事件記者のページ

遠い昔のTV番組を再現しようというムチャな試み

有吉佐和子

2015-07-23 19:04:09 | 本と雑誌
意外や(失礼)けっこう電子化されてる、ので思わず買ってしまった、何度も読んだしひょっとしたらその辺にあるのかもしれない「連舞」、飯沢匡が恥も外聞もなく盗用したシロモノ(だと思うけどなあ)

いや改めて名作だと思う、終盤踊りならド天才の次女が業界と無関係な男と結婚すると聞いて元芸者(今は踊りの師匠)のお母さんいわく
「よくよく素人が好きなんだねえ」
ヒロイン(長女、今は家元夫人)は思う
「母にとって結婚とは相手が素人の場合、その内容は家元と浮気することや役者を買うことと少しも変わらない」

これすごく鋭いんじゃない?(お母さんが)、確かになされる行為は何も変わらない、ただそこに法律の裏づけがあるかないかだけ(そこが大問題になることもあるが、いやけっこう多いが)、だからだうしたって今時間ないからとりあえずアップ

飯沢匡

2015-07-22 15:24:26 | 本と雑誌
私の盗作
升五郎と升六 39年10月 オー・ヘンリー 赤い酋長
右か左か?   39年11月 ワイルド アーサー卿の犯罪
無作法な青年 39年12月
新鮮な夜  40年 1月 モーパッサン かるはずみ
変なサンタ  40年 2月
歓迎される客 40年 3月 
シャープさん 40年 4月 
口紅  40年 5月
尻啖え観音 40年 6月
面壁九年  40年 7月
恐るべしインターネット(というか国会図書館)、昭和39-40年の文芸朝日が(目次だけとは言え)揃っちゃったのである、いやあなつかしい、ヨドチョウさんの名前を最初に見たのもこの雑誌だった、乾信一郎「動物の出て来る話」は中学生にも面白かった、連作短編「ただいま16歳」という連載もあって近藤勇を司馬遼太郎、由比正雪を何と風太郎御大が書いておられたのだが残念ながらどちらも記憶にない、印象に残ったのは寺内大吉の「高橋お伝」だけ、何と阿部お定と比較してたのが今思うとおかしい、お定さんは愛人を殺したわけじゃないと思うけど、お伝さんは立派な強盗殺人犯、当時なら死罪は当然だったのだ(これが風太郎御大の手にかかると「恋人に頼まれたから」になっちゃうのだが・・・)

おっと関係なかったね、問題は飯沢だった、これだけ年月が経ってると全く思い出せないのも多い、「歓迎される客」って何か変、「歓迎されざる客」じゃないかしらん(全然思い出せんけど)、元ネタが確実(かつ正解者あり)だったのはここに書いた3つだけ、平凡な青年がたまたま高級な洋服を着ちゃったおかげで有名人と間違われるという話があったハズだがどれだかわからない、正解はケラーの「馬子にも衣装」、まさにその通りのお話らしいのに正解はなかった(確か)とのこと、当時岩波文庫で入手可能だった、つまりそんなレア物ではなかったハズだから解せぬ話である、因みに「変なサンタ」は競馬で大穴を当てた青年がそのお金を(一部)見知らぬ少女にプレゼントする話、「口紅」は双子の子守に雇われた二人の女の子が・・・はてどうしたんだったかな?という話、誰か心当たりある?

堂々と「盗作」を標榜してるとは言えこれはクイズ、そのまま舞台を日本に置き換えただけじゃ知ってるヒトにはすぐわかるから捻りを入れなきゃいけないのは当然だが飯沢の捻り方は(いかに捻りだと言っても)かなりな悪意を持ってネジれてたんじゃないかと思う、モーパッサンの世間知らずだが聡明らしい奥さんが世間知らずな只のアホになってたり、毅然としてるべき男性が只のウジウジ君だったり、中でもヒドかったのが「赤い酋長」だった(って10のうち3つしかわからないんだがね)

升五郎升六の兄弟は歌舞伎役者の息子、升五郎(推定6年生)は背の高い美少年でアタマもよいが生意気だというのでマスコミ受けが悪い、升六(推定3年生)はチビでいささか鈍いがかわいいとTVでも人気、オヤジがどう思ってるのか書いてなかったが、何とはなし素直な弟の方が役者に向いてると思ってたフシがなくもない(どっちかが妾腹とかそういうことはなかったと思うけど)・・・
ってこれ性別が違うだけで有吉佐和子の「連舞」そのままじゃない?(と昨日突然気がついた)スマートで優等生だが踊りの評判はいまいちの姉と小柄で勉強は苦手だが踊りならド天才の妹、母親はもちろん世間も妹贔屓・・・まさかと思って調べたら「連舞」は昭和38年初出、しかも有吉は当時同じ雑誌に長編を連載中だった、何たる厚顔無恥な盗作(!!)という投書絶対来たと思うな

さて升五郎が二人組のならず者に誘拐された、拉致されたわけではなく誘い出されたのだが賢い少年はすぐに誘拐だと気づいて・・・どうしたかと言えば犯人をケチャップのビンでノックアウト、おいおい子供が大人二人相手にそんなことできるかよ?何でケチャップかと言えば元のタイトルが「赤い酋長」だからというジョーク(のつもりだったのじゃあるまいか?)、盗作として全くなっちゃないのもさることながら普通の小説として駄作だよね、蛇頭蛇尾もいーところ

ではどうすればいいかというと(オマエにゃ訊いてないって?まーいーじゃない)、少年が「僕、殺されるの?」とおびえちゃうってのもちょっとだし(あの頃誘拐されたら必ず殺されるとは決まってなかったような、また犯人たちもそれほどの悪人には描かれてなかったハズ)、かと言ってこの少年に元ネタのマネはできそうもないし
升五郎「僕、誘拐されたんだよね」
犯人「バレちゃしょうがねーな」
升「身代金いくら?」
犯「百万円」(記憶ないけどそれぐらいが相場だったかと)
升「高すぎ、五万円ぐらいにしときなよ」
犯「いくらなんでもそら安すぎだろ」
升「僕、そのくらいの値打ちしかないよ」(これ赤塚不二夫のマネ)
犯「マンガのマネするんじゃない」
升「盗作だからね、どうして弟をさらわなかったの?父さん、アイツになら百万円出すと思うけど」
犯「あの子は一人にならないだろ」
升「僕が協力してもいいよ、アイツ、僕の言うことなら聞くから」
犯「オマエ、意外と悪だな・・・・ってその手に乗るか!!」

ああ、どう逆立ちしたって盗作らしく落とせるわけはない、設定違い過ぎだよ

Imprudence

2015-07-21 16:26:11 | 本と雑誌
モーパッサンの短編、夫婦が恋人のフリで連れ込みに泊まるお話、日本語訳は「かるはずみ」(by青柳瑞穂)、どうやらこれ一つしかないらしい(こちら)、無思慮とか軽率とか漢語を使いたくなるところをこの大和言葉、やっぱこのヒトの翻訳感覚は群を抜いてるよね、名作「危険な関係」を読めないのはまことに残念、ああいうものこそどっかで復刊してくれんかしらん?

ということはさておいて前にも書いたが私はこのタイトル忘れてた、読んだ時はたぶん学生だったハズだが彼らのどこが軽率なのかわからなかったのだ、今回わずかな手がかりからようやく突き止めてみれば、どうやら奥さんが浮気を予感→家庭崩壊の予兆、その引き金がこの夜だったとすればやはり無思慮(imprudent)な行為だったかも・・・とのこと、そっかねえ、これがクイズになった時は「あ、これ知ってる、知ってるけどタイトル何だったかなあ、ひょっとして悪ふざけ(こういう短編もあるらしい、読んでないけど)?」とか言って本屋へかけつけたヒト絶対いたと思う、オヤジはよく記憶してたよな、読んだのは20年以上も前、私と同じ年頃だったハズなのに(と推測、もちろん確かめようはない)

いきなり何の話って、剽窃とか翻案とかもしやるとすれば(やってはいけないと頭ごなしに言わないこと)どうすれば読者に楽しんでもらえるのか、飯沢ってヒトはひょっとしたらとんでもない困難にチャレンジしてたんじゃないかと・・・乱歩の「緑衣」以来ちょっと考えてるわけなのである、よけいなこと考えんでいいって?まーいーじゃない

ブラウン神父

2015-07-20 18:46:17 | 本と雑誌
原文ならロハだからとダウンして読み始めたのだが(集中1,2を争う名作の誉れ高き「犬のお告げ」、クリスティと違ってむつかしいね、いや文章が難解なわけじゃないけど知らない単語が多い、一度訳本読んでるにもかかわらず「はてこれ何だったかな」と首をかしげることしきり、でも2回読んだら概ねのところはわかった、やっぱPC画面は本を読むのに向いてない、リーダーは偉大な発明だ、英文を読むにも威力を発揮するとは、フォントもなかなかきれいで見やすいし(読めるかな?)、確かにこれは名犯人だね、チェスタトンはどっちかと言えば探偵型だと思うけどけっこう悪人も書いてるね、極めつけは「折れた剣」かも

と思ってから改めて目次を見ると・・・何と思い出せん方が多い・・・あんまし感心しなかった印象だけが残ってるのもあるが(犯人の正体が不明のとか)、これはけっこう楽しめるかも、何せ短編1本読むのに1日がかりだし

ところで「青空」には直木三十五の訳が6編入ってるね、私はこれ読んでなかったのでこの機会にオンラインで読んでみたが(日本語ならPC画面でも大丈夫)、いやさすがクラシックで知ってるお話でも面白い、神父(いや師父)いわく
「わしは始めて貴公と会った時から疑ったのじゃ」(青玉の十字架)
いいよね、このしゃべり方、確か最初読んたのは「私は初めて会った時から君を疑っていたんですよ」だったと思う(4050年前)、「犬のお告げ」も直木訳で読みたかったなあ・・・

「サーレダイン公爵」も忘れてた(途中で思い出したけど)、「金の十字架」は「犯人不明」タイプ、こういうのがいまいちだったんだ(これまた忘れてた、昔話にユダヤ人が出て来たので「あっ」と思ったけど)

玉の井のナゾ

2015-07-19 14:59:13 | 本と雑誌
以前待合について書いた(こちら)、Wikiをよく読むと青山の小説にある定義もちょっと一方的で待合もピンキリ、上は芸者を呼んで宴会するところ(ついでにその芸者が色を売るかもしれないところ)で減ったとは言え今もないわけではないらしいし、下はラブホテルと名称が変わっただけで今も街中にあふれてるモノ、ただどちらも男と女が情事を行う場所に違いないけど微妙なニュアンスの違いはあるよね
飯沢の贋作では金持ちの夫婦が並の連れ込み(当時はこう言ってたハズ、あるいは温泉マーク?)より多少高級感のある「待合」で一夜を過ごして何故か寿司をとってもらい夫は「オレ何でこんなアホな女と結婚しちゃったんだろー」と(までははっきり書いてないけど)思う、因みにモーパッサンの元ネタでは結婚するまで男を知らなかった(らしい)奥さんが遊び人の亭主から「エロチシズムの個別性(女はみんな違って面白い)」を教えられて「男だってきっと面白いに違いないわ」と思う、やっぱ元ネタの方が上だよなあ・・・

いきなり何事って贋作の方にこんな会話があったのだ
妻「お女郎ってもういなくなったんでしょ」
夫「そうさ」
妻「玉の井ってのもないのね」
夫あきれる(らしい)がこの先しばし忘れた、「玉の井」が何なのか見当もつかなかったので、女郎と対になる言葉なら何やらその辺を指す職業じゃないかとは思ったものの(たぶんね)、中学生が公娼と私娼の区別など知るわけはなし、いやそもそも「女が体を売る」ことの意味ガホントにはわかってなかったハズなのだ(その証拠にこの頃「事件記者」のトッシャンが街娼の誘いに乗っておミッちゃんに「不潔」と言われる、何が不潔なのか全然わからなかった・・・やっぱ幼稚な子供だったんだなあ)

だいたいこの会話おかしいよね、待合が問題になってるのならそこは基本的に女郎(公娼)とも酌婦(私娼)とも関係ない場所のハズ、この奥さんは何で娼婦にこだわるのか、中学生じゃあるまいしともかくも成人した女性がつい数年前(この話は昭和40年のことである)まであった遊郭や私娼窟の存在を全く知らないなんてありうるのかね、ま、そこはちょっと微妙かもしれんがそも男が売春宿で女を買うことと、シロウトの男女が待合(あるいはラブホテル)へ行くこととは、そこでなされる行為は同じでもニュアンスは違うことがわからんほどアホな女っているのかね(そういう意味じゃなかったのかもしれんが、その辺の記述忘れたし)

という(どういう?)ナゾの言葉「玉の井」は地名、こういうところであった(ここで「え、名鉄の駅じゃなかったの?」とボケるべきところなんだろうが残念ながら忘れてた)、昭和40年には(私娼窟としては)確かになくなっていたらしい、他のことはともかくここに関して亭主があきれるスジアイはなかったハズなのである