10月 1日

2019-09-30 13:17:41 | Weblog
             秋の灯・秋灯・灯下の秋



     眼を閉ぢて来し方思ふ秋燈下          栗田やすし


     愛情や秋灯いずれも格子中           沢木欣一


     古書店の床板きしむ秋燈下           河原地英武


     秋の灯に影あはあはと女身仏          国枝隆生


     秋灯や行李の底に母子手帳           武田稜子


     秋ともしガレの花瓶のまろき肩         鈴木みすず


     秋灯生涯学ぶ側にゐて             櫻井幹郎


     秋ともしひとり降り立つ無人駅         小島千鶴


     紅殻の格子より漏る秋ともし          武藤光晴


     背を丸め日記書く子や秋灯下          太田滋子


     燈下親し頭寄せ合ひ楽譜読む          奥山ひろ子


     紅型の栞のぬくみ秋ともし           伊藤範子


     タンゴ聴く神田の茶房秋ともし         中野一灯


     文晁の杉戸の龍や秋灯             中根多子



          



     ひとつ見えて秋燈獄に近よらず         秋元不死男


     声かけてともす秋燈母は亡き          古賀まり子


     秋の灯のほつりほつりと京の端         日野草城


     秋灯やどこか痩せたる街の貌          岡本眸


     秋燈のま下にくぎる小衝立           星野立子


     秋の燈が漁家より海へ乗り出す         山口誓子



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

9月 30日

2019-09-29 14:14:27 | Weblog
             薄紅葉・初紅葉・早紅葉




     うすもみぢしてよそほへり滝の山      細見綾子


     たたなはる山に朝日や初紅葉        谷口千賀子


     薄紅葉ピカソ観し目にやさしかり      佐藤とみお


     初紅葉美濃と近江をひと跨ぎ        上杉和雄


     谷渡る風にそよげり薄紅葉         鈴木未草


     石垣の隙間に蔦の初紅葉          塩原純子


     薄紅葉二の丸茶屋に抹茶の香        日野圭子


     野仏の並ぶ坂道薄紅葉           藤田英子



          



     色付くや豆腐に落ちて薄紅葉         松尾芭蕉


     吊橋を拒む馬あり初紅葉           菅原鬨也


     簗掛けて高鳴る水や薄紅葉          松本たかし


     そこはかと苔のにほへり初紅葉        日野草城


     薄紅葉淵のいろくづ日のつつむ        小澤實


     薄紅葉マリアの像を島うらに         飯塚樹美子

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

9月 29日

2019-09-28 15:30:52 | Weblog
            金木犀・銀木犀・木犀



     金木犀風の行手に石の塀              沢木欣一


     木犀の匂へる宿の能登飯田             細見綾子


     木犀の風やはらかし産着干す            玉井美智子


     金木犀ほろほろこぼる通学路            遠藤斎子


     板塀を越えてこぼるる銀木犀            小島千鶴


     金木犀かをる町屋の奈良格子            石川紀子


     顔剃りて金木犀の風に逢ふ             渡辺慢房


     薬師寺を出て木犀の香を浴ぶる           二村満里子


     木犀の風吹き抜くる杓子庵             矢野愛乃


     木犀の散り敷く薩摩義士の墓            角田勝代


     木犀や僧は縁側より来たり             内田陽子


     金木犀かほり溢れてほの暗し            下山幸重



          

           銀木犀


     木犀に薪積みけり二尊院               河東碧梧桐


     歩み入る木犀の香と朝日の幅             大野林火


     金銀の木犀をわが父母とせむ             鷹羽狩行


     金木犀しきたり多き家に匂ふ             野澤節子


     木犀大樹大金盃を逆しまに              林 翔
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

9月 28日

2019-09-27 13:35:27 | Weblog
             通草・あけび



     宿坊のとろりと甘き通草味噌          栗田せつ子


     通草の実雨に色づく行者径           岸本典子


     通草の実数へて通る下校の子          森垣一成


     リフト小屋笊に通草の爆ぜゐたり        山下智子


     宗悦の書斎を飾る通草の実           野島秀子


     米櫃に熟れし通草をもてなさる         滝沢伊代次


     先端は空にをどりて通草咲く          林 徹


     通草もぐふと晴天のでき心           今瀬剛一


     通草熟れ消えんばかりに蔓細し         橋本鶏二


     山気降り通草に色を紡ぎ足す          加藤耕子



          


            郁子・郁子垂る・郁子の実


     郁子の実をぶら下げ訪へり綾子の碑       澤田正子


     口中に種およがせて郁子喰ぶる         上田博子


     岩肌に郁子の実垂るる奥大井          中村修一郎


     盛物にそへてめでたし郁子二つ         野村泊月


     郁子一つ芭蕉生家の文机に           宮下翠舟


     郁子の実の垂れし人なき山の小屋        荒 久子


     塗盆に茶屋の女房の郁子をのせ         高浜虚子
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

9月 27日

2019-09-26 16:04:46 | Weblog
             茸・茸山・茸飯・茸汁



     石山寺くらげのごとき毒茸           栗田やすし


     不幸にて雑茸汁を賞でて食ふ          細見綾子


     雨溜めて真つ赤に反りし毒茸          平松公代


     山上湖見むとリュックに茸飯          角田勝代


     茸とり大きな籠を笑はるる           小長哲郎


     幕間の桟敷にひろぐ茸飯            奥山ひろみ


     妻と飲む和田の峠の茸汁            梶田遊子


     縄ゆるぶ縛り地蔵にほこり茸          近藤文子


     毒茸生ふ信玄の砦跡              森 靖子


     ふる里に集ふ一夜やきのこ汁          松本恵子


     紅茸の傘の全し二条城             井上 梟



          



     月夜茸山の寝息の思はるる           飯田龍太


     岩茸や北を抉られ武甲山            下田稔


     茸山に妻木を寄する走り合ひ          松瀬青々


     月山の茸づくしの三の膳            黒田杏子
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

9月 26日

2019-09-25 13:49:02 | Weblog
            吾亦紅・白吾亦紅・吾木香・われもかう



     吾亦紅ぽつんぽつんと気ままなる             細見綾子


     抜きん出て風に応ふる吾亦紅               坪野洋子


     湖に音なき雨や吾亦紅                  江口ひろし


     師の句碑に久闊の友吾亦紅                平松公代


     句碑すでに地になじみをり吾亦紅             牧野一古


     吾亦紅束ねて売れり道の駅                大倉カツ江


     山の陽を集め色濃し吾亦紅                市川克代


     ぽつぽつと夕日の中の吾亦紅               谷口千賀子


     風くれば影失へり吾亦紅                 山本悦子


     陶房の裏の日溜り吾亦紅                 舩橋 良


     吾亦紅寂しさうとも気ままとも              堀 一之


     吾亦紅句碑に供ふる師の忌日               桜井節子



          

           ながほの白吾亦紅



     下北のこれは白花吾亦紅                 黒田杏子


     綾子の忌壷に高きは吾亦紅                滝沢伊代次


     生まれたるままの身がよし吾亦紅             福田甲子雄


     草の中すいと抜けたる吾亦紅               高木晴子


     吾亦紅夕日といへど眼に痛し               福永耕二
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

9月 25日

2019-09-24 14:06:28 | Weblog
              新米・今年米・新糠



     手に受けて象牙の艶の今年米          栗田やすし


     湯気親し土釜で炊きし今年米          梅田 葵


     新米の一粒づつに艶持てり           藤田岳人


     桟橋に着く給食の今年米            栗田せつ子


     今年米檜の升に量り売る            奥山ひろ子


     新米と聞きて手を出す塩むすび         渡辺慢房


     田の神へ先づ新米の一と握り          市川正一郎


     蔵の床軋ませて積む今年米           兼松 秀


     一人居の父と分け合ふ今年米          太田滋子


     産褥の娘に炊きたての今年米          清原貞子


     喪疲れへ炊く新米の三分粥           相澤勝子


     飯盒の焦げ香ばしき今年米           中野一灯



          


          山形県酒田市 山居倉庫
          酒田はかつて北前船による交易で栄えた港町
          その繁栄を支えた庄内米の保存倉庫として
          作られたものが山居倉庫です
          NHKの「おしん」でもロケ地にもなっています




     新米を炊くにも妻の声はづみ           福永耕二


     にぎはしく指の間を洩れ今年米          鷹羽狩行


     指にもむのみ新米の磨ぎ汁よ           石川桂郎


     新米やミルクのやうなとぎ汁も          辻 桃子


     新米の土にこぼれて輝けり            日野草城




          
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

9月 24日 

2019-09-23 14:34:48 | Weblog
             秋の七草

          裏山の秋の七草今朝きりて 

          春の七草は覚えやすいのに、秋の七草は難しいですね
          あるサイトで 五・七・五・七・七 で覚えると有りましたので
          ご紹介します はぎ・ききょう+くず・おみなえし+ふじばかま+
          おばな・なでしこ+秋の七草  ということです



     さみだれ萩てふ名のやさし紅紫           細見綾子


     子規の井戸名残の萩のこぼれつぐ          下里恵美子




          



     前裁に貧しき桔梗茎からむ             沢木欣一


     桔梗や朝の茶席のほの暗し             鈴木英子




          



     伊良湖岬蔦引けば寄る葛の花            栗田やすし


     丹波路の川を狭めて葛咲けり            岸本典子



          




     足柄や花に雲おく女郎花              正岡子規


     放鶏の四五羽が庭に女郎花             武藤光晴




           



     すがれゆく色を色とし藤袴             稲畑汀子


     藤袴咲きてやさしきねねの道            金田義子



          




     象潟の尾花を波と見る日かな            佐藤春夫


     ヴィオロンを磨く芒の風受けて           国枝洋子 



          



     岬に咲く撫子は風強ひられて            秋元不死男


     撫子の白も咲きけり母の畑             松永敏枝


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

9月 23日 秋分の日

2019-09-22 14:57:13 | Weblog
             新松子・松ぼくり・松ふぐり・青松笠



     人気なき誓子の浜や新松子           栗田やすし


     句碑の松松ぼつくりも落すなり         細見綾子


     御油赤坂結ぶ街道新松子            小長哲郎


     新松子飛騨の陣屋の空ま青           岸本典子


     曲水のかそけき音や新松子           高橋ミツエ


     新松子浜に誓子の住まひ跡           奥山ひろみ


     新松子灘風匂ふ源平碑             巽 恵津子


     松ぼくり破風に翳して神楽殿          神尾朴水


     信長に焼かれし寺や新松子           金田義子


     新松子潮の香りの浜通り            中村修一郎


     磯風の海女の祠に新松子            野島秀子


     新松子都大路の空に映ゆ            牧 啓子



          



     白浜や藻屑の中に新松子             川崎展宏


     霞より猫の持て来し松ぼくり           村越化石


     蚶満寺海鳴り響く新松子             佐藤トミ


     松ぼつくり百年のちの晴れた日に         有住洋子


     新松子野点の釜を煙らしぬ            青木月斗




          
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

9月 22日

2019-09-21 16:38:21 | Weblog
             むかご・零余子・むかご飯



     ぬかご飯渋々たるが忘られず          細見綾子


     ふだん着の師より給はる零余子飯        栗田やすし


     朽葉ごと袋にもらふ零余子かな         河原地英武


     師の忌日こぼさぬやうに零余子摘む       長江克江


     父のこと母と語るや零余子飯          辻江けい


     初むかご供へて句碑に語りかく         倉田信子


     看取り来て一人の夕餉零余子飯         牧 啓子


     零余子蔓絡む陣馬の馬防柵           服部鏡子


     山盛りの零余子艶やか道の駅          小里育湖


     大かたは取りこぼしたる零余子かな       菊山静枝


     漱石の旧居の裏やむかご生る          服部達哉


     山城の堀切り跡や零余子蔓           山本悦子


     零余子蔓手繰りて夕日こぼしけり        上田博子



          



     露膨れむすびこぼるゝ零余子かな         阿波野青畝


     零余子飯出てより話弾みけり           平田マサ子


     老僧のもてなし嬉し零余子飯           真柄 嘉子


     つま楊枝さしてむかごの配らるる         稲畑汀子


     さびしさに零余子飯炊く山家妻          山口青邨
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする