「ミリオンダラー・ベイビー」は、2000年に出版されたF.X.トゥールの短編集、『ROPE BURNS~STORIES FROM THE CORNER~』の中の作品が原作。
この小説の冒頭にこうある。
「For God、the Eternal Father、and for Dab Huntley、my daddy in boxing.」
(神と、永遠なる父と、そして私のボクシングの父、ダブ・ハントリーに捧ぐ)
F.X.トゥールはペンネームで、本名はジェリー・ボイド。
―そう、この作品は、先日紹介した、全米ボクシング界にその名を轟かせた、ダブ・ハントリーとコンビを組むカットマンのジェリーが、はじめて出した小説なのである。
(カテゴリー/格闘技:「最高のチーム」参照http://blog.goo.ne.jp/kinto1or8/e/dd47865ff92575a701f4733833786f16)
ジェリーは長年の小説家になる夢を、70歳にして叶えたのだ!
ジェリーは短編集の作品すべてにボクシングのトレーナーを登場させていたが、そのモデルは相棒のダブ・ハントリーその人だった。
映画に登場する、モーガン・フリーマン演じる元ボクサーと、クリント・イーストウッド演じるトレーナーは、ダブとジェリーのコンビそのものなのだ。
2人が出会ってから21年、7度のタイトルマッチを経験していたが、いまだ、アマチュアの選手を1から鍛えて世界チャンピオンにする・・という夢は叶えられていなかった。
弱気になるダブに、ジェリーは自分の小説を見せた。
「何度KOされても立ち上がる、ボクシングは人生そのものだ。それを教えてくれたのはあんただ!あんたが俺の夢を叶えてくれたんだ!
ダブ!これからだ!今度は俺たちの夢を叶えるんだ!」
―しかし、2人の夢は叶わぬまま、ジェリーは72歳で亡くなった。
その2年後、小説が映画化。
出版当初、その暗い内容から映画化は難しいと思われていたのだが、クリント・イーストウッドが監督・主演を引き受け、映画化が決定。
「ミリオンダラー・ベイビー」は2004年、アカデミー賞作品賞に輝いた。
死んでも立ち上がる「KOされない心」という最高のプレゼントをジェリーから受け取ったダブは、67歳になった今も、世界チャンピオンを育てる夢を持ち続けながら、現役のトレーナーを続けているという。
「Mo Chúisle」(モ・クシュラ)
―「おまえは私の愛する者、おまえは私の血」
その衝撃的なラストなど、いろいろ物議をかもした作品であるが、こうした誕生秘話を知って、この映画を見ると、また違った味わいがあるのかもしれない・・。