今書店に並んでいる、文芸春秋2007年10月号 「変な国・日本の禁煙原理主義」 というタイトルの対談で、養老孟司氏・山崎正和氏が、いろいろ述べているらしい。禁煙学会が公開質問状(http://www.nosmoke55.jp/action/0709bungeisyunju.pdf)を出している。
対談の内容はだいたい想像つくのだけれど、公開質問状をみていて、ふと意を得たりと思ったところ。
これは、まさにその通り。
疫学批判をする人が、タバコの害について印象を弱めるような疫学研究については大喜びでとりあげる。たとえば、パーキンソン病やアルツハイマーを抑えるのに効果がある、とか。でも、たいていそういうのは喫煙の害についてよりも、ずっと証拠の薄い疫学研究であって、場合によっては、もう否定されてしまっているものもある。でも、とてもうれしそうに、「タバコが健康によい!」と言いたがるのだよなあ。
疫学の土俵に乗るなら、こういうわずかな「効用」をのべるとどうじに、疫学があきからにした喫煙の諸々の害についても、ちゃんと受け止めて議論すべき、というのが、ぼくがいつも思っていることで、そのあたりが意を得たり、だったわけです。
ちなみに、アルツハイマーについては、今は、たぶん「関係ない」という結論だし、パーキンソンも喫煙が予防しているのではなくて、喫煙が交絡要因(真の原因ではない)というのが、一般的なとらえ方だと認識しているのですが、とすると、こ文藝春秋の対談は、正統な疫学研究をインチキといい、確立していない疫学研究をさも真実のようにのべる、うさんくさい議論ってことになりますね。
対談の内容はだいたい想像つくのだけれど、公開質問状をみていて、ふと意を得たりと思ったところ。
3. 疫学に信用はおけないとおっしゃっておられますか?、対談中に2件の疫学テ?ータ をもとに、こ?自分の主張を補強されておられる箇所か?あります。疫学には良い疫学 とタ?メな疫学の二種類か?あるのて?しょうか。そうなら、それはと?こて?見分けるのて?しょ うか。お教えくた?さい。
これは、まさにその通り。
疫学批判をする人が、タバコの害について印象を弱めるような疫学研究については大喜びでとりあげる。たとえば、パーキンソン病やアルツハイマーを抑えるのに効果がある、とか。でも、たいていそういうのは喫煙の害についてよりも、ずっと証拠の薄い疫学研究であって、場合によっては、もう否定されてしまっているものもある。でも、とてもうれしそうに、「タバコが健康によい!」と言いたがるのだよなあ。
疫学の土俵に乗るなら、こういうわずかな「効用」をのべるとどうじに、疫学があきからにした喫煙の諸々の害についても、ちゃんと受け止めて議論すべき、というのが、ぼくがいつも思っていることで、そのあたりが意を得たり、だったわけです。
ちなみに、アルツハイマーについては、今は、たぶん「関係ない」という結論だし、パーキンソンも喫煙が予防しているのではなくて、喫煙が交絡要因(真の原因ではない)というのが、一般的なとらえ方だと認識しているのですが、とすると、こ文藝春秋の対談は、正統な疫学研究をインチキといい、確立していない疫学研究をさも真実のようにのべる、うさんくさい議論ってことになりますね。
と、病に倒れた喫煙者と話していると思います。
まして普段論理派っぽい看板を掲げている方たちにしてこれは…
ちゃんと読んで、もしも、訂正すべきところがあったら、訂正する予定。
ところで、いま『禁煙ファシズムと戦う』のK氏とメールのやりとりをしています。疫学、科学についてのデタラメなつまみ食いの繰り返しに呆れているところです。
そのうちどこかに発表できるといいのですが。
ご心労(?)、察します。
また、ワイネフさんのねばり強さに期待いたします。
>やはり「大気、安静、栄養」がいちばん大事なのです。こんな話もあります。日本女性の寿命は大正九年を境に伸び始めているのですが、長い間その理由は判っていませんでした。それが数年前、建設省元河川局長の竹村公太郎氏が研究して、その時期に水道の塩素消毒が始まっていることを突き止めた。水が清潔になって、乳幼児の死亡率がぐっと下がり、女性の健康に好影響を与えていたのです。
のことでしょう。 「大気、安静、栄養」が一番大事だというのは、まさに疫学です。 塩素消毒と交絡している要因が多々ありそうですがねえ。
それと養老さんや養老さんの事務所は、今回に限らず、一切問い合わせや反論には答えず、「質問状」が来ても捨てるだけなんだそうです。
http://news.livedoor.com/article/detail/3311101/
非常に大きな問題を含んでいて、しかもこのように言いっぱなしの場合は、私たちはどのように整理したらいいのでしょうかね。養老さんは、どのような研究者としての活動とは全く関係ないし、基礎知識もないのに、世の中からは研究者・医学者として見なされているからです。いろいろと考えさせられました。
理解をしていないのに議論の土俵に上がっちゃいけません。このへんは何とかならないかな~といつも思います。
禁煙学界にしろ養老氏にしても同じです。疫学的データのよると~疫学は信用ならん~って君ら疫学についてわかってないだろう、と。むしろわかっていないからこそ『都合の良いデータを持ってくる』ことが可能になるわけです。
疫学について記事を書くならば最低限、濃度や測度の理論、分布過程などはわかっていて欲しい。
リヴァイアさんの記事にもその兆候が見られて
たいていそういうのは喫煙の害についてよりも、ずっと証拠の薄い疫学研究であって
とありますが、どのあたりが証拠が薄いと考えるのかが記載されていません。単に統計を取った機関の権威の大きさなどではお話にならないわけです。
インターネットは進化していますから論文のタイトルぐらいは誰でも検索できます。それを根拠として持ってくるぐらいのやる気は欲しいということです。
冒頭の公開質問状のような揚げ足の取り合いは見ていてくだらないの一言に尽きます。
これでは本場の疫学研究者が議論に参加しようとは思いません。
zusammenさん、そうですか、養老先生は、質問状が来ても捨てちゃうのですね。切ないです。
sssさん。数学を生業に、ということですので、よい疫学のテキストを読まれると、ぼくなどよりもよほどすんなり、疫学について理解できるのではないでしょうか。統計学は疫学のキモですが、「それだけ」ではないようなので、ぜひ、勉強された上で、またご意見をうかがいたいです。
現時点でおもしろく感じたのは、ぼくのエントリの中の「弱さ」を指摘いただいたのは、納得できるとして(なにしろ、ここで論陣を張るつもりはまったくない、へたれな議論ですから)、sssさん自身が疫学を理解しないまま、疫学のエッセンスについて語ろうとしているように感じられることです。
非常に危うい議論されていると思います。ぼくに対して(あるいは、公開質問者に対して)おっしゃったことが、そのまま自分に返ってくるわけですから。
ところで、タバコと肺がんの問題は、こんな状況が共通認識になる前に、ガッチリと証明されてしまっていました。1960年代初めです。つまり、この問題に統計学の助けはいらないのです。Fisherがタバコ肺がんの問題に関して誤ったのもこの点だと思っています。論理とか科学の点でFisherは誤ったと思っています。
私はこれだけはっきりした問題だと疫学知識さえもほとんどいらないと思っています。呼吸器内科・外科にいれば誰でも気づきます。実際最初の研究を仕上げたWynderは疫学知識などほとんど無かったわけです。医療現場にいなくっても、注意深く親戚や町内会のご葬儀を観察してまとめれば分かる問題です。タバコを吸わなければ肺がんで死ぬようなことは非常に稀になるのです。
このような問題を疫学批判(あるいは疫学と混同した統計学批判)で問題をそらそうとしていること自体が問題です。
数字を挙げていないように見えるのは、数字はこれまでさんざん挙げてきたからです。英語も日本語も、誰でも文字が読めれば数字を拾うことができます。一応大卒のようなsssさんがそれが出来ないはずはないでしょう。
実は、タバコと肺がんの問題は専門家の問題ではありません。40年以上前から「あなた」が判断する問題になっているのです。これがこの問題の深刻さの核心の一つでもあります。
さいごの方の、シガレットはタバコの文化を破壊してしまい、マナーが形成されなかった、という部分はとても合意、なのですが。