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異国の丘

2013-08-15 14:16:54 | Weblog
<今日も暮れゆく/異国の丘に/友よ辛かろう/切なかろう・・・。戦争が終わって3年の昭和23年8月。NHKラジオの素人のど自慢大会にシベリア帰りの復員兵が出場した。

「俘虜(ふりょ)の歌える」題して伴奏なしで歌うと、鐘が乱打された。ちょうど65年前の出来事だ。<倒れちゃならない/祖国の土に/たどり着くまで/その日まで・・・。

哀愁ただようメロディーに望郷の気持ちを乗せたこの曲は日本中に感動を呼び起こし、「異国の丘」と改題され大ヒットする。作者は誰か。NHKの呼び掛けに50人が名乗り出た。

調査の結果、旧ソ連のウラジオストク郊外の収容所で一緒だった増田幸治(作詞)、吉田正(作曲)が作った曲と判明する。ソ連軍が日ソ中立条約を破棄し旧満洲に侵攻したのは、昭和20年8月9日未明。ソ連の和平仲介にわずかな望みを託していた日本はなすすべもなかった。

この日、長崎に二つ目の原爆が投下され、翌日、ポツダム宣言の受諾を決定する。満州に残された日本人には地獄の始まりだ。57万人超の将兵らがシベリアに送られ、寒さと飢えと重労動の三重苦の下、5万5千が亡くなった。

「異国の丘」は生き延びるために歌い継がれた曲だった。2千4百曲を作曲し、多くの歌手を育てた吉田さんは没後、国民栄誉賞を受賞した。「辛くて私には歌えません」と生前に語っていた。