歴声庵

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乃至政彦・伊東潤著『関東戦国史と御館の乱~上杉景虎・敗北の歴史的意味とは?~』

2011年03月19日 22時14分55秒 | 読書

 一昨年の大河ドラマの影響か、上杉景虎や御館の乱を扱った書物が出るようになりましたが、殆どが著者の空想や願望を描いた上杉景虎贔屓の小説もどきが多い中、本書はそれらとは一線を画する史料に基づいた読み応えのあるもので、史料に基づいて上杉景虎の歴史的評価を試みている興味深い内容でした。

 内容的には伊藤氏が担当する関東の戦国史の概略の前半と、乃至氏が担当する上杉景虎が謙信公の養子に入ってから、御館のまでを描いた後編に分かれていますが、やはり乃至氏が担当する後半の方が読み応えがありました。
 一般的には謙信公は景勝公に越後国主を継がせ、景虎に関東管領職を継がせるつもりだったのではないかと言われていますが(私もこの通説を無条件に信じていました)、乃至氏は史料を丹念に読み込んで、これらの通説に異説を唱えています。「家督は道満丸(景虎長男)に継がせ、景勝公を陣代にするつもりだったのではないか」「謙信公と上杉憲政の間に権力争いがあったのではないか」などの新説は、意外ながらも興味深く読ませて頂きました。
 そして主題とも言える御館の乱の章では、本当に驚きの連続です。景勝公贔屓の私も、御館の乱は景勝公の先制攻撃で始まったと、通説を疑わずに信じていたものの、乃至氏の「国人集と景勝公との対立が御館の乱のきっかけとなった」、 「独裁権力を目指す景勝公を嫌った、景虎派の国人達が先制攻撃をした」などの主張は、目から鱗が落ちるような衝撃を受けました。また、あくまで本書の中ですが乃至氏は景虎贔屓のように感じますけれども、世の景虎贔屓の多く(いわゆる歴史と歴史小説の区別がつかない人達)が景勝公を過小評価や、史料的根拠のない誹謗をする輩が中、乃至氏は景虎を再評価を試みつつも、景勝公の手腕を高く評価するなど、その中立的な姿勢には感服です。
 本書の本筋とは関係ありませんが、個人的に興味深かったのが、初期の景勝公の政権ではNo2だった上条政繁が後年出奔して、斉藤朝信や本庄繁長と言った有力者を押しのけて、いつの間にら直江兼続が上杉家のNo2になったかについてです。政繁の出奔と兼続の関連は今まであまり考えていなかったので、乃至氏の考察は、こちらも目から鱗が落ちる思いでした。

 このように本書は史料に基づきながらも、従来の通説に異論を唱えた野心作で、それが読んでいて「なるほど」と思ってしまう読み応えのあるものでした。「上杉景虎が関東戦国史に平和をもたらす存在になり得た存在だったかもしれない」と言う、本書の主張に関しては若干の異論はあるものの、史料から考察した御館の乱に関しての新説は、本当に興味深い久々に夢中になって読んだ本でした。景勝公と景虎の二人を評価しながらも、両者の違いを指摘してくれる本ですので、上杉贔屓の方は是非ご一読をお勧めします。


3月18日(金)のつぶやき

2011年03月19日 02時04分11秒 | twitterまとめ
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03月第2週の声優ラジオ感想 その4 #goo_kidouhan http://blog.goo.ne.jp/kidouhan/e/49efd64b89a53a2e161dc122af73d8cd
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