熊五郎と12名の仲間達
その数日後であった。松宮さんの心配は的中し、埴輪は作り直すことになったとの一報が入り、熊五郎の願いは意外と早くその機会が到来した。そこは陶芸用品専門店であった。大きな倉庫にいろいろな種類の粘土が置かれている。陶器に色づけをする釉薬、削るためのへら、見る物総て新鮮に映るのであった。物珍しさも手伝って店の中を熊のようにうろつき回っていると店の倉庫の片隅に置いてある陶芸窯を見つけた。値段も特価と書いてある。カタログなどで陶芸窯の価格はある程度知っていた。確かに値段はカタログの半額以下の値段である。早速、店主への質問攻めが始まった。思い立ったら後先のことなどお構いなしにすぐ実行したがる根っからの単細胞生物として歳月を重ねてきた人生である。決断はアッと言う間に下された。そして、店主と購入後の夢を話し始めた。
「楽しみですね。生徒達と一緒にいろいろな物をこれから作ろうと思います。」
「灯油窯ですから経費も電気やガスに比べてかかりませんよ。」
「どのくらいの灯油が必要なんですか。」
「素焼きと本焼きで三〇リットルくらいだと思います。」
「そりゃ安い。電気やガスでは高くつきますからね。」
「本当にお買い得ですよ。設置するときは前もってご連絡しますから宜しくお願いします。」
「解りました。楽しみに待っています。」
「ところで、ご主人は陶芸を何年ぐらいされていらっしゃるんですか。」
初めて尋ねてきた客が、その場で窯を購入するのだから店主はかなりの経験者と思われたのも無理がない。
「いや、全くの未経験なのでこれから始めようと思います。」
熊五郎のこの言葉に店主は一瞬言葉を失ったのだろう。
「え!!!!!。」
少々間を空けてから今度は
「粘土を扱ったことは?」
いぶかしそうに熊五郎を見ながら尋ねてきた。
「中学一年生のとき美術の授業でさわったのが最後かな。」
他人事のように返事をしている姿を見ながら心配になったのだろう。
「いいんですか。奥様に相談しなくて・・・・。私が商売始めて貴方の様な方、初めてですよ。」
隣で聞いていた妻は、また『病気が始まった』とばかり、半ばあきらめ顔。今までにも電気溶接機、電動鉋、チェーンソーなどホームセンターに行くといろいろな大工道具や生活用品を衝動買いをしてきたのである。帰路についてからの車内で妻が一言。
「買った以上、何も言いませんから、ものにして下さいね。」
と熊五郎に釘を刺した。それから素人なりの陶芸が始まった。陶芸と言えば当然ロクロを誰もが思い浮かべる事だろう。何も知らずに始めた陶芸である。十万円以上する電動ロクロを購入することなど許してもらえるはずもない。廃材になったモーターを頂いて手ロクロを作った。出来は良かったが止まりかけると、その度に手でロクロを回転させなければならない。それでもどうやら湯飲み茶碗程度の大きさの物が出来るようになった。そこで、
「電動ロクロがあればもっといい物が作れるんだがな。」
ダメ元で妻に話すと
「いいんじゃない。買ったら。」
思いがけない返事が返ってきたのである。妻の気が変わらない内に受話器を取った。一週間後、熊五郎は念願の電動ロクロを手に入れることが出来た。陶芸のイロハを指導してもらえる師匠もいなければ、教室に通うわけでもなく、全くの独学で始めた陶芸である。下手な鉄砲数打ちゃ当たるの例えではないが、一年が経過すると、どうにか形になり始め、中学三年生には毎年、受験期になるとコーヒーカップをプレゼント出来るまでに腕を上げていった。土に親しむことはとても楽しいことである。陶芸窯を購入し、自分だけ楽しんでいては申し訳ないと土鈴作りを創造教室に取り入れることにした。作り方はいたって簡単、新聞紙を丸めて周りに粘土を張り付ければ原形の出来上がりである。後は創造力に任せて飾り付け、仕上げればいい訳だ。先ずは、五・六年生を対象に行ってみたが、出来上がった作品の補修に翌日は半日ほど時間を取られてしまう。また、乾燥の段階で割れてしまう作品もあった。素焼きをすると、せっかくの力作が原形を留めない姿で焼き上がってくる作品もある。その姿を見て、例外なく悲しそうにその変わり果てた姿を眺めている。そうした子供達には熊五郎が作った予備の土鈴を渡したが自分の作品ではない。仕方なく取りやめとなった。70
今年も今日からサマーキャンプに行って来ます。39名+引率者で総勢46名で、明日戻ってきます。私の体力の限界で再開後は1泊2日の日程になっています。もちろん、谷川探検はやりますよ。今回は、竹飯を作る予定です。昨日、友人の竹林から1本頂いてきました。
その数日後であった。松宮さんの心配は的中し、埴輪は作り直すことになったとの一報が入り、熊五郎の願いは意外と早くその機会が到来した。そこは陶芸用品専門店であった。大きな倉庫にいろいろな種類の粘土が置かれている。陶器に色づけをする釉薬、削るためのへら、見る物総て新鮮に映るのであった。物珍しさも手伝って店の中を熊のようにうろつき回っていると店の倉庫の片隅に置いてある陶芸窯を見つけた。値段も特価と書いてある。カタログなどで陶芸窯の価格はある程度知っていた。確かに値段はカタログの半額以下の値段である。早速、店主への質問攻めが始まった。思い立ったら後先のことなどお構いなしにすぐ実行したがる根っからの単細胞生物として歳月を重ねてきた人生である。決断はアッと言う間に下された。そして、店主と購入後の夢を話し始めた。
「楽しみですね。生徒達と一緒にいろいろな物をこれから作ろうと思います。」
「灯油窯ですから経費も電気やガスに比べてかかりませんよ。」
「どのくらいの灯油が必要なんですか。」
「素焼きと本焼きで三〇リットルくらいだと思います。」
「そりゃ安い。電気やガスでは高くつきますからね。」
「本当にお買い得ですよ。設置するときは前もってご連絡しますから宜しくお願いします。」
「解りました。楽しみに待っています。」
「ところで、ご主人は陶芸を何年ぐらいされていらっしゃるんですか。」
初めて尋ねてきた客が、その場で窯を購入するのだから店主はかなりの経験者と思われたのも無理がない。
「いや、全くの未経験なのでこれから始めようと思います。」
熊五郎のこの言葉に店主は一瞬言葉を失ったのだろう。
「え!!!!!。」
少々間を空けてから今度は
「粘土を扱ったことは?」
いぶかしそうに熊五郎を見ながら尋ねてきた。
「中学一年生のとき美術の授業でさわったのが最後かな。」
他人事のように返事をしている姿を見ながら心配になったのだろう。
「いいんですか。奥様に相談しなくて・・・・。私が商売始めて貴方の様な方、初めてですよ。」
隣で聞いていた妻は、また『病気が始まった』とばかり、半ばあきらめ顔。今までにも電気溶接機、電動鉋、チェーンソーなどホームセンターに行くといろいろな大工道具や生活用品を衝動買いをしてきたのである。帰路についてからの車内で妻が一言。
「買った以上、何も言いませんから、ものにして下さいね。」
と熊五郎に釘を刺した。それから素人なりの陶芸が始まった。陶芸と言えば当然ロクロを誰もが思い浮かべる事だろう。何も知らずに始めた陶芸である。十万円以上する電動ロクロを購入することなど許してもらえるはずもない。廃材になったモーターを頂いて手ロクロを作った。出来は良かったが止まりかけると、その度に手でロクロを回転させなければならない。それでもどうやら湯飲み茶碗程度の大きさの物が出来るようになった。そこで、
「電動ロクロがあればもっといい物が作れるんだがな。」
ダメ元で妻に話すと
「いいんじゃない。買ったら。」
思いがけない返事が返ってきたのである。妻の気が変わらない内に受話器を取った。一週間後、熊五郎は念願の電動ロクロを手に入れることが出来た。陶芸のイロハを指導してもらえる師匠もいなければ、教室に通うわけでもなく、全くの独学で始めた陶芸である。下手な鉄砲数打ちゃ当たるの例えではないが、一年が経過すると、どうにか形になり始め、中学三年生には毎年、受験期になるとコーヒーカップをプレゼント出来るまでに腕を上げていった。土に親しむことはとても楽しいことである。陶芸窯を購入し、自分だけ楽しんでいては申し訳ないと土鈴作りを創造教室に取り入れることにした。作り方はいたって簡単、新聞紙を丸めて周りに粘土を張り付ければ原形の出来上がりである。後は創造力に任せて飾り付け、仕上げればいい訳だ。先ずは、五・六年生を対象に行ってみたが、出来上がった作品の補修に翌日は半日ほど時間を取られてしまう。また、乾燥の段階で割れてしまう作品もあった。素焼きをすると、せっかくの力作が原形を留めない姿で焼き上がってくる作品もある。その姿を見て、例外なく悲しそうにその変わり果てた姿を眺めている。そうした子供達には熊五郎が作った予備の土鈴を渡したが自分の作品ではない。仕方なく取りやめとなった。70
今年も今日からサマーキャンプに行って来ます。39名+引率者で総勢46名で、明日戻ってきます。私の体力の限界で再開後は1泊2日の日程になっています。もちろん、谷川探検はやりますよ。今回は、竹飯を作る予定です。昨日、友人の竹林から1本頂いてきました。