日本百名山 32、苗場山(2145m)
「もし苗場が平凡な山であったら、ただの奥山として放っておかれただろう。
ところがこれは人の目を惹かずにはおかない。
そして一遍その山を見たら、その名を問わずにはおられない特徴を持っている。
すぐれた個性は、どんなに隠れようとしても、世に現れるものである。・・・
方々の頂上から、この独自の姿をもった山をすぐ見分けるだろう。
それは緩く傾いた長い稜線を持った山である。
設定:カメラ:PRO、レンズ:5mm、風景:南アルプスの春、高さ強調1.5倍、仰角10度
いわゆる山らしい山の沢山重なっているあいだに、
苗場だけはまるで鯨の背のようにその膨大な図体を横たえている。」
(新潮社刊、深田久弥著『日本百名山』より引用)
私も、20歳台の頃、会社の仲間に誘われて登ったことがあります。
初日は、バスで三国トンネルを超え、二居本陣に泊まりました。
本陣の主人はユニークな人で、一緒に囲炉裏を囲んで食事をとり、そのあと延々と囲碁を打った覚えがあります。
主人は、時々東京に来て、日本棋院で碁を打っているような本格的な実力者で、我々は上手く遊ばれたようです。
そして、次の日は山を越えて赤湯温泉に泊まりました。
11月3日の文化の日(当時)で、赤湯温泉最後の営業日でした。
まだ電気が付いておらず、ランプの下で食事をし、茣蓙に寝ころんで寝た覚えがあります。
風呂は、河原の砂土に穴を掘っただけの、全くの天然風呂で、時々前を流れるせせらぎをザブザブ渡って温度調節をしました。
2,3の他の泊り客は、一杯気分で歌を呻っていました。月も輝きいい夜でした。
次の日、苗場山に登りました。
途中の苦しさはよく覚えていませんが、頂上へ達したとき、まるで尾瀬ヶ原に出てきた気分でした。
広々とした原野のあちこちに、小池が散乱していました。
仲間の一人はそこで記念品の “うんこ” を置いてきました。
これは、「・・・人の目を惹かずにはおかない。・・・」素晴らしい原野でした。
今でもその時の感動は忘れられません。
そして帰りは、長い長い笹薮を掻き分けて長時間歩いて、バス停に辿りついた覚えがあります。
そのくせ、次の日は清津峡を歩いたのです。
若かりし頃の、いい想い出です。