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人間魚雷

2013-08-21 06:58:04 | Weblog
靖国神社にある遊就館の片隅に奇妙な像がある。潜水服姿で頭には大きなかぶと、両手で長い棒を持ち、身構えている。先端に付けられているのは機雷である。

8月15日の遊就館は見学者であふれていたが、この像をあまり気に留める人はいない。それはそうだろう。本土決戦を水際で食い止める「人間機雷」の存在はほとんど知られていないのだから。

敗戦直前に横須賀や呉などで部隊が編成され、3千人近くの若者が潜水訓練を受けた。上陸する米軍の舟艇を水中で待ち構え、竹ざおの先の機雷を突き上げて自爆する。

「伏龍」と名付けられた水際特攻隊である。空を飛ぶ夢を失った予科練の少年兵たちは、ひたすら死に向かう訓練に明け暮れた。本土決戦が回避されたために実戦に至らなかったが、潜水具には構造的な欠陥があり、多くの若者が訓練中の事故で命を失った。

当時の戦争指導者の愚劣さが凝視されている人間機雷を考えたのは、参謀として真珠湾攻撃の作戦を立案した人物だ。自らを犠牲にして祖国を守ろうとした少年たちの命をここまで軽く扱うのか。

戦争が長引けば状態の要員になるはずだった人物に城山三郎さんがいる。特攻を命じた側に常に厳しい視線を向けた作家の原点だろう。「日本が戦争で得たのは憲法だけだ」。城山さんの言葉が重く響く。