事件記者のページ

遠い昔のTV番組を再現しようというムチャな試み

イーデン・フィルポッツ2

2015-07-12 11:26:31 | 本と雑誌
レドメイン」(こちら)、Kindleにはないがソニーにはあったのでつい買ってしまった、昔読んだ宇野利泰訳ではないがさして問題はない、そっか、こういう話だったのか、全編死体なき殺人事件なんだよな、これミステリとしてはかなり重大な弱点だが、最大のトリックでもあるから何とかゴマ化すしかない、でもまあかなりうまく行ってるかも、これぞ文章のパワー・・・(なのかな?)

真犯人逮捕(というか名指し)のシーンとその後の手記があんまし強烈だったのでこいつに負けず劣らずインプレッシブな共犯者(いやひょっとしたらこっちが主犯?)の活躍ぶりをほとんど忘れてた(初登場の時何を着てたかまでちゃんと記憶してたのに)、探偵が犯人を見抜いてるのに何で3番目の事件発生を許しちゃったのか、こんな肝心なことを忘れてたとはなあ、まさしく作者の術中にハマった(そういう問題か?)、クイーンが「ミステリと恋愛の成功した結合」と言ってたのは確かベントリーの「トレント」だったと思うけど、はてだうかね?「ミステリで恋愛モノ」というなら絶対こっちの方が上じゃあるまいか?

だけどよーく考えてみると(いやそれほどみなくても)動機が弱いやね、本人たちが思ってるほどの完全犯罪じゃない、つか主人公目線をハズしたら真相はバレバレかも、捕まったら極刑まちがいなし、もちろん財産の相続もできない、こんな犯罪絶対に計算合わんよね、悪いヤツは悪いから悪いことをするとしか言いようがない、だがそれのどこが悪いんだ、いかにも犯人らしい犯人を描いてこそのミステリじゃないか-と自称スレッカラシの私は開きなおることにする

もっとも現実的に考えた場合、死体がみつからないから証拠不十分になる可能性はなきにしもあらず、ヒトの死体を完全に消すのはそう簡単じゃないけど、この場合結局だうだったのかちゃんと書いてないやうな(その前に犯人が自決しちゃうし)

ところで彬光さんが安吾の「不連続」を賞して「よく知られた古典的名作よりもトリックの使い方は上」とおっしゃったその古典もこれだと思うけど違うかな?ご本人が亡くなったからもう訊けないね(そういうことって多いよなあ)

どーでもよい追記-実は私、犯人が被害者の一人と「軍隊時代に知り合った」んだと何とはなしに思い込んでいた、典型的なニセ記憶、だけどこの話は第一次大戦後すぐという設定、年代も環境も違う二人の男が知り合ったとすれば「戦争中に軍隊で」が一番ありそうだったのだ、そうじゃないならこの二人、いったいどこでどうやって知り合ったんだろなあ、けっこう深いナゾだ(そこかよってそこだよ!)