手技療法の寺子屋

手技療法の体系化を夢みる、くつぬぎ手技治療院院長のブログ

母指圧迫における手首の活用

2013-10-12 20:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
今回は母指圧迫の際、手首を活用するということについてのお話しです。

母指圧迫法は、マッサージや指圧などの軟部組織系へのアプローチでは定番の技法です。

自然と使用頻度も高いものとなりますから、母指を酷使しすぎないように注意しなければなりません。

ところが、実際に用いられている様子をみると、指を壊しかねない使い方をしているセラピストもいます。



よくあるケースを例にしてみましょう。

伏臥位で殿部を圧迫する場合です。


母指で殿部に触れてから、体重を乗せるなどして身体の力を伝えていきます。


問題なのは、ここからさらに力を加えるときです。



母指を屈曲させながら、力を加えている方がいます。


みなさんはいかがでしょうか?

この方法は、短母指屈筋など手内筋を酷使することになるので、たいへん危険です。

手内筋は大きな力を持続して出すようには出来ていませんから、傷めるリスクが高くなります。



手内筋は、できるだけ手のかたちをキープさせるためだけに用いるようにしましょう。

そこで、身体から肩、肘の力を伝えた後、さらに力が必要なら手首を使うようにします。

いちど試してみましょう。



母指で触れて身体の力を伝え、手首を伸展か尺屈方向に力を加えてみてください。


母指が勝手に前に出て力が加わっていくのがわかるでしょうか?

このように「力を加える」のではなく、「力が加わる」ように操作するのがポイントです。

そのとき母指丘には、支える以外に変に力が入っていないはずです。



いかがでしたか?

手首だけでも相当大きな力が加わるということが、体験を通して理解することができたでしょうか?

これは全身どの部位でも同じです。

部位によって伸展方向を強めるのか、尺屈方向を強めるのか自分のやりやすいように調整してください。



ここでご注意頂きたいことが二点あります。

まず、伸展や尺屈と言いましたが、それは手首の伸展や尺屈方向に力が生まれていればよく、伸展や尺屈運動をムリに起こさなくても構いません。

等尺性収縮が起きていればよく、ムリに等張性収縮を起こさなくてもよいということです。

ムリに動きを出そうとすると、脇が締まり過ぎて窮屈な姿勢なるなど、ポジションそのものがおかしくなってしまいます。

写真では手首に動きがありますが、これはわかりやすくさせるための方便です。



もう一点は、ここでお伝えしたいのは「手首を使え」というのではなく「手首を使うならこうしたらいいのでは」ということです。

ムリして手首ばかり使うようになると、腱鞘炎や外側上顆炎を起こしてしまいます。

それに通常なら刺激としては身体の力を伝えることができれば十分で、手首は身体を支持して方向の微調整に用いる程度です。



大切なのはいろいろな使い方ができるようになって、負担を分散できるようになること。

ある時期にテーマを決めて集中して練習するのは良いのですが、決まった使い方、固定された使い方はしないようにしてくださいね。




以前、「セラピストの母指を守る工夫」と「母指圧迫における肘の活用」というテーマの記事を書きましたが、すべて連動するものですので、今回のテーマと合わせて復習しておきましょう。

セラピストの母指を守る工夫シリーズ

母指圧迫における肘の活用シリーズ



ところで、いちばん上の写真をみていて、私の背中は丸まっていると思います。

ふつうは姿勢を正して施術するようにと指導されますよね。

なぜこのような姿勢を取っているのでしょうか?



次の過去記事も参考になります。

治療中の姿勢≪身体の使い方シリーズ≫

大切なことは手と同じ、分散させるということです。

大切なことは共通しているわけですね。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿