東アジア歴史文化研究会

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敵失という好気をぼんやり眺めやるだけ、守りの日本経済界 米国はITバブル再燃の怖れ、中国は後退が確定。残る手段は何か?(宮崎正弘国際ニュース早読み)

2018-09-13 | アメリカ情勢

第二次安倍政権発足直後から日本株は8000円台から二万円台へ急回復を見せた。異次元の金融緩和、いわゆる「黒田バズーカ」が牽引役だった。しかし、その後、景気回復への決定打がない。基本的に日本全体から進取の精神が消え、経営が「守る姿勢」に後退してしまったことが大きい。したがって日本株は泥沼の停滞を続ける。やっぱり「専守防衛」の国か。
 
第一は企業の借金恐怖症と内部留保の拡大である。底流にある意識はバブル再燃への恐怖心理が経営者に残っているからだ。他方、積極的な若者の起業は増えているが、ベンチャー・キャピタルが未熟である。中国と比べてもはるかに劣勢である。

ところが日本企業の内部留保は446兆円強もある。史上最高額。実質上「無借金経営」の企業が59%に達している。これでは銀行業は成り立たない。
本来なら企業利益は研究開発費と設備投資、人材への投資に回されるべきだが、そうしないため、賃上げに繋がらない。

有利子負債を怖れないのはソフトバンク率いる孫正義と不動産開発企業くらいで、多くが過去のバブル崩壊に懲りて、ひたすら内部留保に努めた。企業業績は「優」。投資は「不可」というわけだ。

第二にそれではと製造設備の増設ではなく、積極的M&Aに乗り出す企業が目立つが、シェア拡大目標が主目的であり、これは本当に正統な手法なのか、日本的経営から逸脱ではないかという疑問が湧く。

M&Aは資本主義経済のシステムでは合法とはいえ、およそ日本の伝統や企業の体質からは遠い、欧米の「ビジネスモデル」ではないか。

たとえばJT(日本たばこ産業)が外国企業買収にあれほど積極的なのは嫌煙権による売り上げの減少と広告の制限から新興国への輸出をのばすほかに生き残る道がないとするからだろう。JTは、アメリカンスピリットからインドネシアのグダンガラムまで買収している。日本電産はいきなりドイツの五社を、ルネサスは7700億円を投じて、アメリカのIT企業を買収する。

第三はAI開発、次世代半導体開発に出遅れたのは、「二番では駄目なのですか」という前進阻止ムードの蔓延、つまり国民精神の停滞に求められる。

冒険心は稀薄となり、ひたすら守りの姿勢をつらぬいて当座を乗り切れば良いと考えている裡に新興国からも置いてきぼりを食らう形成となった。

例外的に健闘しているのは電気機器、情報・通信。化学、輸送用機器、ならびに機械だが、内需ではなく外需によるものであり、企業名でいえば、ファナック、日本電産、村田製作所などである。

僅かに内需でも設備投資拡大の動機となっているのは人手不足解消のための自動化、ロボットの導入と、ファストフードチェーンなどの伝票、注文の電子化などにともなう設備更新、ソフト開発でしかない。

浮かれているのはインバウンドが好調な旅行代理店、輸送関連、ホテルなどのサービス産業だったが、関空水没、製造業の物流アクセス頓挫、北海道大地震による停電などで、急に近未来の市場が暗転した。

▲国内の産業空洞化は放置されたままだ

第四は円高と人手不足が原因となって海外進出にブレーキがかからず、国内の空洞化を誰も問題視しなくなった。スズキは中国から撤退するが、代替マーケットをインドとアフリカ諸国に求める。トヨタも日産も中国での設備投資をさらに前向きに強行する。いずれも日本国内市場より、海外に眼が向いている。

第五は前項に関連して国家安全保障を無視したハイテクの海外への技術移転である。これが将来何をもたらすかといえば、日本の競争力を自ら減殺し、いずれ中国に主導権を奪われることになるが、それでもやむなしという諦念が支配しているのだろうか。

民間企業ばかりではなく、政府は「もんじゅ」を御破産にした。宇宙航空開発を見ても、アメリカの顔色をみたまま自主開発のジェット機はまだ軌道に乗らない。
トヨタはHV技術という虎の子を中国に供与するし、パナソニックなどはEV電池規格を中国と協同で遂行する姿勢である。

米国が中国を敵視しているときに、日本は日中友好をすすめ、安部首相は10月23日に訪中を予定している。

▲ならばアメリカ経済は順風満帆なのか

トランプが大統領就任以後、ウォール街の株価は40%以上の上昇をつづけ、失業率は史上最低である。米国は景気が良い。

こうなると左翼メディアがいかにトランプの揚げ足をとって執拗な攻撃を続行しようとも、選挙は現職が有利である。好景気なので、米中貿易戦争の悪影響はほとんど出ていない。

しかしウォール街の株高を牽引しているのはハイテクだけである。

アマゾンの時価総額は1兆ドルと突破している。ことし上半期の株式上昇分の過半が、じつは僅か六社のハイテク企業によるもので、アマゾン、アップル、グーグル、フェイスブック、マイクロソフト、ネットフリックスなどだ。

しかも、これらは中国への進出に次の勝負をかける大市場と見ているため、トランプの中国政策とは正面から対峙する。

ハイテクばかりかエネルギー産業でも、たとえばエクソンは中国に大規模な石化設備を建設し、数千億円の投資を決めている。シェールガス輸出の後押しが主目的である。もともとエクソンの親中路線をすすめてきたのは前国務長官のレックス・ティラーソンだった。かれはキッシンジャーの推挽でトランプ一期目の米国外交をなんとか担ったが、トランプの中国敵視政策と対立し、解任された。

だが、米国の好況状態はいつまでも続かないだろう。ネックは高金利とドル高である。金利上昇によって、米国の消費をつよく支える住宅、それも中古住宅の売れ行き(全体の80%)が連続的な減少をしめし始め、専門家が失速懸念を表明している。

第二四半期から減少傾向が顕著となったのは、高金利による価格高騰と、米中貿易戦争に絡んで、中国人の爆買いが、高波が引くように消滅しつつあることだ。ましてや中国人がこれまでに購入した不動産の売却をはじめているため、中古住宅価格は、下落しても上昇は望めないだろう。

米国の経済指標の目安となる新規住宅着工件数は、前年比12・6%の減少〈2018年6月〉。ローンの破産はまだ目立つほどでもないが、失業が増えてローン返済の停滞が始まると、銀行を直撃するため、一部にはリーマンショックの再来を怖れる声もあがりだした。

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