歴声庵

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星亮一著 河井継之助

2008年01月22日 21時36分49秒 | 読書

 北越戦争を学ぶ者として購入したものの、河井(長岡藩)をダシにして、会津藩を賞賛し薩長両藩を誹謗しようとする、いつもの星亮一節だったので、読んでいてうんざりしました。単に感情的な表現だけならまだしも、史実を捏造して新政府軍を批判しているので始末がおえません。
 以下、本書に書かれた星氏の矛盾と責任回避を検証したいと思います。

 新政府軍の事を「どこに泊まっても、なにを食べても代価を支払わないおごり高ぶった軍隊だった」と星氏は書いていますけれども、保谷徹著「戊辰戦争」には新政府軍がきちんと宿場や人足に賃金を払っていたのが書かれています。むしろ会津藩兵こそ民衆から略奪を欲しいがままにしていたのです。
 この会津藩兵の蛮行については、「新潟市史」を始めとする郷土史や、「越後歴史考」等の歴史啓蒙書に記述されています。また米沢藩参謀を勤めた甘粕継成の日記には、「越地の人民会津を悪みきらふこと甚深く恰も仇敵の如し」と書き残されています。この様に会津藩兵の蛮行について書かれた資料が多く存在するのに関わらず、これらの会津藩兵の蛮行には触れず、新政府軍の蛮行のみを非難する態度を見る限り、星氏には歴史を探求しようと気持ちは更々無く、単に薩長を誹謗して会津を賞賛したいだけとしか言わざるを得ません。

 北越戦争のきっかけとして有名な小千谷談判についても、星氏は新政府の対応について執拗に非難しています。私も新政府軍の対応には問題があったと思います。しかし小千谷談判の決裂については、新政府軍の対応のまずさと別に、会津藩兵が長岡藩領に侵入し、長岡藩領内から新政府軍を攻撃したので、新政府軍が長岡藩の動向を疑ったと言うのも大きな要素になっています。星氏は、小千谷談判での新政府軍の対応のまずさについては非難しても、この会津藩の暗躍については、簡単に紹介しつつも、その行為に対しての明言を避けているのが狡猾だと思いました。この星氏の責任回避は本書全般に及んでいます。

 星氏の責任回避は、北越戦争の戦局に重大な影響を与えた新発田藩の「裏切り」に及ぶに至り、更に狡猾にそして小賢しくなります。星氏としては会津藩を「裏切った」新発田藩を許せない存在でしょう。しかし新発田藩の「裏切り」については、郷土史家の中島欣也氏や戊辰役戦史著者の大山柏氏が説得力のある擁護論を述べています。この両大御所両者の擁護論に対し、星氏は「これが大山の解釈だったが、長岡人のすべてを納得させる事は無理だった」と書いています。一見すると何でもない文章ですけれども、星氏は「長岡人」と言う他者の口を借りてて反論しつつも、「自分の意見」は述べていないんですよね。これならば両大御所の意見を支持する人に指摘されたとしても、「自分は何も言ってない長岡人の意見を引用しただけだ」と逃げる事が可能になります。しかもこの「長岡人」と言うのが、長岡市民の総意なのか単なる個人なのかも曖昧に濁し、追求出来なくしています。そもそも名前を出さない以上、この「長岡人」が実在するのか怪しいものです。このように自分が不利と判断した事柄については、自分の意見は言わずに、他人の意見を引用して責任を回避すると言うのが、星氏お得意の責任回避の手法であり、その狡猾さにはもはや軽蔑すら覚えます。

 責任回避を計る姿勢だけではなく、文章の書き方自体も、星氏は歴史研究家を名乗るに値しないと言わざるを得ません。河井を通して北越戦争について語るには、新政府軍・同盟軍双方の資料を読むのは当たり前の行為です。しかし星氏は同盟軍の資料は「それなり」に読んでいるものの、新政府軍の資料は「越の山風と「奇兵隊日記」の二冊しか読まず、「復古記」すら読んでいません。これでは客観的な文章など書ける訳がなく、そもそも星氏は客観的な記事など書くつもりはないとしか思えません。本書中に加賀藩兵の弱兵ぶりを書いているものの、加賀藩の資料を一切読まずに加賀藩兵を弱兵と断言する態度は、研究者として失格だと言わざるを得ません。研究者としての態度と言えば、新政府軍をその名で呼ぶのが許せないのか、「薩長連合軍」と歴史研究書では使われない呼び名に固執している様は、もはや哀れに感じました。

 以上の通り、本書は歴史書の形を取っているものの、その実は会津士魂と言う偽りを広める為のプロパガンダに過ぎないと言えましょう。いつもの事とはいえ、とにかく「会津こそが正義」と言う歪んだ歴史観で埋め尽くされた内容でした。真面目に河井や北越戦争について学びたい人にとっては、見るべき所の無い本です。
 このような史実を捏造した本を、これから北越戦争や河井を学ぼうとする人が読んだら、歴史観を歪められてしまうのではないか、そのような危惧を覚えてしまうほどの悪書でした。

 次回は星氏の最新刊「偽りの明治維新」の”偽り”を、今回よりも踏み込んで検証したいと思います。


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2 コメント

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Unknown (Unknown)
2013-02-19 20:09:08
星亮一って何をソースに執筆してるんでしょうね?
私には、この、どう見ても日本人に見えない老人は
地域分断工作員にしか思えません。
会津プロパガンダって要は山口や鹿児島、会津を
見放した東北地域へのWGIPですよね。
何故現代人がここまで執拗にやる必要があるのか?
工作員だからとしか思えませんね。
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Unknown (つか)
2013-02-23 18:12:20
 多分そこまで難しい話ではなく、昔は捏造を色々書いて金儲けをしていたら、ネットの発達によりアマチュアでも資料や史料を探す手段が判ったので、今までの嘘がバレ始めている。その流れを何とか防ごうと、前より強引な捏造をしているだけかと思います。思想の問題ではなく、単に金絡みの問題ではないでしょうか。
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