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石鹸

2013-08-09 06:35:10 | Weblog
世情が荒れた幕末には、流言飛語があれ飛んだ。コレラの流行は、黒船の魔法だといううわさ話も流れた。異人が洗い物をしたら、白い泡がぶくぶくと出た。それが魚の腹に入り、江戸の人たちが食べた。

あの泡こそコレラの魔法の種・・・という噂だ。何のことはない。魔法の正体は石鹸だ。石鹸が一般的ではなかった時代のこと、見たこともないような泡を出す珍奇な品に、人々は肝を潰したらしい。

しかしそれも束の間、瞬く間に国産の石鹸が作れ始めた。が、品質粗悪。輸入品と肩を並べる品が出されたのは、1890(明治23)年。顔も洗える高い品質だから、顔をもじって「花王石鹸」と名付けられた。

美濃出身の創業者・長瀬富郎は、時代を先取りした広告戦略を打ち出し、新聞広告で効用を「皮膚を白く美麗ならしむ」とうたっていた。そんな誇るべき伝統を持つ花王も顔面蒼白だろう。

子会社のカネボウ化粧品を使った人に肌がまだらに白くなる被害が相次ぎ、今年の売上高は百億円も減る見込みらしい。長瀬富郎が石鹸づくりに乗り出したのは、肌を傷める粗悪品が出回っていることに義憤を感じてのことだという。

ここは一つ、創業者のような誠実さで、被害者一人一人の苦しみに向き合ってもらいたい。