３月 ３１日

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　梨の花・花梨・梨花・梨咲く　


　　　　　能登けふは海の濁りの梨の花　　　　　　　　　　　細見綾子


　　　　　反抗期始まる少女梨の花　　　　　　　　　　　　　栗田やすし


　　　　　梨花白し神学校の小さき窓　　　　　　　　　　　　伊藤範子


　　　　　安達太良に雪一筋や梨の花　　　　　　　　　　　　上杉美保子


　　　　　梨の花咲いて信濃は雨もよひ　　　　　　　　　　　金田義子


　　　　　棚田群一望の丘梨咲けり　　　　　　　　　　　　　倉田信子


　　　　　梨の花神父の墓に散り敷けり　　　　　　　　　　　青木しげ子


　　　　　姉の忌のまぢかとなりぬ梨の花　　　　　　　　　　近藤文子


　　　　　河口まで白く続けり梨の花　　　　　　　　　　　　澤田正子


　　　　　梨咲くや母に記憶の消えしまま　　　　　　　　　　高橋ミツエ



　　　　　　　　　　



　　　　　梨の花ふるさと人の早寝かな　　　　　　　　　　　中村汀女


　　　　　梨咲くや見えゐて遠き師との距離　　　　　　　　　岡本 眸


　　　　　花梨老樹に赤児泡きつく家郷かな　　　　　　　　　金子兜太


　　　　　梨咲いて病めばいささか色白に　　　　　　　　　　鍵和田釉子


　　　　　梨の花まくらことばがたちのぼる　　　　　　　　　宇多喜代子


　　　　　梨花と梨花白極まりて触るるなり　　　　　　　　　林　翔 


　　　　　梨の花団十郎をひゐきかな　　　　　　　　　　　　正岡子規



　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　非常事態宣言が３月２１日に解除となりました
　　　　　　　　　引き続き三密を忘れなく　密閉、密集、密接を避けましょう
　　　　　　　　　そして手洗い、うがい、マスクの着用で自分と大切な人を守りましょう

３月 ３０日

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　紫雲英・れんげ・げんげ田・れんげ草


　　　　　げんげ田に沈みて遍路冥利かな　　　　　　　　　　沢木欣一 


　　　　　首塚の裏一枚は紫雲英畑　　　　　　　　　　　　　栗田やすし


　　　　　主婦といふ職業が好きれんげ草　　　　　　　　　　都合ナルミ


　　　　　げんげ田に寝転んで見る飛行船　　　　　　　　　　伊藤旅遊


　　　　　日ざしごとれんげを摘んで母見舞ふ　　　　　　　　若山智子


　　　　　田起しの土傾きてげんげ咲く　　　　　　　　　　　服部冨子


　　　　　首飾りに編みし日のこと蓮華草　　　　　　　　　　武藤けい子


　　　　　遠きほど桃色の濃し蓮華畑　　　　　　　　　　　　堀　一之


　　　　　紫雲英畑見ゆる夢二の窓小さし　　　　　　　　　　渡辺かずゑ


　　　　　富士望む棚田の畔や蓮華草　　　　　　　　　　　　山本法子


　　　　　
　　　　　　　　　　



　　　　　げんげ田の色を夕焼が奪ひけり　　　　　　　　　　鈴木真砂女


　　　　　タラップを降りて紫雲英の風の中　　　　　　　　　西村和子


　　　　　げんげ田に寝て欲しきもの双翼　　　　　　　　　　津田清子


　　　　　げんげ田にながなが繋ぐ歩み板　　　　　　　　　　二村典子


　　　　　げんげ田の風がまるごと校庭に　　　　　　　　　　小川軽舟


　　　　　隣田は紫雲英咲きそむ鰻池　　　　　　　　　　　　水原秋櫻子


　　　　　あぜ道のうねり見えけり蓮華草　　　　　　　　　　政岡子規



　　　　　　　　　　

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３月 ２９日

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　落花・飛花落花・花散る・花吹雪・飛花・花屑・花筏


　　　　　へそ小さき風神雷神桜散る　　　　　　　　　　　　栗田やすし


　　　　　あめつちのくづれんばかり桜ちる　　　　　　　　　沢木欣一


　　　　　谷へちる花のひとひらづつ夕日　　　　　　　　　　細見綾子


　　　　　木屋町の橋の花屑掃き落す　　　　　　　　　　　　河原地英武


　　　　　飛花落花回廊に風吹きぬけり　　　　　　　　　　　鈴木みすず


　　　　　古猿楽鬼出て落花踏みしだく　　　　　　　　　　　清水弓月


　　　　　鼓笛隊落花の中を進みけり　　　　　　　　　　　　関根切子


　　　　　散る花へ鈴を翳して巫女舞へり　　　　　　　　　　石崎宗敏


　　　　　人力車落花の中に客待てり　　　　　　　　　　　　堀内恵美子


　　　　　花吹雪通学の児の列乱す　　　　　　　　　　　　　神野喜代子


　　　　　土手よりの飛花ただ中に塞の神　　　　　　　　　　谷口千賀子


　　　　　放生の池に渦なす花筏　　　　　　　　　　　　　　ころころ



　　　　　　　　　　



　　　　　散る花の散るを見頃の山寺に　　　　　　　　　　　　稲畑汀子


　　　　　花散りてしばらく宙を濃くしたり　　　　　　　　　　能村登四郎


　　　　　たえまなき落花の下のみやげうり　　　　　　　　　　山口青邨


　　　　　一年をこの一日に散るさくら　　　　　　　　　　　　今井千鶴子


　　　　　暮れてより花散らす雨つのりけり　　　　　　　　　　中村苑子


　　　　　扇にて酒くむ陰や散る桜　　　　　　　　　　　　　　松尾芭蕉


　　　　　散る桜残る桜も散る桜　　　　　　　　　　　　　　　山本栄蔵（良寛和尚）



　　　　　　　　　　

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３月 ２８日

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　筍・笋・たかんな・竹の子


　　　　　筍の堀りすててあり芭蕉の道　　　　　　　　　　　　細見綾子


　　　　　孤独の座筍煮れば青くさき　　　　　　　　　　　　　沢木欣一


　　　　　陶工の行き来せし径淡竹の子　　　　　　　　　　　　梅田　葵


　　　　　磨崖仏前に筍掘りし跡　　　　　　　　　　　　　　　都合ナルミ


　　　　　先づ深く筍飯の湯気を吸ひ　　　　　　　　　　　　　佐藤とみお


　　　　　たかんなの切り口白くしたたれる　　　　　　　　　　伊藤範子


　　　　　たけのこを猪の親子が食べにきし　　　　　　　　　　片山浮葉


　　　　　朝掘りのたかんなを提げ馬籠坂　　　　　　　　　　　山下智子


　　　　　筍ゆでし青きにほひの家に満つ　　　　　　　　　　　川村鎮野


　　　　　法被着てたけのこ売りや寺の庭　　　　　　　　　　　与後玲子


　　　　　忌を修し斎の筍づくしかな　　　　　　　　　　　　　谷口由美子


　　　　　濡れしまま友のさし出す真竹の子　　　　　　　　　　門村鈴子



　　　　　　　　　　



　　　　　たかんなや学僧の眉一文字　　　　　　　　　　　　　大野林火


　　　　　筍の誕生佛を掘り起す　　　　　　　　　　　　　　　森　澄雄


　　　　　筍掘る師に声援の女弟子　　　　　　　　　　　　　　菖蒲あや


　　　　　蝶の舞うたかんなの頭の黒かりき　　　　　　　　　　金子兜太


　　　　　その子転べば筍に囲まるる　　　　　　　　　　　　　森賀 まり


　　　　　わが性の邪魔なところに筍生え　　　　　　　　　　　今瀬剛一


　　　　　ヒエラルキーごと筍を茹でにける　　　　　　　　　　櫂　未知子



　　　　　　　　　　

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３月 ２７日

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　大根の花・花大根


　　　　　春雷を二三日して大根花　　　　　　　　　　　　　　細見綾子


　　　　　大学の庭の大根花咲けり　　　　　　　　　　　　　　沢木欣一


　　　　　大根の花咲く十坪ほどの庭　　　　　　　　　　　　　栗田やすし


　　　　　ポンプ井戸残る畑や花大根　　　　　　　　　　　　　横井美音


　　　　　花大根大寺の畑埋めつくす　　　　　　　　　　　　　武藤光晴


　　　　　灯台へ続く小径や花大根　　　　　　　　　　　　　　菊池佳子


　　　　　南吉のきつねの話花大根　　　　　　　　　　　　　　江本晴子


　　　　　花大根濡らす岬の怒涛かな　　　　　　　　　　　　　岡野敦子


　　　　　花大根山二つ越え祖父の墓　　　　　　　　　　　　　栗木登代子



　　　　　　　　　　



　　　　　花大根に蝶漆黒の翅をあげて　　　　　　　　　　　　杉田久女


　　　　　ほろ苦き恋は忘れず花大根　　　　　　　　　　　　　鈴木真砂女


　　　　　岬への単線をどる花大根　　　　　　　　　　　　　　林　翔


　　　　　夕月は母のぬくもり花大根　　　　　　　　　　　　　古賀まり子


　　　　　二十の戀五十の戀や花大根　　　　　　　　　　　　　石塚友二


　　　　　花大根海女の磯畑一つかみ　　　　　　　　　　　　　鈴木しげを


　　　　　大根の花ほどこころ揺れにけり　　　　　　　　　　　大串　章



　　　　　　　　　　

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３月 ２６日

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　初蝶・蝶・紋白蝶・黄蝶々


　　　　　反射炉に初蝶の来て影落とす　　　　　　　　　　　栗田やすし


　　　　　鯉の背に初蝶来れば父恋し　　　　　　　　　　　　沢木欣一


　　　　　白蝶々いつもつがひのあと先に　　　　　　　　　　細見綾子


　　　　　退院のきまりし窓辺初の蝶　　　　　　　　　　　　栗田せつ子


　　　　　動くもの皆指さす子初蝶来　　　　　　　　　　　　橋本ジュン


　　　　　丈草の井筒に舞へり紋黄蝶　　　　　　　　　　　　久野和子


　　　　　初蝶のついと隠れてそれつきり　　　　　　　　　　梅田　葵


　　　　　都府楼の礎石伝へり春の蝶　　　　　　　　　　　　伊藤範子


　　　　　蝶飛べりきりんの足を縫ふやうに　　　　　　　　　中斎ゆうこ


　　　　　初蝶を空の青さに見失ふ　　　　　　　　　　　　　広瀬多恵子


　　　　　大護摩の縄の結界蝶過ぐる　　　　　　　　　　　　井上　梟


　　　　　禅寺の枯山水に蝶つるむ　　　　　　　　　　　　　溝口洋子



　　　　　　　　　　


　　　　　紋白蝶ほどの汚れの白靴に　　　　　　　　　　　　福永耕二


　　　　　縞馬の縞の中より初蝶来　　　　　　　　　　　　　今井　聖


　　　　　宙にある紋白蝶ときりんの背　　　　　　　　　　　正木ゆう子


　　　　　初蝶とわたしとイエス・キリストと　　　　　　　　津田清子


　　　　　つまづきし子に初蝶もつまづきぬ　　　　　　　　　西村和子 


　　　　　初蝶をとらへるための双手かな　　　　　　　　　　夏井いつき


　　　　　初蝶や吾三十の袖袂　　　　　　　　　　　　　　　石田波郷



　　　　　　　　　　

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３月 ２５日

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　花・花埃・花明かり・花の雨・花全般


　　　　　花の雨延年舞の白足袋に　　　　　　　　　　　　　沢木欣一


　　　　　山伏の念珠の音も花の山　　　　　　　　　　　　　細見綾子


　　　　　朝靄に前山けぶる花の宿　　　　　　　　　　　　　栗田やすし


　　　　　ラケットの破れ繕ふ花の雨　　　　　　　　　　　　河原地英武


　　　　　西行堂檜皮を伝ふ花の雨　　　　　　　　　　　　　岸本典子


　　　　　足湯して眠気兆せり花の昼　　　　　　　　　　　　国枝隆生


　　　　　花の昼恋の絵馬吊る女学生　　　　　　　　　　　　太田滋子


　　　　　花の昼トロンボーンの音はづれ　　　　　　　　　　関根切子


　　　　　花万朶鄙の社の忠魂碑　　　　　　　　　　　　　　武藤光晴


　　　　　ぬり絵する母の真顔や花の雨　　　　　　　　　　　山本光江


　　　　　花の雨巫女玉砂利を小走りに　　　　　　　　　　　小島千鶴


　　　　　花を待つ忠敬像の旅姿　　　　　　　　　　　　　　ころころ



　　　　　　　　　　



　　　　　花どきの一週間は一と昔　　　　　　　　　　　　　今井干鶴子


　　　　　会ひに来ていま花時よ蜜柑島　　　　　　　　　　　石川桂郎


　　　　　からくりの木偶翻る花の山　　　　　　　　　　　　加藤耕子


　　　　　未婚の身軽し花の山花の奥　　　　　　　　　　　　寺田京子


　　　　　花時の猫の足拭く因果かな　　　　　　　　　　　　長谷川双魚


　　　　　呼びとめて二人となりぬ花明り　　　　　　　　　　五所平之助


　　　　　うち山や外様しらずの花盛り　　　　　　　　　　　松尾芭蕉



　　　　　　　　　　

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３月 ２４日

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　山桜・吉野桜・八重桜・遅桜　


　　　　　遍路笠脱ぎて仰げり山桜　　　　　　　　　　　　　沢木欣一


　　　　　浄瑠璃寺牡丹桜の雨もよひ　　　　　　　　　　　　細見綾子


　　　　　木の鈴を買ふ四分咲きの山桜　　　　　　　　　　　栗田やすし


　　　　　ぽつてりと角屋の庭の八重桜　　　　　　　　　　　河原地英武


　　　　　山桜後円墳を包みをり　　　　　　　　　　　　　　澤田正子


　　　　　トンネルを抜けてトンネル山桜　　　　　　　　　　平松公代


　　　　　夕風に山桜散る露天風呂　　　　　　　　　　　　　滝沢昇二


　　　　　山桜散り敷く無人発電所　　　　　　　　　　　　　満田きよ子


　　　　　山桜ここは太古の海の底　　　　　　　　　　　　　大谷みどり


　　　　　老いたれば老いと集ひて八重桜　　　　　　　　　　武藤光晴


　　　　　ホスピスの窓辺重たき八重桜　　　　　　　　　　　中野一灯


　　　　　登り来て風の蔵王や遅桜　　　　　　　　　　　　　金田義子



　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　



　　　　　この辺り光秀贔屓山ざくら　　　　　　　　　　　　山田弘子


　　　　　鳶老いて高音張りけり山桜　　　　　　　　　　　　小川軽舟


　　　　　山桜奥千本の迷い道　　　　　　　　　　　　　　　白石みずき


　　　　　傘をうつ牡丹桜の雫かな　　　　　　　　　　　　　杉田久女


　　　　　八重櫻遍路も脚を投げ出して　　　　　　　　　　　森　澄雄


　　　　　ゆきずりの思ひ尾を曳く八重桜　　　　　　　　　　上田五千石 


　　　　　七つ滝七つに照りて山ざくら　　　　　　　　　　　能村登四郎



　　　　　　　　　　

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３月 ２３日

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　花見・桜狩・花衣・花筵・花人・花疲れ　


　　　　　墨堤の桜を見むと傘さして　　　　　　　　　　　　細見綾子


　　　　　寮泊りして夜桜を独占す　　　　　　　　　　　　　栗田やすし


　　　　　花疲れ黄金いろなす茶を啜る　　　　　　　　　　　河原地英武


　　　　　新聞紙拡げ二人の花見席　　　　　　　　　　　　　岸本典子


　　　　　花疲れ柱に凭れ足袋を脱ぐ　　　　　　　　　　　　矢野孝子


　　　　　リタイアもリストラもゐて花筵　　　　　　　　　　小長哲郎


　　　　　花疲れ読まずにしまふ凶みくじ　　　　　　　　　　中斎ゆうこ


　　　　　寝そべつて土の湿りの花筵　　　　　　　　　　　　関根切子


　　　　　後期高齢者静かに花の宴　　　　　　　　　　　　　櫻井幹郎


　　　　　寄つてけと呼ばれて坐る花筵　　　　　　　　　　　斉藤眞人


　　　　　花むしろリュックサックを真中に　　　　　　　　　石原進子


　　　　　観桜の東京の空昼の月　　　　　　　　　　　　　　奥山ひろ子



　　　　　　　　　　



　　　　　花衣ぬぐやまつはる紐いろいろ　　　　　　　　　　杉田久女


　　　　　ともしびのつけば色町桜狩　　　　　　　　　　　　山口青邨


　　　　　打ちに打つ花見太鼓や韓の唄　　　　　　　　　　　大石悦子 


　　　　　みなの衆盛りの桜見て下され　　　　　　　　　　　津田清子


　　　　　みはらしや先にきてゐる花見翁　　　　　　　　　　百合山羽公


　　　　　主義主張異なつてよき花見かな　　　　　　　　　　宇多喜代子


　　　　　一群の芸妓に出逢ふ花見哉　　　　　　　　　　　　政岡子規 



　　　　　　　　　　

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３月 ２２日

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　枝垂桜・糸桜・紅枝垂・しだり桜


　　　　　高麗の里枝垂桜が紅潮す　　　　　　　　　　　細見綾子


　　　　　杉間より流るる枝垂桜かな　　　　　　　　　　沢木欣一


　　　　　二胡の音に枝垂れ桜の揺れやまず　　　　　　　横井美音


　　　　　枝垂れたる桜に触れし車椅子　　　　　　　　　河井久子


　　　　　つくばひに枝垂桜の枝浸す　　　　　　　　　　青木信子



　　　　　　　　　　



　　　　　まさをなる空より枝垂桜かな　　　　　　　　　富安風生


　　　　　篝火を焚けば揺れそめ糸桜　　　　　　　　　　下村梅子


　　　　　枝垂桜地に触るる枝は舞ふごとし　　　　　　　古賀まり子


　　　　　雨筋を千々にわかちて糸ざくら　　　　　　　　岡本 眸


　　　　　見るほどに枝垂桜の老いて艶　　　　　　　　　深見けん二


　　　　　枝垂桜垂れて疎水の水にまで　　　　　　　　　山口誓子


　　　　　枝垂桜わたくしの居る方が正面　　　　　　　　池田澄子



　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　向島　料亭　桜茶や


　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　浅草寺　伝法院


　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　非常事態宣言が３月２１日に解除となりました
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