１０月 １１日

　　　　　　　　　　　　　秋刀魚・さいら・サンマ



　　　　　うつくしく秋刀魚の骨を残しけり　　　　　　　　河原地英武


　　　　　窯焚きの燠で焼きたり新秋刀魚　　　　　　　　　矢野孝子


　　　　　スコップで秋刀魚の箱へ氷投ぐ　　　　　　　　　鈴木みすず


　　　　　頭を揃へ葉蘭に並ぶ初さんま　　　　　　　　　　佐藤とみお


　　　　　防災の七輪で焼く大秋刀魚　　　　　　　　　　　加藤百世


　　　　　無愛想は薩摩の気風秋刀魚焼く　　　　　　　　　齋藤眞人


　　　　　酒美味し腹の苦みの初さんま　　　　　　　　　　武藤けい子


　　　　　秋刀魚焼く火伏せの護符を煙らせて　　　　　　　坪野洋子


　　　　　大漁旗掲げ秋刀魚のつかみ取り　　　　　　　　　小田二三枝


　　　　　点滴を受けし帰りに秋刀魚買ふ　　　　　　　　　佐久間寿子


　　　　　秋刀魚焼く向ふ三軒両隣　　　　　　　　　　　　山本法子


　　　　　祭壇に昆布と秋刀魚神饌として　　　　　　　　　中根多子



　　　　　　　　　　



　　　　　火だるまの秋刀魚を妻が食はせけり　　　　　　　秋元不死男


　　　　　塩秋刀魚おのが油の火に焼かる　　　　　　　　　きくちつねこ


　　　　　秋刀魚焼く煙りの中の割烹着　　　　　　　　　　鈴木真砂女


　　　　　秋刀魚食ふ月夜の柚子をもいできて　　　　　　　加藤秋邨


　　　　　秋刀魚焼く煙を逃げて机かな　　　　　　　　　　石川桂郎


　　　　　紀の国のお頭つきの秋刀魚鮨　　　　　　　　　　赤松郁代