熊五郎と12名の仲間達
妻も、二人の関係を知っている。事務室は重苦しい雰囲気に包まれてたまま正午を過ぎた。
「ねえ、貴方。横井君、駄目だったのかなあ。あれだけ頑張ったのに。」
「まだ解らない。本人から連絡がない限り諦めないようにしよう。あんなに頑張ったのだからきっと受かっているよ。」
言ってはみたが熊五郎の心にはあきらめのムードが漂っていた。午後一時過ぎ、事務室のドアが開いた。そこには満面に笑みを浮かべた横井が立っていたのだ。結果は自ずと分かり切っている。
「馬鹿野郎。もっと早く知らせろ。」
熊五郎は思わず頭をこづいた。
「痛て。先生、受かった。担任に報告した後、学校を出られなかったから今になりました。すいません。」
これで、全員の合格が確定したのである。全身の力が抜けたような脱力感に襲われた。毎年、繰り返されることなのだが、今回の受験は、全員が小学一年生から見てきた生徒である。一人の落伍者も出ず、全員が志望校に合格した。そして、私立組は総て特待生として、公立組の六名は進学校と呼ばれるそれぞれの通学区のトップ校に入学を果たしたのだ。『終わりは始めなり』この言葉は、サラリーマン時代に教えて頂いた言葉である。横井の合格を最後に、また新たな出発が熊五郎には待っていた。189
妻も、二人の関係を知っている。事務室は重苦しい雰囲気に包まれてたまま正午を過ぎた。
「ねえ、貴方。横井君、駄目だったのかなあ。あれだけ頑張ったのに。」
「まだ解らない。本人から連絡がない限り諦めないようにしよう。あんなに頑張ったのだからきっと受かっているよ。」
言ってはみたが熊五郎の心にはあきらめのムードが漂っていた。午後一時過ぎ、事務室のドアが開いた。そこには満面に笑みを浮かべた横井が立っていたのだ。結果は自ずと分かり切っている。
「馬鹿野郎。もっと早く知らせろ。」
熊五郎は思わず頭をこづいた。
「痛て。先生、受かった。担任に報告した後、学校を出られなかったから今になりました。すいません。」
これで、全員の合格が確定したのである。全身の力が抜けたような脱力感に襲われた。毎年、繰り返されることなのだが、今回の受験は、全員が小学一年生から見てきた生徒である。一人の落伍者も出ず、全員が志望校に合格した。そして、私立組は総て特待生として、公立組の六名は進学校と呼ばれるそれぞれの通学区のトップ校に入学を果たしたのだ。『終わりは始めなり』この言葉は、サラリーマン時代に教えて頂いた言葉である。横井の合格を最後に、また新たな出発が熊五郎には待っていた。189