禁煙

何度も挑戦して、何度も失敗する。これが喫煙というものだ。厚生省が、がん対策で喫煙率を１０年で半減させる目標を立てた。

相当高い目標数字だ、その数値は「たばこをやめたい」と調査に答えた人が全員禁煙すると仮定して出したものというから相当に甘い。日本たばこ産業は「個人の判断に国が介入すべきでない」と反対しているが、禁煙の決意というものは心もとないのだから、割り引いて考えればいい。

「どーも、すいません」で人気のあった先代・林家三平さんは愛煙家だった。あるとき突然、禁煙した。1974（昭和49）年、フィリピンのルバング島から小野田寛郎元少尉が帰国したのがきっかけだった。

日本人が繁栄を満喫している時代に、小野田さんの姿はショックを与えた。同年輩の師匠は期するところがあったのか禁煙した。夫人の海老名香葉子さんによると、帰国後の小野田さんを自宅に招いたこともある。

それだけ固い決意をしたのに、三平師匠は、いつのまにか愛煙家に戻ってしまったという。これが本当の「すいません」。禁煙はむずかしいという一席だ。