記述ではないだけに、しんしんしみてくる。
そりゃあ知識としては知っているのだ。けれど、生きられた体験として語ってもらったことはないなあ、と気づいた。
後半、ゆーさんが登場して、秋津コミュニティのことも出てくるので、「学校を基地に」を裏から読むというのも可能。和田中の藤原校長にいわせると、岸裕司はジョン・レノンなので、その背後には、こういうヨーコがいたのだな、と。
ちなみに、ゆっちゃさんに言わせると、秋津コミュニティのキモは、「地域の生涯学習と学校教育を、学校開放でマッチングさせると、地域も学校も家庭も豊かになる」だ。
おっしゃる通り。
でも、この本の価値はそういう部分じゃないな。
子育てについて述べているあたりで、息子さんが機関車トーマスが好きだった話が出てくる。
その瞬間に、ぼくの子育て体験にもつながって、ぴしっと一本の線がつながった。
人に勇気を与えてくれる本だと思う。
癒やすわけでも鼓舞するわけでもなく、このような人(たち)と肩を並べ同じ時代を生きているのだということを、あらためて感じさせてくれる。