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わが子

2013-09-15 05:41:20 | Weblog
<何百万年前か/ 初めて二本の足で立ち上がったヒトが/ そうしたように/ 手を前に差し出して/ 目の前の/ いちばん近いひとに向かって/ 進む/ ぼくも/ 時には/ そんなふうに手をのばしたくなってくる/ 誰かに向かって>。 詩人・高階杞一郎(たかしなきいちろう)さん(61)の詩集『早く家に帰りたい』にある「見えない手」だ。

わが子が初めて歩き出し、自分に向かって懸命に歩いてくる。そのときにわいた思いを、胸の奥で大切にしている人は多かろう。高階さんの愛息、雄介ちゃんは生まれ時から腸の難病に苦しめられた。

1歳になるまでに大手術を5回も受けた。家で暮らせるようになったのは生まれて3年目。1994年、3歳11カ月で逝った。その翌年に出版された『早く家へ・・・』のあとがきは、こう結ばれた。<天国にいるゆうぴーに、いつの日かもう一度ここに戻ってきてくれるようにとのながいをこめて>。

この詩集が夏葉社から復刊された。高階さんは<「もう一度戻ってきて」という願いは・・・最初から叶えられていたように思えます>と書いた。散歩の時も、食事の時も、あの子は三つの時の姿のまま、いつもそばにいてくれた。

それがたくさんの詩になったと、詩は続く、<よく晴れた朝/ こどもといっしょに窓から遠くを眺めていると/ うしろから/ そっと支えてくれる手が/ ぼくにも/ あるように思われてきて>